Morton Subotnick完全ガイド:電子音楽の起源を拓いたブッフラ・シンセと『Silver Apples of the Moon』の聴き方と影響
Morton Subotnickとは
Morton Subotnick(モートン・スボトニック)は、電子音楽の先駆者の一人であり、特にモジュラー・シンセサイザー(ブッフラ/Buchla)を用いた作曲・演奏で知られます。サンフランシスコ・テープ・ミュージック・センターなどの活動を通じてテープ音楽や電子音楽の実験的な場を広げ、商業的流通に載った初期の電子音楽レコードを世に出したことでも歴史的意義が大きい作曲家です。
おすすめレコード(深掘り解説)
Silver Apples of the Moon
なぜ聴くべきか:Subotnickの名を一躍広めた代表作で、商業レコードとしては初期の電子音楽作品のひとつに数えられます。ブッフラ・シンセサイザーによる音響設計、時間経過とともに変化するモジュールの動き、緻密な音色変化が特徴です。
音楽的特徴:全体は大きく分けて展開を持つ構成で、単発のメロディや歌詞に依拠しない“音のドラマ”が進行します。固定したビートに頼らず、波形や周波数、フィルタの動きが楽曲の起伏を作ります。ステレオの空間性や微細なアタック/リリースの扱いが意識的に用いられており、ヘッドフォンでの聴取でも非常にディテールが出ます。
鑑賞のポイント:
- 「部品の流れ(モジュールの連鎖)」を意識して聴くと、非常に構造的に作られていることが分かる。
- 音色の変化と空間感が主役なので、トラックごとの“曲”としてではなく、長い「音像の旅」として捉えると良い。
- 初めてならLPの流れ(最初から最後まで)で繰り返し聴くことを勧める。
なぜ重要か:このアルバムはその後のアンビエント/電子/IDM的な音楽まで多大な影響を与えました。テクノや現代的なサウンドデザインの直接的ルーツとは言えないまでも、電子音を「音楽的語法」として確立した記念碑的作品です。
The Wild Bull
なぜ聴くべきか:Silver Applesが“内的な音の風景”を提示したのに対し、The Wild Bullはよりダイナミックで力動的、かつ物語性・描写性を伴った作品です。Subotnickの表現の幅を理解するために必須の一枚です。
音楽的特徴:リズムに近い反復、鋭い襲来のような音の衝撃、そして対比的に現れる静かなテクスチャーが交互に現れる構造が目立ちます。コンピュータ的な反復ではなく、モジュールの変化やノイズの扱いで「動物的・劇的」な表現を作っているのが特徴です。
鑑賞のポイント:
- 曲想の強弱や「暴発する」瞬間に注目して、音の“意志”や“ジェスチャー”を追うと面白い。
- Silver Applesと対比しながら聴くと、同じ機材・思想からここまで異なるドラマが生まれることがよく分かる。
なぜ重要か:表現力の幅とドラマ性によって、電子音楽が単なる実験ではなく「感情や物語」を伝えうるメディアであることを示しました。
代表的なコンピレーション/リイシュー
なぜ聴くべきか:初期作のオリジナルLPは価値が高く入手困難な場合があるため、リマスターやコンピレーションで良音質版を聴くのが現実的です。近年は公式リイシューやデジタル配信で入手しやすくなっています。
おすすめポイント:
- リマスター盤は原音のディテール(特に低域や高域の微細な変化)が浮き彫りになるため、Subotnickの音響設計の真価を味わいやすい。
- ライナーノーツや作曲意図の解説が付いている版は、制作背景の理解に役立つ。
注記:オリジナルLPには資料的価値がありますが、鑑賞目的であれば良好なリイシューやハイレゾ配信をまずはおすすめします。
聴きどころ・鑑賞のコツ(作品理解を深めるために)
- ヘッドフォンで聴く:ブッフラのモジュレーションや微細な定位がよく分かるので、少なくとも一度はヘッドフォンでじっくり聴くと良い。
- 「ノン・メロディ」の捉え直し:従来のメロディ+コードで聴く癖を外し、「音の質感/動き/空間」を主題として聴くと理解が進む。
- 比較再生:同時代の電子音楽(例えばカールハインツ・シュトックハウゼンやデイヴィッド・ボウイ周辺の実験的作品ではなく、同じ系譜のブッフラユーザーやテープ音楽の作家)と比較するとSubotnickの独自性が見えてくる。
- コンテクストを読む:ライナーノーツや短いエッセイで制作背景(使用機材や初演の状況)を先に読むと、聴取体験が豊かになる。
どの盤を買うか・探し方のアドバイス
- 初めてなら:まずは信頼できるリイシュー(公式再発)やCD/ストリーミングで聴いて、作品の全体像をつかむ。
- コレクター向け:歴史的価値やアートワークを重視するならオリジナルのNonesuchレーベルのLPを探す価値あり(ただし高価・流通少)。
- 音質重視:リマスターやハイレゾ配信(公式)を選ぶと音像の再現が良く、特に電子音楽では恩恵が大きい。
Morton Subotnickの聴きどころまとめ
Subotnickの音楽は「機材の新しさ」だけで語れるものではなく、音そのものを音楽的な文法に組み込み直す試みの連続です。Silver Apples of the Moonでその方法論を示し、The Wild Bullなどで表現の幅を広げました。初期作を軸にリイシューで高音質に触れつつ、ライブや現代のマルチメディア作品にも目を向けると、彼の芸術的全体像が見えてきます。
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参考文献
- Morton Subotnick — Wikipedia
- Morton Subotnick — 公式サイト
- Morton Subotnick — AllMusic
- Nonesuch Records — レーベル(各作品の公式情報を参照)


