Nintendo DSi完全ガイド:仕様・機能・歴史と影響を徹底解説
概要:DSiとは何か
Nintendo DSi(ニンテンドー・ディーエスアイ)は、任天堂が2008年に投入した携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」シリーズの一機種で、従来機(初代DS/DS Lite)からの進化を図った改良モデルです。外観は縦開きの二画面構造を踏襲しつつ、カメラの追加、SDカードスロット、内蔵フラッシュメモリ、拡張されたオンラインサービス(DSiショップ、DSiウェア)など、ハード・ソフト両面でデジタル配信時代に対応した設計がなされました。
開発と発売の経緯
任天堂はDSシリーズの中間世代機として、携帯機の利便性を高める目的でDSiを開発しました。日本では2008年11月1日に発売され、欧米向けも2009年4月に発売されました(ヨーロッパ:2009年4月3日、北米:2009年4月5日、オーストラリア:2009年4月2日)。その後、画面サイズを大きくした上位モデル「DSi LL(のちにDSi XL)」も登場し、ラインアップの選択肢を拡充しました。
ハードウェアの特徴(概要)
DSiのハード面での注目点は、従来のDSシリーズにはなかった要素の導入です。主な追加・変更点は以下の通りです。
- 内蔵カメラを上下に2基搭載(外側用カメラと内側用カメラ)。簡易的な写真撮影や加工が可能。
- SDカードスロットを搭載し、写真や音楽、ダウンロードコンテンツの保存・持ち出しが可能に。
- 内蔵フラッシュメモリ(本体保存領域)を備え、DSi専用のダウンロードコンテンツ(DSiウェア)を保存可能。
- 従来シリーズから撤去された機能としては、ゲームボーイアドバンス(GBA)カートリッジスロットがなくなり、GBA用ソフトの直接互換性を失っています。
- 本体CPUやメモリの強化により、従来よりも動作面での余裕があり、DSi専用のソフトやアプリの幅が広がりました。
- マイクやスピーカーの改良、さらに改良されたシステムUI(カメラ・音楽プレイヤー等)を搭載。
ソフトウェア面とサービス
DSiは単なるハード改良にとどまらず、ソフトウェア配信プラットフォーム「DSiショップ(DSi Shop)」と、その配信コンテンツ群である「DSiウェア(DSiWare)」を導入しました。これにより小規模なダウンロード専用ソフトやユーティリティが配信され、任天堂にとって携帯機でのデジタル配信の実験場ともなりました。
また、Operaをベースにしたブラウザソフトが提供され、Wi‑Fiを通じたインターネット閲覧も可能となりました。さらに、内蔵カメラを活用した写真編集・合成アプリや、メモ作成・音楽再生といったライフスタイル寄りの機能も注力されています。
DSiの制約と互換性
重要な点として、DSiは従来のDSカートリッジソフト(DSカード)との互換性を維持している一方で、GBAスロットの廃止によりゲームボーイアドバンス用ソフトはプレイできなくなりました。また、DSi専用の機能(カメラやDSiウェア)は旧型DSでは利用できないため、ソフト資産の一部はハード依存となります。
加えて、DSiウェアの配信は地域ごとに管理され、一部のダウンロードコンテンツは地域ロックがかけられているケースがありました。これは後の携帯機向けデジタル配信モデルや、任天堂eショップにおける地域対応の議論につながっています。
市場での評価と影響
DSiは従来のDSラインの人気を維持しつつ、カジュアルユーザーやライト層に向けた機能を拡充したことで一定の成功を収めました。内蔵カメラやダウンロードコンテンツは、ゲーム以外の利用シーンを広げ、携帯機が遊び以外の用途でも活用される契機になりました。
一方で、GBA互換の消失を嫌う一部のユーザーや、DSi専用タイトルの数が限られていた点は批評の対象となりました。長期的には、DSiでのデジタル配信の経験が3DS以降のeショップ戦略に影響を与え、任天堂のダウンロード販売や小規模開発者支援の土台を築いたと評価できます。
エコシステムとサービス終了
DSi発売後、DSiショップは多数の小規模タイトルやアプリを提供しましたが、ハードの世代交代とともにサービスは縮小しました。任天堂はオンラインサービスの整理を進め、最終的にDSiショップおよびDSiウェアのダウンロードサービスは段階的に終了しました。これにより、当時ダウンロード購入したコンテンツの入手性が変化し、デジタルライブラリ管理の課題が浮き彫りになりました。
デザインとユーザー体験
DSiは携帯性と使いやすさを重視したデザインで、スリム化と画面周りの操作系が洗練されました。内蔵のカメラやソフトウェアによる写真編集機能は、ユーザーが手軽にコンテンツを作り、共有する体験を提供しました。これらの体験は、後の携帯機やスマートデバイスにおける「手軽なコンテンツ制作」の先駆けとも言えます。
コレクター向けの注意点と中古市場
DSiは改良点が多い一方で、ソフト互換性の変化やサービス終了により、単体での価値評価が難しくなっています。コレクターや購入検討者は以下を注意してください。
- 内蔵メモリに保存されたDSiウェアは、購入履歴が消えると再ダウンロードが困難になる場合がある(サービス終了の影響)。
- カメラやSDカードスロットなど、ハード特有の機能は中古で故障しやすい箇所があるため動作確認を推奨。
- DSi LL/XLなど派生モデルが存在するため、画面サイズやバッテリー持続時間の違いを確認すること。
レガシー:DSiの遺産
DSiは任天堂の携帯機事業において、「物理パッケージ以外の配信」と「ハードに組み込まれた新機能」を具体化したモデルでした。これらは3DS以降のeショップや、スマートデバイスを意識したユーザー体験設計に影響を与えています。また、簡易的なカメラやクリエイティブツールを組み合わせたコンテンツ制作文化の萌芽を生み、Flipnoteのようなコミュニティ発のサービスも注目を集めました。
まとめ
Nintendo DSiは、従来のDSシリーズをベースにしつつもデジタル配信やマルチメディア機能を強化した転換点的な存在です。ハードウェア面での改良とソフト・サービス面での実験的な取り組みは、その後の任天堂の携帯機戦略に少なからぬ影響を与えました。現在では当時の配信サービスが終了したり世代が進んだりしていますが、DSiがもたらした考え方や機能群は今日のゲーム/携帯機の潮流を理解するうえで重要な事例です。
参考文献
- Nintendo DSi - Wikipedia(日本語)
- 任天堂 2008年プレスリリース(日本)
- Nintendo サポート:DSiショップに関する案内(サービス終了情報)
- Nintendo DSi - Wikipedia(英語)


