Riz Ortolani(リズ・オルトラーニ)— メロディとジャンルを横断する映画音楽の巨匠、『More』で世界を魅了した作曲者
プロフィール
Riz Ortolani(リズ・オルトラーニ、1926年 - 2014年)は、イタリア出身の映画音楽作曲家・編曲家。戦後イタリア映画の黄金期から国際的な商業映画、ドキュメンタリー、スリラー、ホラー、コメディ、メロドラマまで幅広く手がけ、数百本以上のサウンドトラックを残しました。特に1962年のドキュメンタリー映画『Mondo Cane(世界残酷物語)』のテーマ曲「More」は世界的なヒットとなり、彼の名を一躍知らしめました。
音楽的な魅力・特徴
- メロディの力強さ
オルトラーニの作風の核は「メロディ」。単純だが耳に残る旋律を巧みに書き、映画の登場人物や空気感を一音で表現する力がありました。特にラヴテーマやセンチメンタルな場面での旋律の美しさは際立っています。
- ジャンル横断の柔軟性
ジャズ、ポップ、オーケストラ、ラウンジ、エスニック、サスペンス的なアンビエンスまで、多様なスタイルを自然に行き来します。作品のトーンに即したアレンジと編成を選び、同一作曲家とは思えないほど幅広い色調を持たせられるのが強みです。
- オーケストレーションとサウンドメイク
弦楽器を中心に管楽器や合唱、時にはエレキやジャズコンボを織り交ぜることで、豊かなテクスチャーを作り出します。ロマンティックな広がりと、必要に応じた狂気や不穏さの表現—どちらも非常に説得力があります。
- 映画の情緒を重視する語り口
主題歌的な要素(歌モノ)を効果的に導入し、劇場公開や商業展開を念頭に置いた「耳に残る」音作りをしてきました。これは映画音楽が劇中だけでなくレコードやラジオでも消費される時代背景と親和します。
代表作・名盤(抜粋)
- Mondo Cane(1962) — テーマ「More」
彼の最も有名な作品。シンプルでありながら劇的なテーマ「More」は世界的なヒットとなり、映画音楽の“主題歌”が国際的に受け入れられる契機の一つになりました。映画の文脈を超えて多くのカバーが生まれたことも特徴です。
- Cannibal Holocaust(1980) — サウンドトラック
ショッキングな映像で物議を醸した映画ですが、オルトラーニの音楽は対照的に美しく、意図的なギャップを生み出します。劇中での不穏な場面や異文化描写を音楽で不可思議に際立たせる手腕が見られます。
- The Valachi Papers(1972) など国際作品のスコア
ハリウッドや国際共同制作の作品でも起用され、英語圏の俳優や監督とも共演しています。商業映画に即したグルーヴやジャズ感覚を取り入れたスコアが特徴です。
- サウンドトラック編集盤・アンソロジー
膨大な仕事のため、後年にコレクター向けの編集盤や未発表トラック集が多数リリースされ、音楽ファンやサンプリング・クルーから再評価されています。
作曲手法とシーンへの寄り添い方
オルトラーニはまず映画の「情緒」を掴み、登場人物や状況を示す短いモチーフを作ることから始めることが多かったと言われます。モチーフを様々な編成で展開することで、同じ旋律が場面ごとに異なるニュアンスを帯びます。
歌ものへの適応力も高く、英語詞のヒット曲化(=主題歌化)を意識した作曲を行った例が多いのも特徴です。これにより映画の公開後も楽曲が独立して消費されることが多かった点が、商業的な成功につながりました。
また、既存楽曲や過去の自作を映画内で再利用・引用する柔軟性があり、皮肉や対比を生む効果的なサウンドデザインを行っています。
影響と評価・遺産
「More」を通じた国際的成功によって、オルトラーニはイタリア映画音楽を世界に知らしめた作曲家の一人になりました。ジャンルに縛られない働きぶりは後続の映画音楽作家にも影響を与えています。
近年はサウンドトラック再発やデジタル配信、ディガーや映画音楽ファンによる再評価が進み、サンプルソースとしてヒップホップやエレクトロニカのプロデューサーにも注目されています。
映画音楽の枠に留まらず、ポップス/ジャズの要素を映画音楽に取り入れる手法は、今日の映像音楽の汎用性を高める上で重要な先鞭となりました。
聴きどころ・楽しみ方の提案
まずは「More」を聴いて、オルトラーニの「歌心」とオーケストレーション感覚を掴みましょう。次に、トーンの異なるサウンドトラック(例えばホラー寄りとロマンティック寄り)を比較して、同一作曲家の多面性を味わうのがおすすめです。
映画を観ながら聴く場合は、音楽が映像とどう対比・補完しているかに注目すると面白いです。とくにショッキングな映像に美しい音楽を被せるときの効果は、オルトラーニ作品によく見られる手法です。
コレクターズ盤やリマスター盤には未発表トラックや別テイクが含まれることがあるため、ディープリスニングにはそうした再発盤を探す価値があります。
まとめ
Riz Ortolaniは「耳に残るメロディ」と「ジャンルを横断する柔軟性」を併せ持った映画音楽家です。商業性と芸術性のバランスが巧みで、一本の主題歌や一つのテーマが映画を越えて独り歩きする事例を多数生み出しました。映画音楽ファンだけでなく、メロディを重視するリスナー、サンプリングソースを探す音楽制作者にも大きな魅力を残しています。
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参考文献
- Riz Ortolani - Wikipedia
- Riz Ortolani | AllMusic
- Riz Ortolani Discography | Discogs
- Riz Ortolani - IMDb


