バルトークとは?生涯・民族音楽研究・代表作を深掘り解説
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バルトーク — 概要
ベーラ・バルトーク(Béla Bartók, 1881–1945)は、20世紀を代表する作曲家であり、民族音楽研究(エスノミュージコロジー)の先駆者でもありました。ハンガリー出身で、作曲家としての革新性とフィールドワークによる膨大な民謡採集活動を両立させ、クラシック音楽に新しいリズム感、旋法、音響の世界を導入しました。代表作には《弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽》(1936年)や《管弦楽のための協奏曲(管弦楽のための協奏曲)》(1943年)といった管弦楽曲、6曲の弦楽四重奏曲、ピアノ作品群(《ミクロコスモス》、ピアノ協奏曲群)などがあります。
生涯と時代背景
バルトークは1881年に当時オーストリア=ハンガリー帝国領のNagyszentmiklós(現ルーマニア領サンニコラウ・マレ)で生まれ、ブダペストで育ちました。1899年から王立音楽院(現リスト音楽院)で学び、ピアノをイシュトヴァーン・トーマン、作曲をヤーノシュ・コエスラー(János Koessler)らに師事しました。20世紀初頭から同僚のゾルターン・コダーイとともにハンガリーや周辺地域の民謡採集を始め、これが彼の創作に決定的な影響を与えました。
第一次世界大戦、ハンガリーの政治的変動、そして第二次世界大戦の勃発といった混乱期を通じて、バルトークは民族音楽の保存と現代作曲の融合に努めました。1936年以降の作品群に見られる主題的な「夜の音楽」や非調性的ながらも秩序ある構造は、彼の成熟した語法を示しています。1940年、第二次世界大戦の影響を受けてアメリカ合衆国へ亡命し、1945年ニューヨークで死去しました。
民族音楽研究と収集活動
バルトークとコダーイは20世紀初頭にハンガリーやルーマニア、スロバキア、セルビア、モラヴィアなど広範囲でフィールドワークを行い、数千に及ぶ民謡を採譜・録音しました。蓄積された資料は単に民族学的資料としてだけでなく、作曲の素材としても活用されました。彼は民族旋法、リズムパターン、装飾音型などを学び、それらを高度に抽象化して自身の和声語法やリズム構造に取り入れました。
当時はエジソン式の蓄音機や後のディクタフォンを用いて現地での録音を行い、口承の細部を忠実に記録しました。これらの資料は現在、バルトーク研究の基礎資料として各国のアーカイブで保存されています。
作曲スタイルの特徴
バルトークの音楽語法は多層的です。以下に主な特徴を挙げます。
- 民謡由来の旋法とモード:ドリア、フリギア、リディアのような古い教会旋法や地域固有のスケールを活用。
- ポリモーダル・クロマティシズム:複数のモードやスケールを同時に配置することで、伝統的な調性を離れた新しい和音進行を生み出す。
- リズムの非対称性と付加的リズム:ブルガリアやバルカン起源の不規則拍節(例:5/8、7/8など)や、モチーフの反復による増分的構造。
- ナイト・ミュージック(夜想的な音響):遠景の鳥声、鈴の音、半音階的なテクスチャによる静寂と不安の描写が特徴。
- フォルムの厳密さ:対位法や組織化された動機の展開、古典的な形式(ソナタ、変奏)と民俗素材の融合。
主要作品と聴きどころ
バルトークの代表的作品を聴く際のポイントと簡単な解説です。
- 《弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽》(1936)— 繊細な夜の音楽とドラマティックな合奏場面の対比。中央のアダージョは特に「夜の雰囲気」が顕著。
- 《管弦楽のための協奏曲》(1943)— 晩年の傑作で、民俗的素材から抽象化したリズムと色彩が爆発。オーケストレーションの巧みさが際立つ。
- 弦楽四重奏曲(全6曲)— 初期から晩年までの精神的変遷が凝縮。第4〜6番はより現代的で実験的。
- ピアノ曲《ミクロコスモス》— 教育的テクストにもかかわらず高度な作法を含み、作曲技法の教科書としても有用。
- ピアノ協奏曲(全3曲)— 第3番はアメリカ滞在期の作品で、明るい色彩と民俗的リズムの融合が聴きどころ。
ピアノ作品と演奏のポイント
バルトークのピアノ作品は打鍵の明瞭さ、複雑な内声の対位、リズムの正確さを要求します。特に《ミクロコスモス》は教育的価値が高く、演奏技術だけでなく作曲技法の理解にも有用です。ピアノ協奏曲ではオーケストラとのバランス、打鍵のアーティキュレーション、強弱の微妙なコントロールが鍵になります。
弦楽四重奏曲と室内楽
6曲の弦楽四重奏曲は、バルトークの作曲的成長を追ううえで欠かせません。初期はロマン派的な要素が残るものの、中期以降は民俗主義的要素の抽象化、無調的傾向、そしてリズム的実験が顕著になります。アンサンブルの均整と個々のパートの独立性を高める表現が要求されます。
管弦楽作品と代表作の分析
バルトークの管弦楽曲はオーケストレーションの新たな可能性を示しました。《弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽》は、非伝統的な楽器配置とテクスチャの探求が顕著です。《管弦楽のための協奏曲》は構成の巧みさ、主題の対比、フレーズの集積による大規模なドラマを展開します。これらは単なる民族音楽の引用ではなく、素材の高度な変容によって普遍性を得ています。
影響と後世への評価
バルトークは20世紀の作曲家(シェーンベルク、ストラヴィンスキー等)とは異なる道を歩みました。彼の民族主義は狭義の国粋主義ではなく、世界の民謡から普遍的な音楽言語を構築する試みでした。現代作曲家、演奏家、民俗学者に与えた影響は計り知れず、特にリズム感やモードの扱いに関しては後世の多くの音楽家に参照され続けています。
演奏・録音ガイド(推奨盤の探し方)
バルトークの録音は20世紀後半以降充実しています。作品によっては歴史的録音(初演者や直系の演奏家)と、近年の精緻なレコーディング(優れたエンジニアリングと演奏解釈)のどちらも聴く価値があります。弦楽四重奏やピアノ作品は複数の録音を比較して、フレーズ処理やテンポ感の違いを味わうと理解が深まります。
まとめ — バルトークを聴くための心得
バルトークの音楽は一聴で理解できるものばかりではありません。民謡のリズムや旋法、夜の音楽的風景、複雑な対位法を丁寧に聴き分けることで、その深さが分かります。初めは代表作を通してメロディーとリズムを掴み、次に弦楽四重奏やピアノ曲で内声の動きや形式感を追うとよいでしょう。
参考文献
- Encyclopaedia Britannica: Béla Bartók
- IMSLP: Béla Bartók(楽譜コレクション)
- Budapest Music Center(バルトーク関連資料・アーカイブ)
- Oxford Music Online(Grove Music Online)


