ソニー・クラークの名盤ガイド:Cool Struttin' から編集盤まで、ハードバップを支えたジャズピアノの職人技
Sonny Clarkとは — 短いイントロダクション
Sonny Clark(ソニー・クラーク、1931–1963)は、1950年代後半から60年代初頭にかけて活躍したアメリカのジャズ・ピアニスト。ハードバップの時代に多くの名演を残し、ブルーノートをはじめとする名門レーベルでの録音が評価されています。ブルースに根ざしたグルーヴ感、シンプルで明快なメロディ・センス、そして洗練されたコード・ワークが特徴で、リーダー作だけでなく多くのセッションで重要な役割を果たしました。
おすすめレコードと深掘り
Cool Struttin'
代表作、いわゆるソニー・クラークの代名詞的アルバム。硬質でタイトなハードバップ/ブルース・フィールを前面に出した演奏が魅力です。彼の持ち味である「抑制されたゴージャスさ」とでも言えるピアノ・タッチがよく出ています。
- おすすめ収録曲(聴きどころ):"Cool Struttin'", "Blue Minor", "Sippin' at Bells" — タイトル曲はグルーヴ感とメロディのバランスが秀逸。
- 聴き方ポイント:冒頭のイントロ/テーマ→ソロ→リズムの繰り返しの中で、クラークのコードワークや左手のリズムがどう楽曲を支えているかを意識すると、その“職人的”な伴奏術がよくわかります。
- 初めて聴くなら:このアルバムから入ると、クラークの作曲力・編曲感覚・演奏の三拍子がつかめます。
Leapin' and Lopin'
クラークのリーダー・アルバムの中でもテンポ感とスイング感が際立つ一枚。より軽快で跳ねるようなリズム感が特徴で、トータルとしての演奏のまとまりの良さが楽しめます。
- おすすめ収録曲(聴きどころ):タイトル曲やブルース・ナンバーなど、快活な演奏が多く、ピアノのフレーズ作りや短いソロ回しに注目。
- 聴き方ポイント:モチーフの変化やコンピング(伴奏)の工夫を追い、どうやってアンサンブルを前に押し出しているかを聴くと面白いです。
- こんな人に:ハードバップの躍動感、軽快さを求めるリスナーに適しています。
Sonny Clark Trio(トリオ録音)
ピアノ・トリオでの録音はクラークの“素”がよく出る場面。複雑な編成がない分、ピアノの表情やテンポ感、ハーモニー感覚がストレートに伝わってきます。親密な演奏空間での即興と相互反応を楽しめます。
- おすすめ収録曲(聴きどころ):バラードやスタンダードを含むトリオ演奏では、イントロからの弾き出し方、伴奏時の余白の使い方、ソロのビルドアップなどに注目。
- 聴き方ポイント:左手のリズム、ベースとのインタープレイ、ドラムとのタイム感の微妙な揺らぎを聴き分けると深みが出ます。
- コレクター向け:トリオ録音は演奏の“生っぽさ”がわかりやすいので、スタジオ・レベルやマイク配置の違いによる音の印象も楽しめます。
My Conception(その他のセッション/編集アルバム)
クラークは多くのセッションワークと録音を残しており、単一の一貫したスタイルではなく、セッションごとに顔が変わります。My Conception のような編集盤や未発表音源集には、彼の実験的側面や別の顔が出てくることがあります。
- おすすめ収録曲(聴きどころ):アルバムによっては未発表テイクや別編成の演奏が含まれ、普段とは違うアレンジやアプローチが楽しめます。
- 聴き方ポイント:同じ曲の複数テイクを比べ、フレーズの選択やリズム感、テンポの差、即興の展開を比較してみると、プレイヤーとしての思考が見えてきます。
編集盤・コンプリート集(例:Complete Blue Note Sessions)
クラークは短い活動期間ながらブルーノートや他レーベルで多数のセッションを行っています。編集盤やコンプリート集は彼の演奏の全貌を知るうえで便利です。アルバム単位では見えない成長や変化、セッションごとの相互作用が分かります。
- おすすめポイント:時期順に並べて聴くと、プレイスタイルの変遷や作曲面での傾向がつかめます。未発表曲や別テイクが収録されていることも多く、研究的価値が高いです。
- 購入のコツ:公式のリマスターや権利処理がしっかりしたボックスを選ぶと、音質・解説ともに安心です。
聴き比べ・収集のすすめ(どれを優先して手に入れるか)
初めてSonny Clarkに触れるなら、まずは「Cool Struttin'」を推奨します。その後、トリオ録音や「Leapin' and Lopin'」で彼の多面性を確認し、さらに興味が湧いたら編集盤や未発表音源集で細部に入っていく、という順序が自然です。
- エントリー:Cool Struttin' → Leapin' and Lopin'
- 深掘り:トリオ録音、録音年代を追う編集盤
- 研究・コレクション:コンプリート・ボックス、セッション別ディスコグラフィ
聴取のポイント — 楽曲分析のために注目したい箇所
- テーマとソロの関係:テーマ提示後、どのようにモチーフが展開・変形するか。
- コンピング(伴奏)の工夫:クラークの左手やコード選択がリズムとハーモニーをどう支えているか。
- フレーズ作り:シンプルなメロディの中にある“間”や反復の使い方。
- 他プレイヤーとの相互作用:セッションでの会話(call-and-response)や応酬の描写。
コレクション上の実用的アドバイス(音質/版の選び方)
- 最初は公式リイシューやメジャーなリマスター盤で聴き、音楽性に惚れたらオリジナル盤や高音質国内プレスを探すのが安全です。
- 複数のプレス/リマスターで聴き比べると、録音のニュアンス(ピアノの響き、ベースの存在感、ドラムの位置)が違って聴こえるので面白いです。
- 解説やライナーノーツ(演奏の背景や同時期の他セッションとの関係を記すもの)も作品理解に役立ちます。できれば英語・日本語どちらかの良質な解説付き盤を選ぶとよいでしょう。
まとめ
Sonny Clarkは短い生涯の中で数多くの印象的な録音を残しました。まずは「Cool Struttin'」で彼の基本的な魅力をつかみ、その後トリオ録音や編集盤で細部を追うのがおすすめです。ピアノの音色、リズム感、メロディ構築に注目して聴けば、クラークの“職人的”な魅力を深く味わえます。
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参考文献
- Blue Note: Sonny Clark(アーティスト紹介)
- AllMusic: Sonny Clark - Biography & Discography
- Discogs: Sonny Clark(ディスコグラフィ)
- Jazzdisco.org: Sonny Clark Discography


