エリザベート・レートベルクの生涯と魅力—メトロポリタン歌劇場で輝いたリリック〜ドラマチック・ソプラノの名演と聴き方ガイド

Elisabeth Rethberg — プロフィールと魅力の深堀り

Elisabeth Rethberg(エリーザベト・レー卜ベルク / 1894–1976)は、20世紀前半に活躍したドイツ出身のリリック〜リリック・ドラマティック・ソプラノです。特に1920年代〜1930年代にかけてニューヨークのメトロポリタン歌劇場(Met)で長期間にわたり重要な存在となり、ヴェルディ、プッチーニ、モーツァルト、ワーグナーなど幅広いレパートリーを持ちながら、音楽的な誠実さと洗練された歌唱で高く評価されました。本コラムでは彼女の生涯的背景に触れつつ、声質や表現上の魅力、代表レパートリーと聴きどころ、現代のリスナーへのおすすめの聴き方までを深掘りします。

経歴の概観

  • 出自と活動期:ドイツ出身。20世紀前半にヨーロッパで研鑽を積んだ後、国際的なキャリアを築き、特に1920年代〜1930年代にメトロポリタン歌劇場を中心に活躍しました。
  • 国際的舞台での存在感:大きく派手な“声の暴力”に頼らないが、確かなテクニックと音楽的理解で主要な役を務め、当時の聴衆や批評家から厚い信頼を得ました。
  • 録音遺産:当時のグラモフォンやコロムビア等の歴史的録音が残っており、現在は各種コンピレーションやアーカイブで入手できます。レコード技術の制約はあるものの、声の質感や表現の核は十分に伝わります。

声質と歌唱スタイル — 魅力の核

  • 声の性格:リリックからリリック・ドラマティックの領域に位置する、温かみのある中低域と十分な上行の伸びを兼ね備えた声。大声で押すタイプではなく、内部からの支えと均整のとれた発声で聴かせます。
  • レガートとフレージング:美しいレガートと句読点を活かしたフレージングが最大の魅力。歌詞の自然な流れを重視し、文節ごとの呼吸とダイナミクスで物語を紡ぎます。
  • 語りかける表現力:テキストへの敏感さが際立ち、台詞的な語りかけと音楽的な飛躍を両立させることに長けていました。結果として、人物造形が説得力を持ちます。
  • テクニック面:安定した呼吸法、滑らかなパッサージョン(声区の移行)、透明感のある高音など、当代屈指の基礎力を備えていました。これが多様なレパートリーを無理なく歌えた理由です。

レパートリーの特徴と代表的な役

Rethbergのレパートリーは幅広く、次のような作曲家・役柄で知られます。ここに挙げるのは、彼女の歌唱の特性に合った主要な例です。

  • ヴェルディ:「アイーダ」や「オテロ」のデスデモーナ等。ヴェルディ唱法の中で語るように歌う能力が光ります。
  • プッチーニ:「トスカ」や「蝶々夫人」などドラマ性が強い役。情感の表出を抑制と爆発のバランスで構築しました。
  • モーツァルト:(ドン・ジョヴァンニ/フィガロ等の女性役)機敏な語り口と正確なラインで、古典的な様式感も自然に表現します。
  • ワーグナー:エルザ(『ローエングリン』)など、重厚すぎないが確かな声の力が求められる役もレパートリーに含まれていました。

代表的なアリアや名場面(聴きどころ)

以下は、Rethbergの芸風を知るうえでチェックしたいアリアや場面の例です(録音が残る曲も多く、コンピレーションやアーカイブで聴けます)。

  • ヴェルディのアリア(例:『アイーダ』のアリアや『オテロ』のデスデモーナの場面) — 言葉を歌に溶かす表現が味わえます。
  • プッチーニのアリア(例:『トスカ』の「Vissi d'arte」的な場面) — 緊張と解放の表現力が魅力。
  • モーツァルトのアリア(例:情緒描写が重要なソロ場面) — 技術的な明晰さと柔軟なフレージング。
  • ワーグナーの叙情的場面(エルザなど) — ドラマ性を損なわない繊細さ。

名盤・おすすめ録音

Rethbergは歴史的録音が中心のため、現代のハイファイ録音とは異なる音響的制約がありますが、彼女の本質を伝える良好な復刻が存在します。以下は入門的な指針です。

  • 歴史的録音をまとめたコンピレーション(「Complete Recordings」や「Historical Recordings」名義の編集盤) — 代表的なアリアやオペラ抜粋を時系列で追えます。
  • メトロポリタン歌劇場のアーカイブ録音(ライブや放送音源) — 舞台での実際の表現を知るには最良の資料です。
  • レガシー・シリーズ(Preiserの「Lebendige Vergangenheit」など、歴史的歌手シリーズ) — 比較的手に入りやすい再発盤としておすすめ。

聴き方のコツ:Rethbergの魅力をよりよく味わうために

  • 時代を踏まえて聴く:1920〜30年代録音の特性(周波数帯の制限、ノイズ)を念頭に置くと、声の本質や表現に集中できます。
  • フレーズの“呼吸”を追う:彼女のレガートやフレージングは呼吸と連動しています。フレーズ終わりの余韻や小さな音量変化に注目すると表現の意図が見えてきます。
  • テキスト理解を優先:歌詞に基づく表現が非常に重要なので、訳詞やセリフの背景を先に把握してから聴くと人物描写が立ち上がります。
  • 比較して聴く:同時代あるいは後世のソプラノと比較すると、Rethbergの“歌うことへの誠実さ”や抑制の美学がより明確になります。

芸術的意義と今日への遺産

Elisabeth Rethbergは、声の華麗さや派手さで目立つタイプではありませんでしたが、「音楽に忠実で誠実な歌手」としての評価が確立しています。彼女の録音は、20世紀初頭から前半にかけての歌唱様式を知る上で貴重な資料であり、現代の歌手やオペラ愛好家が“声と音楽の統合”を学ぶモデルの一つといえます。

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参考文献