アストル・ピアソラの名盤をアルバム別に徹底解説|おすすめレコード深掘りコラム

Astor Piazzolla — おすすめレコード深堀コラム

アルゼンチン出身のバンドネオン奏者で作曲家のアストル・ピアソラ(Astor Piazzolla)は、タンゴの伝統を基盤にしつつジャズやクラシックの要素を取り入れた「タンゴ・ヌエボ(新しいタンゴ)」を確立しました。本コラムでは、彼の代表作・名盤をレコード(アルバム)単位で厳選し、それぞれの聴きどころ、背景、推奨される盤選びのポイントを深掘りします。音楽そのものに注目した解説を意識していますので、演奏編成や名演の比較、録音上の特徴などを中心にお読みください。

おすすめレコード(名盤セレクション)

  • Libertango

    なによりもまず「Libertango」(楽曲)はピアソラの代表作として広く知られており、同名曲を収めたアルバムは入門盤として定番です。リズムが前面に出たエッジの効いた演奏で、タンゴと現代音楽・ジャズの接合点をはっきり感じられます。初期の録音とその後の再録音で解釈に違いがあるので、荒々しく躍動する初期の演奏と、整理され洗練された後期の演奏を聴き比べるのが楽しいです。

    聴きどころ:タイトル曲「Libertango」ほか、メロディの反復とリズムのアグレッシブさ、バンドネオンの役割。

    盤選びのポイント:オリジナルのアナログLPはテンポ感や空気感が生き生きしていますが、近年のリマスターCDやハイレゾ配信は音像がクリアで楽器の細部が聴き取りやすく、曲の構造を解析的に楽しみたい場合に向きます。

  • María de Buenos Aires(マリア・デ・ブエノスアイレス)

    ピアソラと詩人ホラシオ・フェレールによる「オペリータ(小さなオペラ)」。歌詞(スペイン語)と象徴的な物語性が強く、舞台作品としての完成度が高い作品です。歌唱表現と楽器のドラマ性が強調されているため、ヴォーカルものとしてのピアソラを体験するなら必聴。

    聴きどころ:アメリータ・バルタールら初期の歌手との共演盤は、台詞的な歌唱と劇的な楽曲展開が魅力。物語性を追いながら聴くと深まります。

    盤選びのポイント:舞台録音や再録の違いで演出や歌い回しが大きく異なります。脚本(歌詞)を手元に置いて歌詞を追いながら聴くと理解が深まります。

  • Reunión Cumbre / Summit(Gerry Mulliganとの共演盤)

    ジャズ・バリトンサックス奏者ジェリー・マリガンとの共演盤は、ピアソラのタンゴとジャズのクロスオーバーを直接聴かせてくれます。即興性の強いジャズ・プレイヤーとの対話により、ピアソラの楽曲が別の色合いを帯びるのが興味深い点。

    聴きどころ:即興と編曲のバランス、サックスとバンドネオンの掛け合い。ジャズ耳で聴くと新たな側面が見えます。

    盤選びのポイント:共演者のソロやアンサンブルのニュアンスが重要なので、ミックスの良いリマスター盤が聴きやすいです。

  • Tango: Zero Hour(タンゴ:ゼロ・アワー)

    多くの批評家やファンが「ピアソラの最成熟期の傑作」と評するアルバム。楽曲構成、アンサンブルの緊張感、録音クオリティのいずれも高く、彼の新旧の手法が凝縮されています。タンゴとしての躍動感と近代的な構築性が強く表れる一枚です。

    聴きどころ:アンサンブルの迫力、曲ごとのドラマ、ダイナミクスの幅。リスニングの際は通しで聴いて構成感を味わうのがおすすめです。

    盤選びのポイント:オリジナルLPは空間表現が豊か、CDリイシューは各楽器の輪郭が明瞭。音質重視なら良リマスターを探すと満足度が高いです。

  • Five Tango Sensations(Kronos Quartetとの共演)

    弦楽四重奏とピアソラの共作/共演は、クラシック的な響きとタンゴのリズムが融合する好例です。ピアソラが弦楽アンサンブルと直に対話することで、メロディの線と和声の動きがより明確になります。現代音楽好きにも響く作品群。

    聴きどころ:弦楽の繊細さとバンドネオンの切迫感が対照的に配置される点。室内楽的な解釈で聴くと新鮮です。

    盤選びのポイント:共演レーベルの制作水準が高く、録音品質に恵まれた盤が多いので音質優先で選んで問題ありません。

  • Octeto/Octeto Buenos Aires(オクテート時代の録音集)

    1950年代半ば、ピアソラが編成や編曲で革新を進めた「オクテート」は、タンゴの伝統的な編成を拡張した実験的な時期を示します。当時の録音を集めた編集盤は、ピアソラの作曲・編曲家としての出発点を理解するうえで重要です。

    聴きどころ:リズム配置や管弦楽的なアレンジの萌芽、ピアソラ流の対位法的処理。

    盤選びのポイント:古い録音が多いため、ノイズ処理やリマスターの仕上がりを確認すると良いです。歴史的価値優先ならオリジナル音源を聴くのも意義深いです。

  • 代表的なコンピレーションやライブ盤(入門〜ディープリスニング向け)

    初めてピアソラを聴く人には、年代を横断するコンピレーションや名演を集めたライヴ盤が入口として有用です。録音年代や編成の違いが一枚で比較でき、作風の変遷を追いやすいメリットがあります。

    聴きどころ:時代ごとの演奏スタイルの差、ライブならではの即興性やエネルギー。

    盤選びのポイント:選曲と解説の充実度を重視。信頼できるレーベル/編集者によるものを選ぶと背景情報も得られます。

各アルバムをより楽しむための「聴き方」ガイド

  • テーマと変奏を追う — ピアソラは同じモチーフをさまざまに変奏することが多いです。テーマ提示→展開→再現の流れを意識して聴くと形式感と即興的な広がりが見えてきます。

  • 編成ごとの味わいを比較する — ソロ(バンドネオン)、弦楽四重奏、クインテット、オクテート、ヴォーカル作品など、編成が変わると楽曲の色彩が大きく変化します。同一曲の別編成録音を聴き比べると発見が多いです。

  • 歌詞作品は歌詞を読む — 「María de Buenos Aires」など歌詞中心の作品は、意味や語感を追うことで音楽表現の暗喩が理解しやすくなります(和訳や注釈を参照するとさらに深まります)。

  • ライブとスタジオ録音の違いに注目 — スタジオ盤は構成やアンサンブルの精度が高く、ライブ盤はエネルギーと瞬発力が魅力。両者を比較するとピアソラの多面性が見えてきます。

盤の選び方・入手のヒント(音楽的観点)

  • オリジナルLPは時代の空気感が強く伝わりますが、演奏のディテールを重視するなら近年のリマスター盤や高解像度配信を併用するのがよいでしょう。

  • 同一曲の別録音(初期・中期・晩年)を聴き比べると作曲の発展と演奏解釈の違いが分かります。特に「Adiós Nonino」や「Libertango」は複数録音を聴き比べる価値が高いです。

  • 共演者によって色が変わるので、ジャズ系演奏者(例:Gerry Mulligan)やクラシック奏者(例:Kronos QuartetやGidon Kremer)との共演盤も積極的に探してみてください。

付記:ピアソラ作品をめぐる注目ポイント

  • ジャンル横断性:タンゴの規範に挑みながら、構造的にはクラシック、即興性ではジャズにも接近するため、どの耳で聴くかで印象が大きく変わります。

  • 演奏者の解釈の幅:同じ楽譜でも演奏ごとにフレージングやアクセントが大きく異なり、それを楽しむ余地があります。

  • 言語的要素:歌詞の作品はスペイン語の語感が重要。訳詩や解説を併用すると深みが増します。

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参考文献