モッズコート完全ガイド|歴史・選び方・着こなし・お手入れを徹底解説
はじめに — モッズコートとは何か
モッズコートは、ミリタリーのフィールドパーカ(特にM-51/M-65系のパーカやフィールドジャケット)をルーツに持ち、丈の長いフード付きコートを指す日本での一般的な呼称です。オリーブドラブなどの落ち着いた色味、ウエストや裾のドローコード、フロントのボタンとジッパー、時に“フィッシュテイル(尻尾状の裾)”を備えるのが特徴で、1960年代のイギリスのモッズ(Mod)サブカルチャーによりファッションアイテムとして定着しました。
歴史的背景:軍装からモッズへ
モッズコートの原型は、朝鮮戦争期に米軍で採用されたM-51パーカ(1951年制定)やその後の改良型であるM-65フィールドジャケット(1965年制定)などの軍用装備です。これらは防寒性と機能性に優れ、ヴィンテージの軍用品として流通するようになりました。
イギリスの若者文化「モッズ(Mod)」は、洗練されたスーツスタイルを好みスクーターで移動するライフスタイルと結び付きます。1960年代のイギリスでモッズたちはスーツを傷めないよう、外套として米軍のパーカを着用し始め、それがファッションアイテムとして定着。とくにフィッシュテイルパーカはスクーターでの防風・防寒効果が高かったことから支持されました。
モッズコートの代表的なディテール
- カラー:伝統的にはオリーブドラブ(OD)やカーキ。ただし黒・ネイビー・ベージュなどバリエーションも豊富。
- 丈感:膝上〜膝丈のロングタイプが典型。近年はショート丈のアレンジも流行。
- フード:大きめのフード、場合によってはファー(リアルまたはフェイク)付き。
- フィッシュテイル:後ろ裾が割れているデザインで、ボタンで留めて股の間を覆えるもの。
- ドローコード:ウエストや裾に調節用の紐があり、シルエットを変えられる。
- ポケット:大きめのフラップポケットが多く、実用性重視。
- 裏地:キルティングやパイル、脱着可能なライナーで防寒性を調整。
種類と素材の違い
モッズコートにはヴィンテージの軍用実物、中間のミリタリーリプロダクション(復刻)、そしてファッションブランドが作る現代的なアレンジ品の三通りがあります。素材はコットンツイル、ポプリン、ポリエステル混紡、ナイロン、さらには防水加工を施した素材まで多様です。
選ぶポイントは使用シーンとメンテナンス性です。オリジナルの厚手コットンは風合いが良い反面、撥水性が低く手入れが必要。モダンなナイロン混は軽量で撥水性が高く扱いやすいです。
自分に合うモッズコートの選び方
- サイズ感:インナーにニットやジャケットを着る想定ならワンサイズ上を検討。肩幅・身幅を重視して試着を。
- 丈の選択:身長やコーデのバランスで決める。ロングは防寒性とクラシックさ、ショートはモダンで動きやすい。
- ライニング:真冬に使うならキルティングやボアライナー付きが安心。春秋メインなら薄手のライナーかライナーなし。
- 用途:街着中心なら軽くて手入れしやすい素材、アウトドア寄りなら防水・防風性能を重視。
コーディネートのコツ — メンズ・レディース別の着こなし例
モッズコートは合わせるアイテム次第で軍ミックス、トラッド、ストリート、ミニマルなど幅広い表情を持ちます。
メンズの着こなし
- カジュアル:デニム、スウェット、スニーカーでラフに。裾のドローコードを軽く絞ると動きが出ます。
- モッズ×トラッド:細身のチノやスラックス、シャツを合わせて上品に。コートの長さがきれいに出るバランスを意識。
- レイヤー:パーカーやニットを重ね、フードの出し方で表情を変化させる。
レディースの着こなし
- フェミニンミックス:ワンピースやスカートと合わせて、あえてボリュームのあるアウターを外し役に。
- タイトボトムスとの組み合わせ:細身のパンツやタイツで下半身を引き締めるとバランスが良い。
- ウエストマーク:内蔵のドローコードでウエストを絞りシルエットを女性らしく見せる。
シーズン別の使い方とレイヤリング
モッズコートは秋〜冬にかけてはメイントップとして活躍し、春先の風の強い日にも便利です。
- 秋:薄手のニット+シャツで十分。裾や袖を少し捲ると抜け感が出る。
- 冬:キルティングやボアライナーを装着、ニットやダウンベストを重ねると高い防寒性。
- 春:軽い素材のものはジャケット替わりに。フードをしまって襟元を見せると季節感が出る。
メンテナンスと長持ちさせるコツ
モッズコートは形や素材によって手入れ方法が異なりますが、長く使うための基本は以下のとおりです。
- 洗濯:ヴィンテージや本革・ファー付きは専門クリーニング推奨。撥水加工のないコットンは水洗いで縮みや色落ちが起こるため注意。洗濯表示に従うこと。
- ファーのケア:フェイクファーはブラッシングで形を整える。リアルファーは専門店へ。
- 撥水性の回復:コットン系には撥水スプレーを使用、ワックス系の再加工は素材と仕上がりを確認してから。
- 保管:湿気を避け、風通しの良い場所でハンガー保管。長期間使わない場合は防虫剤を用いる。
- 修理:ジッパーやボタンの不具合は早めに交換。ほつれは裁縫で補修すると寿命が延びる。
ヴィンテージを買うときの注意点
ヴィンテージの実物(ミリタリーサープラス)は風合いや作りの良さが魅力ですが、下記を確認してください。
- サイズ表記が当時の規格で日本のサイズと異なることがあるため、実寸を必ず確認。
- 防水・保温素材は経年で劣化している可能性がある。
- リペア履歴(補修や色の補正)があるかどうかをチェック。
主要ブランドと買いどころ
ミリタリーのヴィンテージやリプロダクション、現代のファッションブランドまで選択肢は豊富です。代表的なブランドやカテゴリは次の通り。
- ヴィンテージ/サープラスショップ:実物の質感やディテールを楽しみたい人向け。
- リプロダクションブランド:The Real McCoy's、Buzz Rickson'sなど、日本の復刻系ブランドはミリタリーディテールを忠実に再現することで知られます。
- 現代ファッションブランド:BEAMS、UNITED ARROWS、engineered garmentsなどは現代的解釈のモッズコートを展開。
- 米国ブランド:Alpha IndustriesはM-65等のフィールドジャケットを一般向けに展開してきたことで知られます。
サステナビリティとリユースの視点
モッズコートは耐久性が高く、長く着られるアイテムです。ヴィンテージ購入やリメイク、古着のリユースは環境負荷を減らす選択肢。気に入った一点を長く手入れして着ること自体がサステナブルです。
まとめ — モッズコートを選ぶ際のチェックリスト
- 用途(街着/アウトドア/冬用)に合った素材とライニングか。
- 試着して肩幅・身幅・袖丈を確認し、重ね着の余裕を確認すること。
- 丈のバランスが自分の身長やスタイルに合うか。
- ファーや特殊素材はメンテナンス可能かどうか。
- ヴィンテージなら実寸と劣化状態を必ずチェック。
最後に
モッズコートは単なる防寒着ではなく、歴史的背景と多様な着こなしが楽しめる上質なアウターです。オリジナルのミリタリーディテールを残すもよし、現代的なサイズ感や素材で新しい解釈を楽しむもよし。自分のライフスタイルに合った一着を見つけ、適切に手入れしながら長く愛用してください。
参考文献
- Fishtail parka - Wikipedia (英語)
- M-65 field jacket - Wikipedia (英語)
- Mod (subculture) - Britannica (英語)
- Alpha Industries 公式サイト
- The Real McCoy's 公式サイト
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