ジミー・ギャリソンの低音が支えるコルトレーン黄金期—聴きどころとおすすめレコードを徹底解説
はじめに — ジミー・ギャリソンとは
ジミー・ギャリソン(Jimmy Garrison, 1934–1976)は、モダン・ジャズ史における最も個性的かつ影響力のあるベーシストの一人です。特にジョン・コルトレーンの四重奏団(John Coltrane Quartet)での長年の活動を通じて、その深い低音、シンプルながら強固なタイム感、即興の流れを支える独自のアプローチで知られます。本稿では、彼のプレイが堪能できるおすすめレコードをピックアップし、代表曲や聴きどころを中心に深掘りして解説します。
聴く前に押さえておきたいギャリソンの特徴
低域の安定感:深く太いトーンで楽曲の“地盤”を作る。そこにいるだけで編成全体が安定する力を持っています。
シンプルに見えて緻密:複雑な派手さは少ないが、フレーズの選択やタイミングには精妙さがある。空間を生かす“間”の使い方が巧み。
即興への寄与:コルトレーンの急進的・長尺即興において、旋律の推進力を支えつつも自由度を保つ役割を果たす。
おすすめレコード(厳選)
以下は「ジミー・ギャリソンのベースが特に光る」観点で選んだ代表盤です。各作ごとに代表曲、聴きどころをまとめます。
John Coltrane — A Love Supreme (1965)
代表曲:A Love Supreme: Part I – Acknowledgement(通しで聴くことを推奨)
解説:コルトレーンの宗教的・精神的な到達を示す名作で、ギャリソンはこのアルバムで堅実かつ表現力豊かな低域を提供します。特に第1部のテーマ提示や終盤の燃焼部分では、ベースが旋律の推進力とリズムの安定を同時に担う様子がよく分かります。アルバム全体を通して“支える”プレイと、時に前面に出てくる瞬間の対比が魅力です。
John Coltrane — Crescent (1964)
代表曲:Crescent、Wise One
解説:A Love Supremeの直前に録音された作品で、より落ち着いた叙情性と内省的な雰囲気を持ちます。ギャリソンの低音は曲の深みを増し、コルトレーンの長いソロに対して堅固な基盤を築きます。曲の緩急に対する反応、アクセントの付け方など、伴奏ベースとしての彼の妙技を聴き取れます。
John Coltrane — Ballads (1962)
代表曲:You Are Too Beautiful、Good Morning Heartache
解説:コルトレーンの“歌う”側面が前面に出たバラード集。ギャリソンはここで非常に歌心あるサポートを行い、過度に主張しない中でハーモニーを豊かに感じさせます。静かなダイナミクスを維持しつつ音楽の感情線を支えるプレイは、ベースが“空気”として曲に溶け込む好例です。
John Coltrane — Live at the Village Vanguard (代表テイク集)
代表曲:Chasin' the Trane(ライブ・テイク)、その他長尺即興
解説:ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音には、コルトレーンの強烈な即興性が凝縮されています。長尺の即興では、ビートやテンポが変容し続ける中でギャリソンがどのように“道筋”を作るかを見ることができます。とくにライブならではの即時的な反応力、テンションの作り方は必聴です。
(補足)ギャリソン名義・共演作
ギャリソンはリーダー作や共同名義のアルバムも残しています。リーダー作ではベースを前面に出したアプローチや、仲間との対話を重視した演奏が聴け、コルトレーンでの役割とはまた異なる表情を見ることができます。興味が湧いたらリーダー/共演作も探索してみてください。
聴きどころと視点(各アルバムで何を聴くか)
イントロ〜テーマ提示時:ベースがテーマの輪郭をどのように支えるか(コードの輪郭・歩み)を確認。
ソロの初期段階:ベースは推進力をどう作るか。テンポの維持か、押し上げか、呼吸の補助かを聴き分ける。
緊張が高まる箇所:低音の密度や音価の変化(シンプルなオクターブ弾き、ロングトーン、短いリズム断片)で緊張をどう形成しているか。
静かなパート:音の残響・間の取り方で空間がどう変わるか。ギャリソンは“鳴らさない箇所”も巧みに使います。
おすすめの聴取順(入門〜深堀)
1. Ballads — ギャリソンの“歌心”と伴奏の基本を確認
2. Crescent — 内省的表現と推進力の両立を聴く
3. A Love Supreme — 構成の中での役割と高揚の作り方を体感
4. Live at the Village Vanguard(ライブ) — 即興における反応力と即時性を味わう
レコード選びの実用的なアドバイス(音源やエディションについて)
オリジナル・アナログ盤や信頼できるリマスターを選ぶと、低域の質感や残響、ダイナミクスが生き生きと伝わります。
ライヴ盤は別テイクが複数存在することがあるので、解説やトラック情報を確認して、収録日やメンバーをチェックすると聴き比べが楽しくなります。
ストリーミングでも十分に楽しめますが、ベースのニュアンスを詳しく聴きたい場合は良好な再生環境(ヘッドホンやスピーカー)を用意すると差が出ます。
おわりに
ジミー・ギャリソンは「目立つ派手さ」ではなく「楽曲全体を支える深さ」で聴き手を惹きつけます。コルトレーン黄金期の録音を中心に、まずは数枚を通して聴き、上で挙げた聴きどころを意識して再生すると、新たな発見が必ずあります。ベースが音楽の地平をどう作るのか——その問いに対する豊富な答えがギャリソンの演奏には詰まっています。
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参考文献
- Jimmy Garrison — Wikipedia
- A Love Supreme — Wikipedia
- Crescent (John Coltrane album) — Wikipedia
- Ballads (John Coltrane album) — Wikipedia
- Live at the Village Vanguard — Wikipedia
- Jimmy Garrison — AllMusic


