Lauritz Melchiorのワーグナー・ヘルデンテノールを極める名盤ガイドと聴き方ヒント
Lauritz Melchior — 簡潔な紹介
Lauritz Melchior(1890–1973)は、デンマーク生まれの伝説的なヘルデンテノール(Wagner歌手)です。20世紀前半のワーグナー演奏を代表する声のひとつで、力強い胸声と長いフレーズ、表現力ある語り口で知られます。主に1920〜1950年代にかけてのスタジオ録音やメトロポリタン歌劇場(Met)でのライブ録音が現在も入手可能で、ワーグナー愛好家だけでなく「声の歴史」をたどりたいリスナーにとって必聴の歌手です。
おすすめレコード(入門〜深堀り)
入門コンピレーション:ワーグナー名アリア集(Studio & Compilation)
解説:Melchiorの代表的レパートリーである『トリスタン』『ジークフリート』『ローエングリン』『タンホイザー』『パルジファル』の抜粋を集めた編集盤。初めて聴くなら、名場面のハイライトで彼の声の魅力(豊かな中低域、遅めのテンポでも安定する息使い)をつかめます。
聴きどころ:トリスタンやジークフリートの長いフレーズ、力強いクライマックス、ドイツ語の明瞭な発音。
ライブ名演集:メトロポリタン歌劇場の放送録音(Live at the Met)
解説:Metでの上演を収めた放送・アリーナ録音は、舞台上の緊張感や相手歌手との相互作用が伝わりやすく、Melchiorのドラマ性に富んだ歌唱を楽しめます。共演にKirsten Flagstadなどの大物がいる公演も多く、歴史的価値が高いです。
聴きどころ:舞台的な語り、オーケストラとのバランス、共演者との化学反応。
全集・大判編集:"Complete Recordings" タイプのボックスセット
解説:Melchiorのスタジオ録音・放送録音を年代順にまとめたボックス。初期の78回転録音から晩年のラジオ録音まで網羅されることが多く、声の変化を時系列で追える点が魅力です。研究的に彼のキャリアをたどりたい方におすすめ。
聴きどころ:初期の若々しい高域、成熟期の安定感、晩年の表現性の深まりといった「声の生涯」を比較する楽しみ。
アリア/リサイタル録音集(非ワーグナー曲を含む盤)
解説:Melchiorはワーグナー以外にもオペラのアリアや宗教曲、記念的なコンサート録音を残しています。ワーグナー以外のレパートリーで声のニュアンスや語りの技術を再評価できる良盤があります。
聴きどころ:ワーグナー以外での柔らかさ、語りの技巧、言語の違いによる発音の変化。
名場面単曲集(歴史的録音のベスト・オブ・ベスト)
解説:「トリスタンとイゾルデ」や「ニーベルングの指環」等の代表場面を高音質で再編集した編集盤。1曲ずつ聴き比べをしたい場合に便利で、録音のクオリティに定評のあるリマスター盤が多くあります。
聴きどころ:名場面における瞬発力やフレーズ処理、息のつなぎ。
各レコメンドで注目すべきポイント(聴き方のヒント)
声質と発声法を観察する — Melchiorはヘルデンテノール特有の「厚みある胸声」と持続するフォルテが武器です。長いフレーズのつなぎ方(ブレスコントロール)や、フォルテシモ時の共鳴位置の変化に注目してください。
フレージングと語りの間(ルバート)の使い方 — 彼のワーグナー解釈はドラマ重視で、オーケストラの流れに寄り添いながら歌のフレーズを作ります。テンポの揺らしや語尾処理など、役の心理描写が歌にどう現れるかを聴き取ると面白いです。
共演者・指揮者との相互作用 — 特にFlagstadなどの名歌手との共演録音は、掛け合いの化学反応が際立ちます。指揮者のテンポ選択も演奏の印象に大きく寄与するため、指揮者名・共演者を確認してから聴くと理解が深まります。
録音年代による「声の変化」を意識する — 1920s〜30sの初期録音は音質が古めですが若さや張りが感じられ、1940s以降は録音技術の向上とともに声の豊かさや表現の円熟がより明瞭に聴こえます。
購入・選盤のコツ(どの盤を選ぶか)
まずは良質にリマスターされた編集盤を — 歴史的録音は原盤の音質に差があります。初めてなら、評判の良いリマスター(音質改善)を施したCDや配信盤を選ぶと、歌のディテールをつかみやすいです。レーベルとしては歴史的録音の再発で定評のあるレーベル(例:Pearl、Preiser、Marston、Naxos Historicalなど)の盤をチェックすると良いでしょう。
ライブ録音とスタジオ録音の使い分け — あくまで「表現の違い」を楽しむために使い分けるのがおすすめです。舞台的緊張感や相互作用を重視するならライブ、声のバランスや音質を重視するならスタジオ録音を。
注目すべき共演者・公演年を確認する — Flagstadや当時の主要指揮者、Metの上演年などを確認すると、その演奏の歴史的背景や演出の傾向を読み解く手がかりになります。
全集ものは余裕があるときに — 全集はコストがかさみますが、研究的に彼のキャリアを俯瞰したい場合には非常に有用です。まずはベスト盤→ライブ名演→全集の順で買い足すと失敗が少ないです。
代表的な録音・名盤(聴きどころを併記)
トリスタン関連録音(抜粋・ライブ含む) — Melchiorのレパートリーの中でも最重要のひとつ。愛の場面や三幕のモノローグで彼の声の魅力が如実に現れます。Flagstadとの共演音源は特に歴史的価値が高いです。
ジークフリート/ニーベルングの指環からのアリア・場面集 — 長大な役を支える持久力と音楽的構築力が確認できます。鍛え抜かれた声の持続力と指揮者とのテンポ感を楽しんでください。
ローエングリン、タンホイザー、パルジファルの抜粋 — それぞれの役での言語表現、語尾の処理、そして宗教的・騎士道的なキャラクターの表現法が異なるので比較して聴くと面白いです。
まとめ:Melchiorを聴く意義
Lauritz Melchiorは、声そのものの魅力だけでなく「ワーグナー解釈の古典」を伝えてくれる存在です。初めてなら名アリア集やMetのライブ録音を入り口にし、気に入れば全集やリマスター盤で時代ごとの声の変化を追ってみてください。共演者や公演年を手がかりに聴くと、ただ「うまい声」を超えた演奏史的な面白さが見えてきます。
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参考文献
- Lauritz Melchior — Wikipedia
- Metropolitan Opera Archives — Lauritz Melchior
- AllMusic — Lauritz Melchior Discography & Biography
- Discogs — Lauritz Melchior(ディスコグラフィ)
- ArkivMusic — 歴史的録音や再発情報(検索ページ)


