Francesco Tamagno の劇的テノールをレコードで聴く:代表曲と復刻盤の聴き方ガイド
Francesco Tamagno — 劇的テノールの金字塔をレコードで辿る
Francesco Tamagno(1850–1905)は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したイタリアの劇的(ドラムマティコ)テノールです。ヴェルディの『オテッロ』の初演(1887年)で主役オテッロを創唱したことでも知られ、その圧倒的な声量と高音の強さ(“squillo”)は当時の聴衆を驚嘆させました。当時の録音技術は限られていましたが、Tamagno の数少ないアコースティック録音は、声の性格や歌唱スタイルを知る貴重な史料となっています。
このコラムの目的
- Tamagno の代表曲や録音の中から「レコードで聴く価値の高い」おすすめを紹介する。
- 当時の録音で何に注目して聴くべきか、聴き方のポイントを深堀する。
- 復刻盤・編集盤を選ぶ際の目安(信頼できるレーベルや技術者)を提示する。
Tamagno を知るための代表レパートリー(聴くべき曲)
- 『オテッロ』より「Niun mi tema(ニウン・ミ・テマ)」などのオテッロの場面 — Tamagno を象徴する役。創唱した役であり、彼のドラマティックな表現と高音の強さが分かりやすく出ます。
- ヴェルディ『イル・トロヴァトーレ』より「Di quella pira(ディ・クエッラ・ピラ)」 — 力強いブリリアントな高音が映えるアリア。録音によく収められている代表曲の一つです。
- ヴェルディ『アイーダ』より「Celeste Aida(チェレステ・アイーダ)」などのラダメスの場面 — 劇的かつ叙情的な要素を比較できる好例。
- 宗教曲や小品(当時のアリア・カンツォーネ、歌劇からの抜粋) — 録音によってはオペラ・アリアに限らず小品も残っており、声の色や発声の特徴を多面的に知る手掛かりになります。
おすすめレコード(復刻/編集盤)と選ぶ理由
Tamagno の録音はオリジナル盤(78回転、シェラック)しか存在しないため、現代は復刻・デジタル修復を施した編集盤で聴くのが現実的です。以下は探す価値の高いタイプ、並びに信頼できるレーベルの一般例です。
- 「Complete / The Complete Recordings」系の編集盤(専門レーベル)
アコースティック期の全録音を集めたセットは、Tamagno の声の変化やレパートリーを一気に把握するのに最適です。往々にして音質補正やノイズ除去が施され、注釈(録音年・原盤情報)も詳しいことが多いので資料性が高いです。
- Marston Records・Ward Marston 等の専門復刻
歴史的音源の復刻で高く評価されている技術者やレーベルによる盤は、原盤に忠実かつノイズ処理が音楽性を損なわない品質で仕上げられています。Tamagno のような重心が高く、倍音成分が重要な声は良い転写でその魅力がより伝わります。
- Naxos Historical / Preiser / Pearl / Pristine Classical などの再発盤
これらのレーベルは「代表曲抜粋」やテーマ別コンピレーションを出すことが多く、入門用として手に取りやすいです。複数の録音を並べて比較したい場合に便利です。
- Discogs や専門ディスコグラフィでオリジナル盤情報を確認
特定の録音年や原盤(例:Fonotipia/Columbia/Gramophone 等)を知りたい場合は、Discogs や学術的なディスコグラフィを参照すると良いでしょう。オリジナル盤のマトリクス番号やバリエーション情報は復刻の品質判断材料になります。
録音を聴くときの具体的なチェックポイント(音楽的に深堀するために)
- 高音の「核」やプロジェクションを聴く
Tamagno の魅力は「抜けのよい高音」と「強靭なブレシア(響き)」にあります。高音域がどのように前面に出てくるか(鼻腔共鳴・口腔の使い方)が当時の録音でもある程度確認できます。録音の帯域制限を考慮しつつ、「音の芯」を探してください。
- フレージングとデクラマトリ(台詞的)表現
19世紀的・ヴェルディ的な歌唱は、現代のレガート重視の歌とは異なる「宣言的で瞬発力のある」フレージングが特徴です。言葉の輪郭、アクセントの付け方、息づかいの間(インタールード)に注目すると当時の演技感が伝わります。
- ポルタメントやヴィブラートの扱い
音程の滑らかな移行(ポルタメント)やヴィブラートの幅・速さにも当時特有の癖があります。これらは録音の質で鈍ることもありますが、声の個性の重要な要素なので意識して聴くと発見があります。
- 録音の年代差を比較する
同じ曲でも録音年が違うと声のコンディションや歌い回しが変わることがあります。可能なら複数録音を並べ、声の劣化や解釈の違いを比較すると、Tamagno の芸術生命の推移が見えてきます。
推薦の聴き方プラン(番組的順序)
- まずは代表的アリア(例:オテッロ系、Di quella pira、Celeste Aida)を一挙に聴いて「声の印象」を掴む。
- 次に完全録音集や専門復刻盤で同じ曲や関連曲を年代順に聴き、声の変化や解釈の相違を追う。
- 技術的な比較のために、Ward Marston 等の高品質な転写と一般的な廉価復刻盤を比べ、音の違い(帯域、ノイズ処理)を確認する。
- 最後に、Tamagno が創唱した『オテッロ』そのもののスコアや他のOtello歌手(後代の名唱)と比較して様式の違いを味わう。
ディスク選びの実用的アドバイス
- 「Complete」表記のある復刻は資料性が高くおすすめ。
- 転写担当者が明記されている盤(例:Ward Marston 等)は音質面で信頼できる。
- 音源元(原盤レーベル)が分かると、同じ曲の別収録を比較しやすい。ディスコグラフィや解説を必ず確認すること。
- 中古市場でオリジナル78を探す場合は保存状態と盤面の刻印情報(マトリクス)を重視する。ただし入手・再生には専用機器が必要。
なぜ今、Tamagno を聴くべきか
現代の録音技術では捉えきれない「生の声の迫力」や19世紀〜20世紀初頭の歌唱様式を直接感じられる点で、Tamagno の歴史的録音は貴重です。ヴェルディ的ドラマの原点を理解するためにも、当時の創唱者の声を耳で追う経験は、歌劇の解釈や声楽史の学びに直結します。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
ここでは、古典音源や歴史的録音の復刻・配信などに関わるサービスの一例として「エバープレイ」を挙げています。復刻音源の探し方や配信リストの参照になど、ご自身の鑑賞環境に応じた利用を検討してください。
参考文献
- Francesco Tamagno — Wikipedia(英語)
- Francesco Tamagno — Wikipedia(イタリア語)
- Discogs — Francesco Tamagno 検索結果
- Marston Records(歴史的録音復刻の目安)
- Naxos(Naxos Historical を含む再発情報)
- Preiser Records(歴史的音源の再発レーベル)


