ロビー・ロバートソンの軌跡:The Bandの創作核と語り口ロックが生んだルーツ・ロックの歴史
プロフィール — Robbie Robertsonとは
Robbie Robertson(ロビー・ロバートソン)は、カナダ出身のギタリスト、ソングライター、プロデューサーで、特に1960〜70年代に活動したロック/ルーツ・バンド「The Band(ザ・バンド)」の主要創作力として知られます。グループの顔というよりも楽曲の核を担い、語りのような歌詞、映画的な構成の楽曲でアメリカーナやルーツ・ロックの地平を広げました。生前はソロ作品や映画音楽制作、音楽監修など多方面で活躍し、2016年には自身の半生と創作の背景を綴った回顈録『Testimony』を発表。2023年に逝去し、その遺した作品群は現在も大きな影響力を持ち続けています。
初期キャリアとThe Bandへの参加
若年期からトロント周辺で音楽活動を行い、ロビーはロックンロールやカントリー、ブルースなど多様なルーツ音楽に親しみながら成長しました。1960年代初頭、ローニー・ホーキンスのバック・バンド(Levon & the Hawks)を経て独立し、後に「The Band」として活動。彼らはボブ・ディランの電化ツアーのバックを務めたことでも知られ、ディランとの共同作業が音楽的方向性に大きな影響を与えました。
代表作・名盤の紹介
- Music from Big Pink (1968)
ザ・バンドのデビュー的名盤。ロックの枠を越えた深いルーツ感と群像劇的な楽曲群が提示され、後のオルタナティブ・アメリカーナの礎となったアルバム。
- The Band (1969)
しばしば「ブラウン・アルバム」と呼ばれる作品。ロバートソンの代表的な歌詞世界と、メンバー間のアンサンブルの完成形が示されている。
- The Last Waltz (1978) — サウンドトラック/ドキュメンタリー
ザ・バンドの“ラスト・コンサート”を収めたライヴ映画とサウンドトラック。マーティン・スコセッシによる映像と相まって、ロバートソンの構成能力(曲順、対話的な演出)が光ります。
- Robbie Robertson (ソロ, 1987)
ソロ作として成功した作品。都市的で妖しい雰囲気の「Somewhere Down the Crazy River」など、映画的な音像と語りを活かした楽曲が特徴です。
- 代表曲(抜粋)
- 「The Weight」 — 群像的な物語とコーラスが印象的な名曲。
- 「Up on Cripple Creek」 — リズミカルで語り口のある楽曲。
- 「The Night They Drove Old Dixie Down」 — 歴史を背景にした叙情的な物語。
作詞・作曲の特徴 — “語り”としてのロック
ロバートソンの楽曲は「物語」を中心に組み立てられることが多く、登場人物の視点や時代背景を織り込んだ叙事性が魅力です。文学的・映画的な構成を持ちつつ、普遍的な感情(ノスタルジア、喪失感、郷愁)へと接続されるため、多くのリスナーが個人的な共感を覚えます。
- 登場人物の視点で語る一人称/三人称の巧みな使い分け。
- 具体的な地名や場面描写による「映画的」展開。
- ルーツ音楽(カントリー、ブルース、ゴスペル、フォーク等)を横断することで生まれる多層的なサウンド。
ギタースタイルとアレンジ面の魅力
ロバートソンのギターは派手な速弾きや過度な技巧を見せるタイプではありません。代わりに「空間を活かす」フレーズ、メロディックで歌に寄り添うプレイ、曲のムードを決定づけるリズム感で知られます。バンドのアンサンブルを最優先する姿勢が、ザ・バンドの温かくも芯のあるサウンドを成立させました。
グループ内での役割とリーダーシップ
ザ・バンドではロバートソンが多くの曲を書き、アレンジ面で中心的役割を果たしました。一方でメンバーそれぞれの個性(リヴォン・ヘルムの土着的なドラム&歌、ガース・ハドソンの多彩なキーボード、リチャード・マニュエルの繊細な歌声など)を活かす調整役も担い、時には創作上・人間関係上の摩擦も生じました。そうした緊張と協働が、音楽に独特の生々しさと深みをもたらしています。
映画との結びつき — スコセッシとの協働と映画音楽
ロバートソンは映画音楽や音楽監修の分野でも評価を得ました。特に映画監督マーティン・スコセッシとは長年にわたる協働関係にあり、ザ・バンドの映像化(『The Last Waltz』)のみならず、その後の映画作品の音楽面でも助言・監修・作曲を行うことで映画の感情表現に寄与しました。ロバートソンの「映画的」な楽曲構成は、映像との相性が非常に良いのです。
魅力と影響力 — なぜ今も聴かれるのか
ロバートソンの魅力は以下の点に集約されます。
- 物語性:歌詞が一つの短編小説のように場面と人物を描くため、聴き手の想像力を刺激する。
- 音楽的誠実さ:大仰さを避け、ルーツ音楽への敬意を示しつつ新しい表現を作り出した点。
- 映画的手法:楽曲の構成や音像が映像的であり、リスナーに強い情景を喚起させる。
- 影響の広がり:ザ・バンドはアメリカーナやカントリー・ロック、オルタナ系アーティストに大きな影響を与え、多くの後続アーティストが彼らの語り口や編成を参照しています。
最後に — 評価と遺産
ロビー・ロバートソンは単なるギタリスト/作曲家を超え、20世紀後半のルーツ音楽再評価を牽引したキーパーソンの一人です。彼の残した楽曲は時代を超えて再解釈され続け、歌詞の中で描かれる「場所」や「人間」の描写は現代のリスナーにも響きます。バンドとしての功績はロックの殿堂入り(The Bandとして)にも結実しており、その創作的な足跡は今後も多くのミュージシャンやリスナーに影響を与え続けるでしょう。
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参考文献
- Robbie Robertson — Wikipedia
- The Band — Wikipedia
- The Last Waltz — Wikipedia(映画・サウンドトラック)
- Robbie Robertson Obituary — The New York Times
- Testimony — Robbie Robertson(回顧録、出版社ページ)


