ROLI(Roli)徹底解説:SeaboardとMPEが変えた表現力 — 製品・技術・制作での活用法まで詳述

ROLIとは — 会社の概要と成り立ち

ROLI(ロリ、創業者:ローランド・ラム)は、ロンドンを拠点にした音楽テクノロジー企業で、従来の鍵盤楽器にない「連続的で微細な演奏表現」を実現するインターフェースの開発で知られています。2009年に設立され、シリコン製の柔らかな表面を持つ「Seaboard」やモジュラー式のMIDIコントローラー群「Blocks」、教育向けのライトアップ鍵盤「LUMI」などを通じて、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせたソリューションを提供してきました。

なぜROLIが注目されるのか:表現力の再定義

ROLIの核にあるのは「5次元のタッチ表現(しばしば“5D Touch”と称される)」の発想です。従来のピアノの鍵盤が主に押す(ストライク)という1次元の力学で音の大小を制御するのに対し、Seaboardの表面は次のような複数の動きを感知します。

  • Strike(叩き/速度)
  • Press(垂直圧力:連続アフタートーン)
  • Glide(横方向の滑らかな移動:ピッチ的横ずれ)
  • Slide(縦方向のスライド:音色変化などに割り当て可能)
  • Lift(キーを離す際の速度/挙動)

これにより1つの音に対して個別かつ同時に多様な表情付けが可能になり、管楽器や弦楽器の微妙なニュアンスに近い「一本の線上での表情」を鍵盤演奏に持ち込みました。

技術的な中核:キーワードと標準化への貢献

ROLIは独自のセンシング技術と同時に、MIDIの進化にも影響を与えました。従来のMIDIはチャンネルごとのコントロールが中心でしたが、MIDI Polyphonic Expression(MPE)は「一音ごとの独立した表現」を可能にします。ROLIは初期からMPEを実装し、機器・ソフト双方の互換性促進に寄与したことで、MPE対応の音色やDAWサポートの拡大につながりました。

また、ROLIは自社のソフトウェア音源(Equatorなど)を開発しており、ハードの多次元情報を活かすプリセットとモジュレーション設計を提供しています。これらによりSeaboardの特性を引き出すワークフローが確立されました。

主な製品ラインナップと特徴

ROLIの代表的な製品群とその特徴をまとめます。

  • Seaboard(シリーズ): シリコン製の連続表面を持つ鍵盤。Grand、Rise、Block型の派生があり、サイズやポータビリティ、キーレイアウトで選べます。各キーが独立して圧力や横・縦方向の動きを検出。
  • Blocks(モジュラー): Lightpad Block、Seaboard Block、Live Block、Loop Blockなど。磁石で連結しBluetoothで接続するモジュラー式コントローラで、用途に応じて組み合わせが可能。
  • LUMI(教育向け鍵盤): ライトアップする鍵盤キーと学習アプリを組み合わせた製品で、音楽教育の入り口を意識した設計。
  • ソフトウェア: Equator(ROLIの表現を活かすシンセ)、NOISE(モバイルアプリ)など。ドライバやファームウェア、DAW連携ツールを含むエコシステムも提供。

実際の演奏・制作での活用法

ROLI製品はサウンドデザイン、映画音楽、ポップスや電子音楽のライブ/スタジオで実際に使われています。以下は具体的な活用ポイントです。

  • リード/ソロ演奏: GlideやSlideを使って人間的な装飾音(ポルタメント、ベンド、ビブラート)を直感的に入力可能。
  • 表情豊かなパッド: PressやSlideでサウンドのフィルタやモジュレーションをコントロールし、変化するパッド音を一人で演出。
  • サウンドデザイン: Equatorなどで各次元を割り当てることで、従来のMIDIキーボードでは作れない複雑な表現を設計可能。
  • パフォーマンスセット: Blocksと組み合わせることで、シーケンスやループ操作、エフェクト切替を即座に行えるライブインターフェースが構築できる。

DAWや音源との接続と注意点

SeaboardやBlocksを活用する際は、MPE対応がカギになります。近年主要なDAW(例:Logic、Bitwig、Cubaseなど)でMPEのサポートが進んでいるため、MPE対応プラグインや内蔵音源を使うと各次元の情報を活かせます。MPE非対応の音源でも、ROLIのダッシュボードやマッピング機能を通じて従来のCCやピッチベンドに変換することで利用は可能ですが、表現の自由度は限定されます。

また、Bluetooth接続時はレイテンシ(遅延)の影響を受けることがあるため、本格的なレコーディングやライブではUSB接続や有線のMIDI経由での安定動作を推奨します。ソフトウェア側でのレイテンシ設定、バッファサイズ調整も重要です。

導入時の選び方と実践的なTips

どのモデルを選ぶかは主に用途に依存します。スタジオ中心で精密な表現を求めるなら大きめのSeaboard、ライブや持ち運びを重視するならSeaboard RISEやSeaboard Block+Lightpad Blockの組み合わせが現実的です。教育や初心者向けにはLUMIが適しています。

実践的な運用のコツ:

  • まずは基本ジェスチャー(横スライドでピッチ、縦圧でフィルタ等)を決め、プリセットを作る。
  • DAWのトラックにMPE対応音源を用意し、MPEチャンネルマッピングを確認する。
  • 演奏表現を記録する際はMIDIの分解能(高分解能が望ましい)とレーンごとのデータ量を意識する。
  • ライブでは複数のブロックを事前にマグネットで組み、接続確認とバッテリー残量をチェック。

手入れとメンテナンス

Seaboardの弾力ある表面はシリコーン素材が使われています。日常的には柔らかい布で表面のほこりや汗を拭き取り、強い溶剤やアルコールでの拭き取りは避けることが推奨されます。また、長期間の保存時は直射日光や高温多湿を避け、プラグ類の接点保護にも注意してください。ファームウェアやドライバは定期的に更新して互換性とバグ修正を取り込みましょう。

メリットとデメリット(導入判断のために)

メリット:

  • 従来鍵盤では得られない高い表現力を単一インターフェースで実現できる。
  • MPEの普及により将来的な互換性・表現の幅が拡大している。
  • モジュール式のBlocksなど、用途に応じた柔軟な拡張が可能。

デメリット/留意点:

  • 表現性を引き出すためには専用音源やMPE対応ソフトが必要で、環境整備がややハードルになる。
  • 従来鍵盤とは演奏技術やタッチ感覚が異なるため学習コストがある。
  • Bluetooth接続ではレイテンシや安定性に注意が必要。

業界への影響と今後の展望

ROLIはハードウェアの形を通じて「演奏表現」の概念そのものにインパクトを与えました。MPEのような標準化は、複数メーカーやソフトウェアが多次元表現を取り込む土壌を作ります。今後は、より多くの音源メーカーのMPE対応、ライブパフォーマンス向けの低遅延化、教育分野への普及(例:LUMIのようなプロダクト)といった流れが考えられます。

導入事例と実務的な活用シナリオ

ROLI製品はシネマティックなサウンドデザイン、エレクトロニカのライブ表現、また作曲・編曲における即興的な音色探索などで重宝されています。例えば、映画・ゲーム音楽のオーケストレーションでは、Seaboardの滑らかなポルタメントや圧力表現を使って人間的なフレーズを作り、サンプルベースの音源に新たな命を吹き込むといった使い方があります。

まとめ:ROLIを選ぶ理由と検討ポイント

ROLIは「鍵盤での新しい表現」を求めるプレイヤーやサウンドデザイナーに対して非常に魅力的な選択肢です。ただし、その価値を最大化するにはMPE対応のソフトウェア環境、適切な接続方法、そして演奏上の習熟が必要です。導入前に目的(ライブ、レコーディング、教育など)を明確にし、必要な周辺機材・ソフトの対応状況を確認することをおすすめします。

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参考文献