Kali Audio IN-5徹底解説：プロが教える長所・短所とミックスでの使い方
エバープレイ編集部はじめに — IN-5の位置づけ
Kali Audio IN-5（以下IN-5）は、比較的手ごろな価格帯で発売された2ウェイ・パワード・ニアフィールド・スタジオモニターです。Kaliは価格対性能比を重視した製品を多く出しており、INシリーズはその分かりやすい代表例になっています。本稿では、IN-5の設計思想、音の傾向、使いこなし（ルームへの設置、補正、ミックス時の注意点）、ライバル機との比較、購入を検討する際の視点までを掘り下げます。
外観・設計の特徴
IN-5は5インチ級のウーファーと1インチ級のツイーターを組み合わせた2ウェイ構成で、前面にバスレフ（フロントポート）を備えています。前面ポートは壁からの距離に対して扱いやすく、近接設置でも低域のピークが出にくい設計上の利点があります。外装は必要最小限の堅牢さを備え、実践的なニアフィールド用途を念頭に置いたサイズ感です。
ドライバーとアンプ構成
一般的にINシリーズは中小規模のスタジオやホームスタジオを想定した駆動力を持ち、Class‑Dアンプ等の効率の良いアンプを採用することで、熱や重さを抑えつつ十分な音圧を確保しています。ウーファーは5インチ級の口径により、密閉型の小径と比べて低域の伸びが自然に得やすく、ツイーターは近接リスニングでの解像感と定位感に寄与します。
入出力と操作性
多くの同クラス機と同様に、IN-5はバランス入力（XLR/TRS）とアンバランス入力（RCAなど）を備えており、オーディオインターフェースやコンシューマ機器の両方と直結しやすい設計です。背面には音量および高域/低域のトリムやルーム補正用のスイッチが実装されている場合があり、リスニング環境に合わせた微調整が可能です（モデルやロットによる仕様差があるため購入前に公式仕様を確認してください）。
音のキャラクター（概観）
IN-5の音は「相対的にフラットで使いやすい」と評されることが多く、いわゆる“ミニッティング”や過度な低域ブーストに頼らずミックスのバランスを確認できる点が評価されています。低域は5インチクラスとして十分な存在感を持ちながらも過度に膨らまない設計で、中域の明瞭さとツイーターの伸びがミドル〜ハイのディテール確認に向いています。
測定と実測値について
第三者機関やレビューサイトによる測定では、IN-5は近距離リスニング領域で概ねフラットに近い周波数特性を示すという報告が見られます。ただし、測定は音量レベル、マイク位置、ルームの影響などで大きく変わるため、実際の使用では設置環境の影響を無視できません。また、同じモデルでも個体差や生産時期の違いで若干の差が出ることがあります。
ルームとの相互作用と設置のコツ
- スイートスポットを作る：スピーカーとリスナーで形成される正三角形を基本に、ツイーターの高さが耳の高さにくるように設置します。
- 壁からの距離：前面ポートを採用しているため、背面吸音を過剰に気にせず設置できますが、リスニングポイントの低域バランスは壁との距離で変化します。耳での確認と簡易測定（スマホのRTAアプリ等）で確認しましょう。
- ルームトリートメント：低域は部屋の定在波に影響されやすいため、ベーストラップや第一反射点の吸音・拡散で定位と低域の安定を図ることを推奨します。
- アイソレーターの活用：デスク上に直接置く場合は、スタンドやインシュレーターで音のぼやけを抑えると低域の輪郭が改善します。
ミックス時の実践アドバイス
IN-5を使ったミックスでは、以下の点に注意すると良い結果が得られます。
- 低域のモニタリング：5インチ級はサブベース（~30–40Hz）を完全に再現することは難しいため、ベースやキックの超低域の確認はサブウーファーやヘッドフォンでも補完しましょう。
- 中域の確認：ボーカルやギターの存在感はIN-5の得意領域なので、ここでのバランス決定は信頼性が高いです。
- 参照曲の活用：リファレンス曲を用いてIN-5上での聴感と他のリスニング環境（カーステ、スマホ、イヤホン）での差を常時チェックするとミックスの汎用性が上がります。
- レベルメーターと耳の併用：低域の見た目と聴感は一致しないことがあるため、LUFSやピークメーターを併用して客観値を確認しましょう。
IN-5の長所
- コストパフォーマンス：多くのレビューで、同価格帯と比べてモニタリングのベースラインが高いと評価されています。
- 比較的フラットな基礎特性：ミックスやマスタリングにおける基礎的な判断がしやすい。
- 設置のしやすさ：前面ポートやコンパクトなサイズにより、デスクトップでの使用が行いやすい。
IN-5の短所・注意点
- 超低域の再生限界：5インチ級のドライバーでは超低域の再現に限界があるため、極低域の確認にはサブウーファーや他のモニターが必要になることがある。
- 高SPL環境での限界：非常に大音量での長時間使用では、駆動能力の上限に達するケースがある。通常のミックス環境では問題になりにくいが、用途を確認しておくべきです。
- 個体差と設置依存：音質は設置環境に強く影響されるため、同じモデルでも最適なセッティングは個々に異なります。
主なライバル機との比較（概念的に）
同価格帯の代表的なライバルとして、Yamaha HS5、JBL 3シリーズ（例：305P系）、KRK Rokit 5などが挙げられます。概ねの傾向として、Yamahaは非常にドライで中域に特徴があり、JBLはイメージングの良さと低域のバランスが魅力、KRKは低域寄りでリスニング向きという評があります。IN-5はそれらと比べ、コストに対する相対的な解像度とフラット寄りのバランスで差別化を図っている、と評価されることが多いです。
どんなユーザーに向いているか
IN-5は以下のような用途・ユーザーに向いています。
- ホームスタジオでのミックス入門〜中級者。コストを抑えつつ正確な判断がしたい人。
- 小規模なプロジェクトスタジオで、設置スペースが限られている場合。
- フラット寄りのモニターを求めており、参照用に複数の再生環境を組み合わせる予定のユーザー。
購入時のチェックリスト
- 自分の部屋のサイズと設置場所に合うか（前面ポートの利点・欠点を含めて確認）。
- オーディオインターフェースとの接続端子が合っているか。
- 実機を試聴して、好みの音色やスイートスポットでの解像度を確認すること。可能なら持ち込んだ自分のトラックでの確認を推奨します。
- メーカー保証やサポート体制を確認すること（輸入品の場合は国内サポートの有無も重要）。
まとめ — IN-5をどう使うか
Kali Audio IN-5は、価格帯に対して高い実用性と比較的フラットなモニタリング環境を提供するモニターです。5インチ級という物理的限界はあるものの、中高域の確認や定位、バランス感覚の養成には十分なツールとなります。重要なのはモニターそのものだけでなく、設置環境とリファレンスワークを組み合わせることです。IN-5を導入する際は、ルームトリートメント、参照再生環境の構築、および実際の制作ワークフローに組み込んだテストを行うことで、その真価を発揮します。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。
また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
参考文献
投稿者プロフィール
