Flip Phillips フリップ・フィリップス: テナーサックスとクラリネットで綴るスウィングとビバップの軌跡—JATPの熱演と名盤ガイド

Flip Phillips — プロフィール

Flip Phillips(フリップ・フィリップス、1915–2001)は、アメリカのテナーサックス奏者/クラリネット奏者で、スウィングとビバップの橋渡し役として知られるジャズ・シーンの重要人物です。ビッグバンドや小編成の両方で活躍し、特にノーマン・グランツ主催の「Jazz at the Philharmonic(JATP)」での熱演や、Clef/Verve系の小グループ録音で広く名を知られるようになりました。

キャリアのハイライト

  • ビッグバンド期:若手時代に複数のビッグバンドで経験を積み、堅実なスイング感を身につけました。ビッグバンドで培った「大きな音で歌う」表現が、その後のソロ活動にも活かされています。

  • Jazz at the Philharmonic(JATP):ノーマン・グランツの興行で数多く出演し、白熱したライブソロで観客を沸かせました。ここでの演奏は、フィリップスの即興力とエンターテイナー性を世に知らしめました。

  • 小編成録音(Clef / Verve):1940〜50年代を中心に、小グループでの録音を多数残し、テナーの表現幅を広げました。また、オスカー・ピーターソンなど一流の伴奏陣と共演したセッションもあります。

  • 長寿にわたる活動:晩年まで演奏・録音を継続し、Pabloなどのレーベルでの再録音やライブ録音を通じて、新しい世代にも再評価されました。

サウンドと演奏スタイル:Flip Phillips の魅力を深掘り

Flip Phillips の演奏が多くのリスナーやミュージシャンに愛される理由は、単なるテクニック以上に「語りかける」ようなソロの作り方と、スイングの確かさにあります。以下、具体的な要素で分解してみます。

  • 太く温かいトーン:フィリップスのテナーは厚みがあり、豊かな中低域を持つ一方で、艶やかな高音も自在に出せるため、ブルージーな場面からリリカルなバラードまで説得力があります。

  • スウィング感と語り口:元来のスイング精神を失わずに、フレーズを「歌う」能力に長けています。速いパッセージでもリズムの芯を失わず、聞き手に物語を届けるようなソロを構築します。

  • ビバップ的語法の消化:1940〜50年代のモダン・ジャズ語法(クロマチックな装飾、複雑なリズム句)を取り入れながらも、過度に難解にならず“スウィング・フィール”を保つバランス感覚があります。

  • クラリネットの併用:テナーだけでなくクラリネットも随所で用い、楽器によって色彩を変える柔軟性が魅力です。クラリネットではより軽やかで洒脱な側面を見せます。

  • ライブでの即興力とショーマンシップ:JATPなどの舞台で培われた観客を引き込む術があり、ソロにドラマとテンションを付与します。

代表曲・名盤(入門と深掘りのための聴きどころ)

Flip Phillips は多数のライブ/スタジオ録音を残しています。以下は「まずこれを聴いてほしい」「さらに深掘りするなら」という観点でのガイドです。

  • 入門(ライブの熱気を味わう):「Jazz at the Philharmonic」関連のライブ録音群。JATPの編集盤やコンピレーションには、フィリップスのエネルギッシュなソロが多く収められています。

  • スタジオ小編成セッション:1940〜50年代にClef/Verve系で行われたカルテット/クインテット録音。ピアニスト(オスカー・ピーターソン等)との緊密なインタープレイが楽しめます。小編成ゆえにソロの「語り」が際立ちます。

  • 再評価盤・編集盤:キャリアを俯瞰するコンピレーション(Clef/Verve/Pabloのベスト盤や時系列編集盤)。まだ聴いたことがない方は「Complete sessions」的な編集盤から入ると、演奏の変遷を追いやすいです。

  • 共演録音に注目:JATPでの共演者(オスカー・ピーターソン、バディ・リッチなど)や、ビッグバンド時代の吹き込みはフィリップスの多面的な魅力を示してくれます。

どう聴くか — Flip Phillips の魅力を最大限に味わうための聴き方

  • フレーズの「始まり」と「終わり」を追う:彼は短いモチーフを反復・発展させることで物語を作るタイプのソリストです。フレーズの入口・出口(レスポンス)に注目すると構築性が見えてきます。

  • リズム・セクションとの対話:ピアノやドラムとの掛け合い(特にピアノのコンピングに対する応答)を意識すると、彼の即興が単なる「ソロ」ではなく「会話」になっていることが分かります。

  • トーンの変化を聴き分ける:同じフレーズでもトーンのニュアンス(力を込める、抜く、ヴィブラートの有無)で感情表現を変えます。これを聴き取ることで「技術=表現」だと理解できます。

  • ライブ録音でのテンション感を体験する:JATPのようなライブでは時間の経過や聴衆の反応が演奏に影響を与え、スタジオとは違うスリルが生まれます。まずはライブ音源で彼の熱量を体感するのをおすすめします。

影響と遺産

Flip Phillips は、スウィング時代の語法を基盤にしながらモダン・ジャズ的要素を消化していったことで、次世代のプレイヤーに「歌う」テナーの可能性を示しました。JATPを通じて世界中の聴衆に届いたこと、また長年にわたる録音アーカイブが後続のリスナーや研究者にとっての資料になっている点も重要です。

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(ここにはリリースやレーベルが継続的に提供する、Flip Phillips の定番・名演をまとめたプレイリストやストリーミングの紹介を想定しています。例えば JATP の各種コンピレーション、Clef/Verve 時代の小編成セッション、Pablo 等の後期録音の編集盤などが「エバープレイ」としてふさわしいでしょう。)

参考文献