Aníbal Troiloのタンゴをレコードで聴く:初心者からコアまで厳選おすすめ盤と聴き方ガイド
Aníbal Troilo — イントロダクション
Aníbal Troilo(アニバル・トロイロ、愛称「ピチュコ」)は20世紀アルゼンチン・タンゴを代表するバンドネオン奏者、編曲者、バンドリーダーです。感情豊かなバンドネオンの響きと、緻密で歌うような編曲で知られ、タンゴの「叙情性」を体現した存在として評価されています。本コラムでは、Troiloの魅力を深掘りしつつ、レコード(盤)で聴くべきおすすめ作品を時代や編成ごとに紹介します。初心者からコアなコレクターまで、聴きどころと選び方のポイントをまとめました。
Troiloの音楽的特徴——聴く前に知っておきたいこと
歌うようなバンドネオン:Troilo自身の奏法は非常に「人間的」で、メロディを歌い上げるニュアンスを重視します。旋律線の呼吸やブレス感をバンドネオンで表現する点が特徴です。
詩人との強い結びつき:Homero ManziやHomero Expósitoなどの詩人との協働が多く、歌詞と楽器表現の関係性が深い曲が多いのが特徴です。タンゴ歌詞の「郷愁」「哀愁」が曲に色濃く反映されます。
編成と音色の幅:典型的なオルケスタ・ティピカ(ヴァイオリン群、2〜3台のバンドネオン、ピアノ、コントラバスなど)で力強いダイナミクスを持つ一方、より繊細な小編成での演奏も多く残しており、同じ楽曲でも編成による表情の差を楽しめます。
おすすめレコード(初心者向け)
まずは入門編として、Troiloの「代表的な音像」を短時間で味わえる編集盤やベスト盤をおすすめします。現行のリイシューやコンピレーションは選曲の良し悪しがあるため、下記のようなポイントで選ぶとよいでしょう。
入門コンピレーション(ベスト盤)
概要:代表曲や名演を時代順にまとめた2枚組・編集盤。初めてTroiloを聴く人にとって最も効率的。
聴きどころ:代表的な歌手(Francisco Fiorentino、Edmundo Rivero、Roberto Goyeneche 等)との名唱、Troiloのバンドネオン音色、編曲の変遷が一望できます。
選び方:曲リストに「Sur」「Quejas de bandoneón(※曲名表記は盤により表記ゆれあり)」「La Cumparsita(Troiloの解釈)」などが入っているかをチェックしてください。「年代別名演集」
概要:1930〜50年代の黄金期から1950年代後半までを区切って編集した音源集。モノラル録音ながら当時の演奏の熱量がそのまま伝わってきます。
聴きどころ:Orquesta Típicaとしての迫力、ダンスとしてのタンゴとリリシズムの二面性。初期の力強さから成熟した叙情性への変化を追えます。
おすすめレコード(コア向け・名盤深掘り)
Troiloのディスコグラフィは膨大です。ここでは「名盤」と評価され、音楽的に特に聴き応えのあるものをテーマ別に紹介します。具体的な盤を探す際は、オリジナル・プレス(78回転シングルや初期LP)か、音質の良いリマスター盤かを予算や目的で選ぶと良いでしょう。
歌手別の名演集:Francisco Fiorentino時代の録音
概要:Troiloが人気歌手とともに出した初期の名唱を集めたもの。Fiorentinoの明瞭な語り口とTroiloの伴奏が相性抜群です。
聴きどころ:ダンス曲での切れ味と、カンシオン的な曲での叙情性の両立。Troiloの若きアレンジ力が感じられます。エモーショナルな中期期:Edmundo Rivero / Roberto Goyeneche との共演集
概要:Troiloの晩年に近づくにつれ、歌手の個性を活かした録音が増えます。特にRiveroやGoyenecheとの共演は「歌と器楽の対話」の完成形を示します。
聴きどころ:歌手の独特なフレージングに応えるTroiloの柔軟な伴奏、テンポの揺らぎや間の使い方。名曲「Sur」等の深い解釈を味わえます。小編成の作品集(コンボ/カルテット的な演奏)
概要:オルケスタ・ティピカとは異なる端正で内省的な音世界を聴ける盤。演奏の隅々までTroiloの美学が行き渡っています。
聴きどころ:細部の表現、各楽器間の対話、バンドネオンのソロ的表現の魅力が際立ちます。夜間や静かな時間に聴きたい録音です。
代表曲とその聴きどころ(曲名と着目点)
Sur:Troiloの叙情性が最も表れる曲のひとつ。詩(Homero Manzi)との結びつきが深く、街や記憶を描く情感を器楽が支えます。歌唱版と器楽版の両方を比べて聴くと面白いです。
Quejas de bandoneón(邦題例:バンドネオンの嘆き):バンドネオン自体を主題にした楽曲で、Troiloの楽器表現の豊かさを堪能できます。長いフレーズでの呼吸に注目してください。
(Troilo編曲によるタンゴの名作群):La Cumparsita等のスタンダード・タンゴをTroiloが編曲/演奏した録音は、原曲の骨格を残しつつTroilo流の情緒が加わっており、比較試聴が楽しめます。
聴き方の提案——レコードで深く味わうために
時代順に聴く:初期→中期→晩年の順に聴くと、Troiloの表現の深化や編曲の変化がよく分かります。
歌唱者別で追う:Fiorentino、Rivero、Goyenecheら各歌手との共演を追うことで、Troiloが歌い手に合わせてどう伴奏を変えたかが分かります。
同一曲の別演を比較する:Troiloの同じ曲でも、年代や編成で解釈が大きく変わります。原曲に対するTroiloのアプローチの幅を見る良い練習になります。
楽譜や歌詞を読みながら聴く:特に詩人との協働作品は、歌詞(スペイン語)を目で追うことで演奏の意図やニュアンスが明確になります。和訳を用意して聴くのもおすすめです。
レア盤・コレクター向けの探し方
78回転シングルや初期LPは音歴史的価値が高い反面、価格も高め。希少盤を狙う場合はディスコグラフィ(盤目録)を参照してリリース情報を確認してください。
リマスターCDや近年のアナログ再発は音質面で安心。ただし編集者の選曲によっては重要な録音が外れる場合があるのでトラックリストを確認しましょう。
ディスクグラフィ、オークション、専門店の在庫アナウンスを定期的にチェックすると良いです。歌手名+Troiloで検索すると当たり盤が見つかりやすいです。
まとめ:Troiloをレコードで聴く価値
Aníbal Troiloの音楽は、器楽としての洗練と歌心の両立が魅力です。レコードという媒体で聴くと、その「呼吸」や録音の空気感、mono録音ならではの圧力感が直に伝わってきます。まずは良質な編集盤で代表演を押さえ、気に入った時代や歌手のシングル盤やオリジナル・プレスを掘り下げていくのが楽しみ方の王道です。
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参考文献
- Aníbal Troilo — Wikipedia(英語)
- Aníbal Troilo — Wikipedia(スペイン語)
- Aníbal Troilo — Discogs(ディスコグラフィ)
- Aníbal Troilo — AllMusic(英語)


