エルヴィン・ジョーンズを聴く意味と名盤ガイド|コルトレーン期のドラミングを深掘りする

はじめに — Elvin Jones を聴く意味

エルヴィン・ジョーンズ(Elvin Jones)は、モダン・ジャズのドラム奏者として20世紀後半に絶大な影響を与えた存在です。特にジョン・コルトレーンの四重奏団(McCoy Tyner, Jimmy Garrison と共に)の一員として残した仕事は、ジャズのリズム感やアンサンブルの概念を大きく変えました。本稿では、「これを持っていれば間違いない」という名盤群と、各レコードで聴きどころになるエルヴィンのプレイの特徴を深掘りして紹介します。

選び方の視点 — 何を基準にレコードを選ぶか

  • クォータet/サイドマン演奏で聴く:コルトレーンらとの録音は「エルヴィンの存在が曲をどう動かすか」を直に学べます。
  • リーダー作で聴く:自分のバンドを率いた録音は、ソロや構成面での個性(楽曲選択、ドラミングの前面化)を知るのに最適です。
  • ライブ録音で聴く:即興の反応、ダイナミクス、長尺の展開など、エルヴィンの“現場力”がよく出ます。
  • 時代別に聴く:60年代のコルトレーン期、70年代以降のリーダー/バンド活動とでアプローチの変化を辿ると面白いです。

必携・代表的なレコード(コルトレーン作品)

  • John Coltrane — A Love Supreme

    エルヴィンのダイナミックで推進力あるドラミングが、コルトレーンの宗教的ともいえる表現を支えます。特に「Acknowledgement」「Psalm」など、ビルドアップと解放の瞬間でのリズムのコントロールに注目してください。トリオ(テナー、ピアノ、ベース)に対するドラムの位置づけが明確に分かる名盤です。

  • John Coltrane — My Favorite Things

    モード奏法が前面に出た名演。エルヴィンは単なるタイムキープを超え、フレーズの色付けや推進力で曲の長いヴァージョンを牽引します。オープンな空間でのシンバル、スネアの使い分け、ポリリズム的なアクセントに注目です。

  • John Coltrane — Crescent

    より内省的で緊張感のある作品。エルヴィンのタッチはここで洗練され、抑制と爆発をバランス良く使い分ける様子が分かります。特に長尺のテンション構築に対するドラマーの貢献が明瞭に聴き取れます。

  • Coltrane(ライブ録音群) — Live at Birdland / Live at the Village Vanguard(など)

    ライブ録音はエルヴィンの即応力、ダイナミクスの幅、アウトでの動きの自由さが最も分かる場です。曲の流れを意図的に揺さぶる瞬間や、ソロ回しでの対話的プレイを聴き取ってください。

リーダー作/エルヴィン名義で聴くべきレコード

エルヴィンはリーダーとしても多彩な顔を見せます。ここでは彼個人の音楽観、編成選択、ドラミングの表現力がよく出た盤を厳選して紹介します。

  • Heavy Sounds(Elvin Jones & Richard Davis 名義含む)

    リズムセクション同士の対話に重心がある一枚。ベースとドラムの相互作用、グルーヴの作法、リズムの細かな色付けが学べます。レコーディングによっては即興性の高い長尺演奏が含まれ、ライブ感のあるテンションが魅力です。

  • Puttin' It Together(などの70年代以降のリーダー作)

    エルヴィンがバンドリーダーとしてコンポジションやアレンジに関与する作品群。ホーンを前面に出すもの、フリー寄りに攻めるものまで幅があり、リーダーとしての指揮ぶりや、ドラムソロの扱い方が参考になります。

  • 後年の“Elvin Jones Jazz Machine”名義のライブ録音

    70年代以降、エルヴィンは自分のバンドを率いて多くのライブを残しました。即興的な展開を長尺で聴けるため、表現の自由度、テンポの取り方、若手との対話を見るのに適しています。

各レコードで聴きたい“エルヴィンの特徴”ポイント

  • ポリリズム(複合的拍感):同じ小節内で左手・右手・足が独立して働くように聴こえる瞬間を意識して聞くとエルヴィンの特色が分かります。
  • トリプレット主体のフレージング:トリプレットを基調にした推進力でフレーズを駆動することが多いです。単純な4/4の感覚と違う「うねり」を探してください。
  • ダイナミクスの大きな振幅:非常に小さく繊細に刻む部分から一気にフォルテに移行する瞬間のコントラストが魅力。
  • シンバルとスネアの色付け:シンバルワークで空間を作り、スネアでフレーズの輪郭をつける使い分けが巧みです。ヘッドフォンや良いスピーカーでシンバルの余韻を聴いてください。
  • 対話的コンピング:ソロイストのフレーズに応える「呼吸」を持った伴奏。単なるビート提供者ではなく、音楽の語り部の一人として機能します。

聴き方・鑑賞のコツ(音楽的な視点)

  • まずは曲の構成(テーマ→ソロ→再現)を頭に入れ、どの部分でエルヴィンが「時間を伸ばしている」「テンションを積んでいる」かを追う。
  • ソロを聴くときは、細かいフィルやアクセントだけでなく「どの拍を強調しているか」「どの楽器と対話しているか」を意識すると理解が深まる。
  • ライブ録音では、マイク配置や音質の違いで聞こえ方が変わるため、複数の盤(スタジオ/ライブ)を比較するとエルヴィンの表現の幅が分かる。

初心者からコアなコレクターまでのおすすめ視聴順

  • 入門:John Coltrane — My Favorite Things(コルトレーン四重奏の典型)
  • 理解を深める:John Coltrane — A Love Supreme(エルヴィンの精神的支柱としての役割を確認)
  • 技術と個性を知る:Crescent(抑制と爆発の使い分け)
  • リーダー像を掴む:Heavy Sounds / Puttin' It Together(エルヴィン名義の表現)
  • ライブで実感:Elvin Jones Jazz Machine のライブ録音(即興力とバンド統率)

まとめ — Elvin を聴き続ける価値

エルヴィン・ジョーンズは、単に“速く叩けるドラマー”ではなく、音楽の推進力と色彩感をドラムで作り出す稀有な存在です。コルトレーン期の録音での役割はジャズ史上に残る仕事であり、リーダー作やライブ録音ではさらに自由で多面的な顔を見せます。上述のレコード群を通じて「時間感」「対話」「ダイナミクス」という要素を追うことで、エルヴィンの真価をより深く理解できるでしょう。

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参考文献