Mischa Elmanを聴く極意と名盤ガイド—歌うヴァイオリンの魅力を再発見
Mischa Elman(ミシャ・エルマン)とは — その魅力を改めて
ミシャ・エルマン(1891–1967)はロシア出身のヴァイオリニストで、レオポルト・アウアー門下に学び、20世紀前半の録音史に残る名手の一人です。柔らかく豊かな中音域の響き、表情豊かなヴィブラート、そしてロマンティックな歌い回しを得意とし、「歌うヴァイオリン」の代表的解釈者として今日も評価されています。一方で当時の演奏様式(ポルタメントや自由なルバート)を色濃く残し、現代の厳密なスタイルとは一線を画す個性を持ちます。
収集・鑑賞の前提(何を基準に盤を選ぶか)
- 曲目で選ぶ:協奏曲の大作(ブルッフ、メンデルスゾーン、チャイコフスキーなど)か、小品・アンコール集(サラサーテやパガニーニ風のショウピース)かで楽しみ方が変わります。Elmanは両方に強みを持ちます。
- 録音年代と音質:エルマンの主要録音は78回転時代〜初期電気録音期に集中します。オリジナルの雰囲気を重視するなら当時の音色感を活かしたリイシュー、音の鮮明さを優先するなら最新のリマスター盤を探すと良いでしょう。
- 演奏解釈を楽しむ:現代的な「正確さ」を期待するより、歌心(cantabile)・色彩感・ロマンティックな身振り(portamento, rubato)を味わうつもりで聴くと、Elmanの魅力が深く伝わります。
代表曲・名盤(おすすめレコード)
以下は典型的なおすすめ盤のタイプと、聴きどころの解説です。盤名や流通形態は複数のリイシューがありますので、CDなら「Complete/Collected Victor/HMV recordings」などの注記を参考に探してください。
- ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番(G小調)
理由:Elmanのレパートリーの中でも最も評判の高い作品。彼の温かい中低音と歌うフレージングがブルッフのロマンティシズムと相性抜群です。ゆったりとした語り口から盛り上がるクライマックスまで、感情の線が明瞭に伝わります。複数の録音が存在するので、音質優先なら近年のリマスター盤を探すと良いでしょう。
- メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調
理由:技巧と歌のバランスが求められる名曲を、Elmanは歌心重視で表現します。第一楽章の主題の歌わせ方、第二楽章の親密な歌い回しは彼ならでは。テンポ感は現代演奏よりゆったりしたところが多いので、比較して楽しむのもおすすめです。
- チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲(録音がある盤)
理由:大曲におけるドラマ性とロマンティックな表情の両方を聴かせる演奏が残されています。エルマンの濃密な音色がチャイコフスキーの情熱的な旋律を引き立てます。歴史的録音ゆえの音色特性(やや丸く温かい響き)を前提に聴いてください。
- 小品・アンコール集(ザイガナー・ワイゼン、サラサーテ作品、パガニーニ風のショウピース等)
理由:エルマンはロマンティックなアンコール曲やショウピースで無類の魅力を発揮します。短い曲であるほど彼のフレージングや色彩感が直接届きやすく、ヴァイオリンの「声」を堪能できます。コンピレーション盤でまとめて聴くと効率的です。
- 歴史的録音集("Complete Victor/HMV recordings"、"The Early Recordings" などのまとめ盤)
理由:エルマンの演奏様式の変遷や代表的なライヴ録音・セッション録音を網羅的に聴けるため、研究的にもレジャー的にも価値が高いです。選ぶ際はリマスタリングの質(ノイズ除去やイコライズ)が良いものを選ぶと聴きやすくなります。
- 放送音源・ライヴ録音集(もし見つかれば)
理由:スタジオ録音とは違う自由さや即興的な表現が残されていることがあります。音質はマチマチですが、歌心や解釈の幅を知るうえで貴重です。リイシューされている場合は解説や音源出典を確認して購入すると良いでしょう。
盤ごとの「聴きどころ」と楽しみ方のコツ
- 歌い回しを追う:メロディーラインの息づかい、ヴィブラートの変化、ポルタメント(滑らかな移弦)に注目すると、Elman流の「歌」がよく分かります。
- テンポ感の違いを楽しむ:20世紀前半の演奏は現代よりルバートが大きいことが多いです。楽曲の「語り口」として受け止めると良いでしょう。
- 複数録音を比較する:同じ曲の別録音を比較すると、解釈の変化や録音技術の影響が見えてきます。たとえば協奏曲の呼吸感やオーケストラとのバランスの違いを比べてみてください。
- 解説を読む:歴史的録音には当時の背景やセッション情報を解説したブックレットがつくことが多いです。解説を読むと鑑賞が深まります。
入手・リイシューに関する実務的アドバイス(簡潔に)
- 「Complete」や「Collected Victor/HMV recordings」等のまとめ盤は初心者に便利。音質や解説の質はレーベルによるので、購入前にレビューを確認する。
- オリジナル78回転盤を蒐集する場合は専門店やオークション、ディスクショーでの出物を探す。保存状態が鑑賞に直結するため注意が必要。
- CDやデジタルで聴く場合、リマスターが適度にノイズ除去・音質補正されている盤を選ぶと、エルマンの音色がより素直に伝わります。
まとめ — Elmanを聴く喜び
Mischa Elmanの魅力は「声としてのヴァイオリン」にあります。現代の演奏スタイルと聴き比べることで、演奏解釈の歴史や"歌"の伝統が見えてきます。まずはブルッフやメンデルスゾーンの協奏曲、そしてアンコール集でその声をじっくり味わってください。良質なリイシュー盤を一枚手に入れるだけで、Elmanの世界に深く浸れます。
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参考文献
- Mischa Elman — Wikipedia (English)
- ミシャ・エルマン — Wikipedia (日本語)
- Mischa Elman — AllMusic
- Mischa Elman — Discogs(ディスコグラフィ参照)


