インターメッツォとは何か:起源から名曲・聴きどころまで解説

インターメッツォとは — 用語と概念の整理

「インターメッツォ(Intermezzo)」はイタリア語で「間にあるもの」「合間」の意を持ち、音楽においては「ある作品の合間に挟まれる短い曲」「独立した短い器楽曲や歌劇上の小品」を指します。時代や文脈によって意味合いが変化し、バロック期のオペラの合間に置かれた喜劇作品から、19世紀以降に独立したピアノ曲や管弦楽の小曲としての用法まで、広範な音楽実践を包含します。本稿では語源・歴史的変遷・代表例・演奏/鑑賞のポイントをできるだけ正確に整理します。

歴史的な出発点:バロック〜古典派におけるオペラの「間」

18世紀のオペラ上演では、長大な語りやアリア中心の「オペラ・セリア」が主流でした。その合間に挟まれる短い喜劇的な小作品が「インターメッツォ」として発展しました。代表例として、ジャン=バティスト・ペルゴレージ(Giovanni Battista Pergolesi)の『女中台所の主人(La serva padrona)』(1733年)は、もともとペルゴレージのオペラ・セリアの間に上演されたインターメッツォであり、単独で上演されるほどの成功を収めました。この上演は1752年のパリでの上演を契機に「喜劇オペラと正統オペラ」を巡る論争(Querelle des Bouffons)を引き起こし、インターメッツォの歴史的重要性を示しています(参考:Britannica, Wikipedia)。

19世紀:オペラの間奏曲・管弦楽的インターメッツォの台頭

19世紀に入ると、インターメッツォは単に台詞や場面転換のつなぎではなく、情緒的・表現的な独立した音楽として機能するようになりました。特にイタリアのヴェリズモ(写実主義)やロマン派のオペラでは、幕間や場面転換のために書かれたオーケストラ伴奏の短い楽章が「Intermezzo(間奏曲)」として聴衆の印象に残ることが増えました。代表的な例がピエトロ・マスカーニのオペラ『カヴァッレリア・ルスティカーナ(Cavalleria rusticana)』(1890年)にある有名な「Intermezzo」です。これは劇的な場面をつなぐ役割を越え、独立した管弦楽作品として単独で演奏・録音されることが多く、劇の叙情的瞬間を象徴する楽曲として広く知られています(参考:Britannica)。

器楽作品としてのインターメッツォ:ピアノ文学における展開

19世紀後半から20世紀にかけて、インターメッツォはピアノ小品の標題として定着しました。とりわけヨハネス・ブラームス(Johannes Brahms)は晩年のピアノ曲集に多数の「Intermezzo」を含め、この語を固定した作曲家の一人です。ブラームスはOp.117(3つのインターメッツォ)、Op.118、Op.119などの作品で、内省的で詩的な短いピアノ曲に「Intermezzo」の名を与え、夜想的で情感に富んだ小品群を形成しました。これらは形式的には自由でありながら、短調・長調の情緒の交替や内面的な反映という共通性を持ち、ロマン派以降のピアノ・リートの一端を担っています(参考:Brahms作品目録、音楽学術資料)。

機能と形式:インターメッツォの多様な役割

  • 舞台芸術における〈緩衝・転換〉:場面転換やトーンの切替え、観客の緊張を和らげる「緩衝帯」として機能する。
  • 表現的独立体としての〈情緒提示〉:短い器楽曲が独立して情感や主題を提示し、物語の象徴や内面描写を担う。
  • コメディ的介入:バロック期のインターメッツォは喜劇的要素を担当し、社会風刺や日常の描写を通じて主劇の様式を相対化した。
  • 作曲家の実験場:短い形式ゆえに和声や色彩、リズムの実験が行われることが多く、時に後の大作につながる発見が生まれる。

代表的な作例と聴きどころ

  • Pergolesi『La serva padrona』:当初はインターメッツォとして機能した喜劇的短編。音楽史上の受容史や18世紀の様式変化を知るうえでの必聴作。
  • Mascagni『Cavalleria rusticana』のIntermezzo:オペラ上の間奏曲が単体で名曲となった例。豊かな管弦楽の色彩と叙情性が特徴。
  • BrahmsのIntermezzi(Op.117, Op.118, Op.119):ピアノ小品としてのインターメッツォの典型。内省的かつ詩的な語り口が聴衆を惹きつける。

これらを聴く際は、オリジナルの上演コンテクスト(舞台のどの位置に挟まれているか)と、独立曲としての構造の双方に注意すると、作曲家の意図や楽曲の持つ層がより明確になります。

近現代における変容と用法の拡張

20世紀以降、作曲家たちは「インターメッツォ」を従来の機能に縛られない自由なタイトルとして用いるようになりました。短い器楽的挿話、映画や舞台の間奏、さらには室内楽や交響作品の中の一楽章として「Intermezzo」と題されることがあります。形式的には自由であるため、抒情性を重視するものから、対位法的・実験的テクスチュアを探るものまで多様です。

演奏・録音・プログラミング上の注意点

インターメッツォは「短いから扱いやすい」と思われがちですが、その短さゆえに一音一句の表現が作品全体に直結します。演奏する際はテンポ・フレージング・音色の選択に細心の注意を払い、楽曲が本来舞台の一部であったならば当時の劇的文脈を理解して演奏に反映させると深みが増します。コンサート・プログラムでは、オペラ由来のインターメッツォを独立して演奏する際、曲の出所や劇的文脈を簡潔に聴衆に紹介するとより鑑賞が深まります。

まとめ:インターメッツォの多層性

インターメッツォは「合間の音楽」という語義から出発しつつ、時代とともに多様な形態へと拡張しました。バロック期の喜劇的挿話から、19世紀の叙情的間奏曲、そしてピアノ小品としての内面的表現まで、同一の語が多様な音楽実践を包含する点にこそインターメッツォの魅力があります。鑑賞者はその短さの背後にある歴史的文脈と表現の凝縮を読み解くことで、より深い音楽体験を得られるでしょう。

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参考文献