Fats Wallerを聴く完全ガイド:初心者向け編集盤から年代別大全までの聴き方とコレクション術

Fats Waller — 短い紹介

Thomas "Fats" Waller(1904–1943)は、ジャズの黄金期における最も愛されるピアニスト兼作曲家兼エンターテイナーの一人です。ストライド・ピアノの流れを継承しつつ、圧倒的なリズム感、親しみやすいメロディ、ウィットに富んだ歌唱を武器に数多くのスタンダードを生み出しました。「Ain't Misbehavin'」「Honeysuckle Rose」「Jitterbug Waltz」などは今も歌い継がれています。本コラムでは、レコード(およびそれに準ずる編集盤)を中心に、作品の聴きどころと選び方、コレクションの楽しみ方まで深掘りして紹介します。

初心者におすすめの一枚(入門用コンピレーション)

まずは代表曲をまとまって聴けるコンピレーションでWallerの魅力をつかむのが早道です。こうした編集盤は曲ごとの録音年代や編成が混在しますが、「名演=Wallerらしさ」を短時間で体感できます。おすすめの聴きどころ:

  • Ain't Misbehavin' — Wallerの代表曲。歌とピアノが一体となった魅力が詰まっています。
  • Honeysuckle Rose — メロディの美しさと伴奏のグルーヴが際立つ名曲。
  • The Joint Is Jumpin' — フォーマットとしてのコンボ演奏の楽しさがよくわかる一曲。

こうしたコンピ盤は紙の解説(ライナーノート)や年代順の注記が充実しているものを選ぶと、作曲・録音の背景がわかって楽しさが増します。

ピアニストとしての核を聴く:ピアノ独奏/小編成を集めた編集盤

Wallerのピアノは「音楽的なジョーク」とも言える表現力に富み、左手のバウンス(ストライド)と右手の即興的フレーズが同時進行します。ピアノ独奏やトリオを中心に集めた編集盤は、彼のタッチ、ペダリング感、フレージングの本質を感じるのに最適です。

  • ソロ・ピアノ作品やピアノ中心のトリオ演奏を中心に聴く。曲の構造、内声の扱い、アドリブの語法が見えてきます。
  • 「Handful of Keys」や「Fats Waller at the Piano」といったタイトルの編集盤は、ピアノ演奏にフォーカスしていることが多くおすすめです。

1930年代のセッション集(名盤・名演)

Wallerはコンボやビッグバンド風の編成でも活躍しました。録音年代が進むにつれて、アレンジも洗練され、声の魅力も生きてきます。いくつかの重要な聴きどころ:

  • 1930年代後半のRCA/Bluebird系のセッション — バンドとの対話、編曲の妙、Wallerのボーカル・パフォーマンスが楽しめます。
  • バラード〜ミディアム・テンポの曲で見せる歌心。急速なスウィング曲で見せるリズム感とユーモア。
  • 有名なスタンダード曲群(例:Ain't Misbehavin'、Honeysuckle Rose、Jitterbug Waltz など)を、時期別に聴き比べると作曲家としての成長がわかります。

放送・ライブ音源(レア音源)

当時のラジオ放送やツアー時の録音には、スタジオ録音では捉えきれない即興のやり取りやトーク、観客との関係性が残されています。こうした音源は録音状態に差がある一方で、Wallerの人間性やエンターテイナーとしての腕前を知る貴重な素材です。コレクター向けには放送録音や未発表テイクを収めたボックスセットを探してみると、新たな発見があります。

アルバム/編集盤の選び方(音質・注記・編纂)

Wallerの録音は年代が古いため、リマスターや音源の取り扱いによって聴こえ方が大きく変わります。選ぶ際のチェックポイント:

  • リマスタリングの方針:過度なイコライジングやノイズ除去で演奏のニュアンスが失われていないかを確認する。自然な響きを重視した復刻がおすすめです。
  • 年代順に整理されたセット:作家として、演奏スタイルの変遷を追うのに便利です。大全集系のボックスセットは解説やセッション・データが充実している場合が多いです。
  • ライナーノートとセッション・データ:誰が参加したか、録音日、編成が分かると聴き分けが楽しめます。
  • 音源の出所:オリジナルの78回転盤からの復刻や放送音源の扱い方で評価が分かれます。信頼できるレーベル(歴史的復刻に定評のあるレーベル)を基準にするのが無難です。

コレクター向けのガイドライン(購入の観点)

コレクションを拡張するときの考え方:

  • まずは良質な編集盤で作品世界を把握。その後、年代別の完全セットや限定ボックスを狙うと深掘りできます。
  • 限定盤やボックスセットはライナーノートとセッション写真、未発表トラックが収録されることがあり、資料価値が高いです。
  • 出所(ディスクユニオン、Discogsでの出品情報、専門店の詳細な商品説明)を確認して、収録曲・バージョンを明確に把握して購入することをおすすめします。

聴き方のポイント(演奏分析)

Wallerの演奏を深く味わうための着眼点:

  • ストライドの構造:左手のベース&コード跳躍(ストライド)と右手の対旋律・即興の関係を追う。リズムの「スイング感」は左手の動きが土台になります。
  • テンションと解決:和声の使い方、フレージングでの緊張と弛緩(例えば終止でのユーモラスな余韻)を味わう。
  • ヴォーカル表現:彼の歌は演技的要素が強く、言葉の落としどころや間(ま)を楽しむことでレコード越しでも観客とのやり取りが感じられます。
  • アンサンブルのやり取り:小編成では特にソロと伴奏の「会話」に注目すると、即興の決定がより面白く聞こえます。

具体的に狙いたいレコード/編集盤(カテゴリ別まとめ)

  • 入門コンピレーション:代表曲を網羅した「ベスト/ベスト・オブ系」の編集盤(紙の解説がしっかりしたものを推奨)
  • ピアノ中心編集盤:「Fats Waller at the Piano」「Handful of Keys」と名づけられたピアノ重視の編集盤(ソロ演奏を集中して聴ける)
  • 年代別大全集:1920年代〜1940年代の全録音を年代順にまとめたボックスセット(Document RecordsやMosaicなど、専門レーベルの限定・全集)
  • 放送録音・ライヴ集:ラジオ放送やツアー音源を集めた編集。演奏の即興性やトークが記録されている点が魅力

最後に:なぜFats Wallerを聴き続けるか

Wallerの音楽は「笑い」と「涙」、技巧と人間味の両方を内包しています。卓越したピアニストとしての技術だけでなく、曲を書き、歌い、会場を湧かせる「総合力」が彼の最大の魅力です。レコードで彼を追いかけることは、20世紀前半のアメリカ音楽史やジャズそのものの変遷を追う楽しみでもあります。良い編集盤や全集を手に入れて、年代順に聴き比べると新しい発見が必ずあります。

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参考文献