フランチェスコ・タマーニョの録音を聴く: オテロ初演から1903–1904年の円盤まで、英雄的テノールの聴き方と名盤ガイド
イントロダクション — フランチェスコ・タマーニョとは
フランチェスコ・タマーニョ(Francesco Tamagno, 1850–1905)は19世紀末から20世紀初頭に活躍したイタリアのドラマティック・テノールで、ヴェルディの《オテロ》の初演(1887年)を務めたことで特に知られます。力感と鋭いトップ、カリスマ的な表現力を持ち、当時の最上級の“ヒーロー声”の一つとして評価されてきました。音声記録が限られる時代の人物ですが、1903〜1904年に残された円盤録音は今なお歴史的資料として聴き継がれています。
なぜタマーニョのレコードを聴くべきか
タマーニョの録音は、単なる「古い声」を聴く体験を超え、19世紀~20世紀の歌唱スタイル、ヴェルディ的英雄表現、そして声そのものの構築(胸声の厚み、額寄りの倍音の輝きなど)を直接聴き取れる貴重な証言です。音響上の制約(アコースティック録音特有の帯域限界やノイズ)はあっても、歌手の個性や解釈の骨格は十分に伝わります。
おすすめレコード(再発・編集盤)と選定理由
Complete Acoustic Recordings(全集系の再発)
概要:1903–1904年に行われたタマーニョの円盤録音をまとめた全集的編集。CD二枚組やボックスで出ていることが多いです。
理由:断片的ではなく時系列で全貌を把握でき、テイクの違い・時期による声の変化を追えるため、研究・愛聴の両面で最優先。オテロ抜粋・ヴェルディ・アリア集(代表作を集めた企画盤)
概要:《オテロ》などヴェルディの重要アリア、英雄的な場面を抜粋して聴けるコンピレーション。
理由:タマーニョの持ち味である“英雄性”がわかりやすく、初めて聴く人にもおすすめ。個々のアリアごとに比較しやすい。歴史的歌唱コレクションに収録された盤(EMI「The Record of Singing」等)
概要:20世紀の歴史的歌手を集めたアンソロジーにタマーニョの代表録音が収録されている場合がある。
理由:同時代や前後世代の歌手と並べて比較でき、声の変遷や演奏慣習の違いがわかる。高品質リマスター盤(Marston、Preiser、Pearlなどの歴史音源復刻レーベル)
概要:歴史音源に定評のあるレーベルが行ったデジタルリマスター。ノイズ除去やトーンバランスの調整が施されたもの。
理由:オリジナル円盤の「距離感」をできるだけ自然に再現する処理がなされており、声のエッジや倍音が聴き取りやすくなる。英語/イタリア語解説付きエディション
概要:解説ブックレットに当時の背景、録音状況、歌唱の特徴などが詳述されている再発。
理由:録音の来歴や楽曲解説があると、鑑賞の理解が深まる。特に歴史的資料として利用する場合に便利。
各盤の選び方のポイント
「全集」か「選集」かを決める:全集は研究向け、選集は入門・愛聴向け。まずは選集で魅力を掴み、興味が出たら全集へ進むのがおすすめです。
リマスターの質を重視する:同じ録音でも復刻の手法で聴こえ方が大きく変わります。歴史音源の復刻に実績のあるレーベル(Marston、Preiser、Pearl など)が出している盤が安心です。
解説の有無:歌手の経歴や録音時期の注記があると、同じ曲でもテイク間の違いや声のコンディションが把握しやすくなります。
音源の出所(マトリクス番号や円盤ラベルの表記)を確認する:可能ならボックスや解説で原盤情報が示されているかをチェックします。これはコレクター的な価値判断に有効です。
聴きどころ — タマーニョの歌唱の特徴と注目ポイント
鋭い高音と輝く倍音:アコースティック録音でもトップの金属的な輝きは明確に伝わります。旋律のクライマックスでの「張り」や「切れ味」を味わってください。
ドラマティックな発話性:フレーズの初めに強いアタックや「雄弁さ」があり、言葉の重みで聴かせるタイプです。セリフ調の歌い回しや劇的なアクセントに注目を。
技巧的な装飾は控えめ:19世紀中のベルカント的技巧も持ちながら、主に表現の重心は力感と表情にあります。速いパッセージや装飾が目的の録音ではない点に注意。
時代性を踏まえて聴く:現代の録音との比較において、発声法や音色の美的基準が異なることを理解すると、評価がしやすくなります。
入手のためのヒント
主要な配信サービスやCDショップで「Francesco Tamagno complete」「Tamagno remastered」などのキーワードで検索すると、再発盤や選集が見つかります。
中古市場(オークションサイト、レコード店のオンラインストア)ではオリジナル盤・アナログ復刻も出ることがあるため、コレクターはチェックするとよいでしょう。
視聴が可能な配信・試聴ページで実際に音を確かめ、ノイズ処理やイコライジングの違いを比べてから購入するのがおすすめです。
まとめ
フランチェスコ・タマーニョは、現代の耳には古風に聞こえる面もありますが、その“英雄的”な声の存在感は時代を超えて聴く価値があります。入門者は解説付きの選集や名演集から入り、興味が湧けば全集や高品質リマスター盤で全体像を掴む—という段階的な聴き方が最も楽しめます。
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参考文献
- フランチェスコ・タマーニョ — 日本語版ウィキペディア
- Francesco Tamagno — English Wikipedia
- Discogs — Francesco Tamagno(ディスコグラフィ検索)
- AllMusic — Francesco Tamagno(アーティスト検索)
- Marston Records — 検索結果(Tamagno)


