ALAC(Apple Lossless)完全ガイド:仕組み・音質・互換性・運用のポイント
はじめに — ALACとは何か
ALAC(Apple Lossless Audio Codec)は、Appleが開発・普及させた可逆(ロスレス)圧縮オーディオフォーマットです。圧縮後にデコードすれば元のPCMデータとビットパーフェクトに一致するため、音質劣化を伴わずファイルサイズを抑えられる点が特徴です。主に拡張子.m4a(MP4コンテナ)で扱われ、iTunes/MusicアプリやApple製品でのネイティブ再生を想定したフォーマットとして広く利用されています。
ALACの基礎と歴史
ALACはもともとAppleが自社向けに開発したコーデックで、2011年にソースコードが公開されオープンソース化されました。以降、FFmpegや多くの音楽管理ソフトがALACをサポートしています。ファイルはMP4ベースのコンテナ(通常は.m4a)に格納され、MP4のメタデータ(タグ、アートワーク、iTunes固有の情報)を保持できます。
技術的特徴(対応仕様)
- 圧縮方式:可逆(ロスレス)圧縮。デコードすると元のPCMと一致する。
- コンテナ:MP4/M4A、またはCAFなど。
- ビット深度/サンプリングレート:一般的な実装で最大32ビット、サンプリングレートは理論上最大384kHzまで対応。(実務上は16/44.1kHz、24/48kHz、24/96kHz、24/192kHzが多い)
- チャンネル数:マルチチャンネル(最大8チャンネル)をサポート。
- メタデータ:MP4(iTunes)タグ、カバーアート、ギャップレス再生情報などを保持可能。
音質とファイルサイズの実際
ALACは可逆圧縮のため、音質は元のマスター(PCM)と同一です。ファイルサイズはソースのダイナミクスやレベルに左右されますが、典型的には未圧縮のWAVから40〜60%程度に圧縮されることが多く、FLACと同等レベルの圧縮効率を示します。したがって、長期保存(アーカイブ)用途やリマスター前の無劣化保管に適しています。
ALACとFLACの比較(実務的観点)
- 互換性:FLACはWindows/Linux/Android系でのサポートが広く、オープンなコミュニティ標準。ALACはApple環境(macOS、iOS、iPadOS)でネイティブ対応している点が利点。近年AndroidでもALAC再生が可能なプレイヤーが増えていますが、汎用性ではFLACがやや優勢です。
- 圧縮率:通常は両者で大差はなく、楽曲によって若干どちらが有利かが異なる程度です。
- メタデータ:ALAC(MP4コンテナ)はiTunes向けのタグやカバーアートの互換性が高い。一方でFLACはVorbisコメントを使用します。
- ワークフロー:Apple中心の環境や配信(Apple Music等)を重視するならALAC、クロスプラットフォームで配布・共有するならFLACが選ばれることが多いです。
互換性と再生環境
Apple製品(iPhone、iPad、MacのMusicアプリやiTunes)はALACをネイティブに再生できます。Windows環境でもiTunesを入れればALAC再生が可能です。さらに、以下のツールやライブラリでALACの取り扱いが可能です。
- FFmpeg:エンコード/デコード双方をサポート。
- XLD、dBpoweramp:Mac/Windowsでのリッピングやコーデック変換に対応。
- foobar2000(プラグイン)、VLC、JRiverなどのプレイヤー:ALAC再生対応。
ストリーミングと配信 — Apple Musicの採用例
Apple Musicは2021年に「ロスレス」配信を導入し、ALACを採用しています。Appleの提供するロスレス品質は最大24ビットで、通常のロスレスは最大48kHz、さらに「ハイレゾ・ロスレス」は最大24ビット/192kHz(※再生には対応DACが必要)まで提供されます。この動きにより、配信ベースでもALACの利用が注目されました。
運用上のポイント(リッピング/アーカイブ/マスターファイルの扱い)
- アーカイブ:マスターやリッピングの保存先としてALACは有力。元ファイルをそのまま保持できるため、将来の再変換やリマスタリングに向く。
- リッピング:CDからのリッピングは16ビット/44.1kHzのPCMをALACに可逆で保存。エラー検出(AccurateRipなど)とともに行うのが推奨。
- 制作ワークフロー:マスター制作段階ではWAV/AIFF等の未圧縮ファイルで作業し、配布用や保管用にALACで圧縮するのが一般的。24ビットや高サンプルレートのマスターをALACで保存すれば、将来の利用時に劣化なしで再利用可能。
- タグ管理:MP4タグ(iTunesタグ)を活用すると、カバーアートやギャップレス情報、ライナーノーツ等を保持しやすい。
よくある誤解とQ&A
- Q: ALACは「音がよくなる」か? A: 可逆圧縮であるため、元の音源(マスター)が変わらなければALAC化によって音質が向上することはありません。品質は元の録音・マスタリングに依存します。
- Q: なぜFLACではなくALACを選ぶべきか? A: Apple中心の環境(iPhoneやApple Musicとの親和性)が重要ならALAC。オープンな互換性を重視するならFLAC。
- Q: ハイレゾは本当に必要か? A: ハイレゾ(96kHzや192kHzなど)は制作やアーカイブで有利な場合がありますが、リスナーの再生環境や可聴上の差は条件次第です。保存は高解像度で行い、配信は対象ユーザーに合わせて選択するのが合理的です。
実務でのおすすめ設定
- 長期保存:マスターと同じ解像度(例:24bit/96kHz)でALACに保存。
- 配布/持ち運び用:CD由来なら16bit/44.1kHzのALACで十分。モバイル用途ならファイルサイズを見て選定。
- メタデータ:必ずMP4タグを埋め、アートワークとギャップレス情報を保持する。
- バックアップ:ALACファイルも冗長バックアップ(外付けHDD、クラウド)を推奨。
まとめ
ALACはAppleエコシステムに最適化された可逆圧縮フォーマットで、音質の劣化なくファイルサイズを削減できるためアーカイブや配信、制作ワークフローに適しています。FLACとの違いは互換性やエコシステムの親和性にあり、用途に応じて選ぶのがポイントです。Apple Musicでのロスレス採用により、今後ALACの重要性はさらに高まっています。
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参考文献
- Apple Developer Documentation
- Apple Lossless Audio Codec (ALAC) — GitHub リポジトリ
- Apple サポート:Apple Music のロスレスオーディオについて
- FFmpeg ドキュメンテーション
- Wikipedia:Apple Lossless
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