ジェームス・ジャマ―ソン|モータウンを支えた歌うベースの革新と影響

プロフィール — ジェームス・ジャマ―ソンとは

ジェームス・リー・ジャマ―ソン(James Lee Jamerson、1936年1月29日 - 1983年8月2日)は、1960年代のモータウン(Motown)レコードを支えた“ファンク・ブラザーズ”の主力ベーシスト。サウスカロライナ州エディスト島生まれだが、幼少期からデトロイトで育ち、Cass Technical High School(カス・テクニカル)で音楽教育を受けた後、主にモータウンのスタジオ・ワークに従事した。

なぜ特別なのか — その魅力と音楽的特徴

  • メロディックかつリズミック:単なる“低音の土台”にとどまらず、曲のメロディやリズムを牽引する“歌う”ベースラインを作り出した。クロマチックな通過音やオクターブ跳躍、装飾的なグーストノート(消えるようなタッチの音)を多用し、楽曲のフック部分を形成することが多い。

  • ジャズ的素養とポピュラーの融合:ジャズで養ったアドリブ感覚とウォーキング・ベースの感覚を、ポップス/R&Bのグルーヴに自然に落とし込んだ。結果として、耳に残る“歌うベース”と、躍動するグルーヴが同居する独自のスタイルが生まれた。

  • シングル・フィンガーの巧みさ:右手で主に人差し指(あるいは人差し指中心のピッキング)を用い、柔らかくも瞬発力のあるアタックで多彩な表情を生み出した。過度なエフェクトや大がかりな機材に頼らず、フレーズとタッチで音楽性を表現している点が特徴的である。

  • “スタジオ・ミュージシャン”としてのプロ意識:レコーディング現場ではアレンジャーやドラマーと綿密に呼吸を合わせ、曲の構造や歌のために最も効果的なベースラインを即興で生み出す能力に長けていた。

代表的なプレイの例(代表曲・名盤)

ジャマ―ソンは数多くのヒット曲に参加しており、そのラインはポップ/ソウルの“聴きどころ”になっている。代表曲・名盤をいくつか挙げる。

  • “My Girl” — The Temptations(モータウンの代表的バラードにおける滑らかで歌うベース)

  • “I Heard It Through the Grapevine” — Marvin Gaye(不穏さを支える低音の執拗なグルーヴ)

  • “Ain’t Too Proud to Beg” / “Get Ready” — The Temptations(跳ねるようなシンクロ感とメロディックなフレーズ)

  • “Heat Wave” / “Dancing in the Street” — Martha Reeves & the Vandellas(ダンスチューンでの強力な推進力)

  • 各種モータウン・コンピレーション(“Motown Hits”系の多く)– 60年代のヒット群のほぼ数多くで彼のプレイが確認できる

スタジオでの役割と創造プロセス

モータウンのレコーディング文化は非常に効率的で、アレンジャーやプロデューサー(例:スモーキー・ロビンソン、スティーヴィー・ワンダーら)が曲の骨組みを用意し、ファンク・ブラザーズが短時間で仕上げるスタイルだった。ジャマ―ソンは楽譜だけでなく、耳で即座に効果的なラインを作る能力を持っており、たった数テイクで決定的なフレーズを録音することが多かった。

また、ドラマー(ベン・ジョーンズやエド・グリーン等)との“対話”を通じて、ベースとドラムが一体化したグルーヴを作り上げる能力に長けていた点も彼の強みである。

楽器・サウンドについて(簡潔に)

ジャマ―ソンは状況によりアップライト(コントラバス)やエレクトリック・ベースを使い分けた。エレクトリックではフェンダー系のプレシジョン・ベースを主に用いたとされ、フラットワウンド弦的な落ち着いた太いトーンを生かして、ミックス内で埋もれず温かい低音を提供した。

評価・影響

  • 後進のベーシストに与えた影響は計り知れない。ジャコ・パストリアスやポール・マッカートニー、マーカス・ミラーら、多くの奏者が彼のフレーズやアプローチを称賛し模倣している。

  • 生前はセッション奏者として名声と報酬のバランスが取れていなかったが、没後その重要性が再評価され、ロックの殿堂入りや多数の記事・書籍で“史上最高のベーシストの一人”として紹介されている。

人物像と晩年

ジャマ―ソンはステージ・スターというよりも職人的な“裏方の天才”というイメージが強い。プロフェッショナルとしての技術は高く評価される一方、晩年はアルコール依存や健康・経済面の困難を抱え、1983年に亡くなった。だが彼の録音は後世に残り、現代の音楽制作やベース奏法における教科書的存在となっている。

学ぶべきポイント — ベーシストやプロデューサーへの示唆

  • “フレーズで歌う”こと:ベースはリズムだけでなくメロディや感情を語る道具になり得ると示した。

  • スタジオでの即興力:短い時間で最適なラインを見つける耳と発想の重要性。

  • 音作りのシンプルさ:派手な機材に頼らず、タッチとフレーズで音楽性を出すことの有効性。

まとめ

ジェームス・ジャマ―ソンは、60年代モータウンの“音”を形成した最も重要なセッション・ベーシストの一人であり、ベースの役割を根本から変えた人物のひとりです。メロディックでリズミカル、そして即興性に富んだ彼のプレイは、現在のポップ/ソウル/ファンク/R&Bのベース観に直接的な影響を与え続けています。彼のラインを聴き、コピーし、分析することは、ベーシストのみならず楽曲アレンジやプロデュースを学ぶ上でも非常に示唆に富んでいます。

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参考文献