John Lewis(ピアニスト)と Modern Jazz Quartetの名盤徹底解説:Django から Odds Against Tomorrow まで
はじめに — どの「John Lewis」かを扱うか
本稿で扱う「John Lewis」は、モダン・ジャズ・カルテット(Modern Jazz Quartet、以下MJQ)のピアニスト/作曲家として知られるJohn Lewis(1920–2001)についてです。クラシックの様式感とジャズの即興を融合させた冷静で構築的なアプローチが特徴で、日本でも熱心なファンの多い人物です。ここでは、John Lewis の音楽性を深掘りしつつ、代表的なレコード(名盤)を厳選して解説します。
John Lewis を知るための代表レコード(名盤ピックアップ)
Modern Jazz Quartet — Django
なによりもまず聴くべき一枚。タイトル曲「Django」はJohn Lewis がジャンゴ・ラインハルトに捧げた作品で、哀愁を帯びた旋律と緻密なアンサンブルが融合します。MJQ の美学(静謐さ、均衡、室内楽的な対位法)が最も端的に表れている名演が収められており、Lewis の作曲/アレンジ能力を知るうえで入門盤として最適です。
Modern Jazz Quartet — Fontessa
クラシック的な形式感とジャズの即興がより洗練された作品群を聴けるアルバム。Lewis の組曲的な感覚やモチーフの展開が堪能でき、MJQ の室内楽的アンサンブルが完成形に近づく過程が分かります。アレンジの緻密さ、楽器間のバランス感を味わいたいリスナーにおすすめです。
Modern Jazz Quartet — Pyramid(あるいは同時代の大作群)
MJQ がより多様な編成やオーケストレーションに挑んだ時期の作品。Lewis はジャズ的要素を保ちながら管弦楽的なテクスチャーや形式を取り入れ、Third Stream(ジャズとクラシックの融合)的試みを推進しました。オリジナルの室内楽性が発展していく様子をたどるのに適しています。
John Lewis — Odds Against Tomorrow(サウンドトラック)
映画のために書かれたスコアで、Lewis の作曲家としての側面が色濃く出ています。映画的なムードやシーンを補強するための色彩感、叙情性、そしてジャズ的な瞬発力のバランスが見事。MJQ の枠を超えた作曲/編曲能力を知るうえで非常に興味深い録音です。
Modern Jazz Quartet — ライヴ録音(例:Music Inn 等のコンサート録)
スタジオ録音での精緻さとは別に、ライヴではメンバー間の会話や即興的な展開が生き生きとします。Lewis のリーダーシップの下で、どのようにテーマが変容し、アンサンブルが呼吸するのかが直に伝わってきます。MJQ のライブ盤は、レコードとしての魅力が高いのでぜひ手に取ってほしい分野です。
各アルバムの聴きどころ(曲と場面別ガイド)
「Django」:テーマの叙情と間の取り方
タイトル曲の導入部の静けさ、メロディの語り口、そして間(ま)の使い方に注目してください。Lewis は音を溜めてから放つようにフレーズを置き、これがMJQ特有の「室内楽的緊張感」を生み出します。組曲的なトラック(Fontessa など):
複数の部分からなる曲でのモチーフの再利用や変奏に耳を澄ませると、Lewis がクラシック的な構成感をジャズにどう翻訳しているかが見えてきます。サウンドトラック作品:
映像と結びつくために書かれた音楽では、短い動機や和声の色彩が効果的に用いられます。映画音楽を切り離して聴いたときに、曲が持つ「場面を想起させる力」を確かめてください。ライヴ:
即興の応答、テンポの揺れ、ソロの拡張に注目。レパートリーが場によってどのように変化するかが分かります。
John Lewis の音楽的特徴を深掘りする
John Lewis の音楽は以下の要素が大きな特長です。
- クラシック的構成感:バロックや古典派の対位法や形式感をジャズへ応用し、短いフレーズの繰り返しと変奏で曲を構築します。
- 室内楽的アンサンブル:MJQ での弦楽四重奏的(ただし楽器はピアノ・ヴァイブ・ベース・ドラム)のバランス感が、全体の音像を“室内楽”へと引き寄せます。
- 抑制と間の美学:過度に技術を見せびらかさない抑制的な演奏で、音と言葉の余白を重視します。
- Third Stream の志向:ジャズとクラシックの橋渡しを試みる姿勢があり、編成や編曲で実験的な試みを行っています。
聴き進めのおすすめ順と楽しみ方
入門→深掘りの順序:まずは「Django」でMJQの基本美学をつかみ、その後 Fontessa や Pyramid のようなアレンジ重視のスタジオ盤、次に Odds Against Tomorrow のような作曲作品、最後にライヴ盤で即興の広がりを味わうと流れが良いです。
比較で楽しむ:同じ曲がスタジオとライヴでどのように変わるか、あるいは異なる録音年代でアプローチがどう変化するかを比較して聴くと、Lewis の音楽観がより鮮明になります。
パート別の注目点:ピアノだけでなく、ヴァイブ(Milt Jackson)やベース、ドラムとの掛け合いに耳を傾けることで、Lewis の「声」の存在が浮かび上がります。
あえて押さえておきたいマイナー/変化球
映画音楽やオーケストラ伴奏の録音は、MJQ の枠を超えた Lewis の作曲家性を示す良い例です。ジャズ・リスナーだけでなく、映画音楽や近代的作曲に関心がある人にも刺さる要素があります。
また、50〜60年代の他のジャズ作家(ゲスト奏者や共演者)との共作やコンピレーションで、普段のMJQとは違う顔を見せる録音も興味深いです。
購入・コレクションの観点から
オリジナル盤の価値やリイシューの音質には差があることが多いですが、本稿は音質や保管の技術的アドバイスは扱いません(ご希望があれば別途対応します)。選盤の際は、収録曲やクレジット(メンバー、録音日、スタジオ)を確認すると、同一タイトルでも編成や演奏が異なる場合があるため注意してください。
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参考文献
- John Lewis (pianist) — Wikipedia
- Modern Jazz Quartet — Wikipedia
- Django (album) — Wikipedia
- Fontessa — Wikipedia
- Odds Against Tomorrow (soundtrack) — Wikipedia
- John Lewis — AllMusic


