Olympus(オリンパス)カメラの歴史・技術・選び方 — マイクロフォーサーズを深掘り
はじめに:Olympusとは何か
Olympus(オリンパス)は、光学機器と精密機器で長い歴史を持つ日本のメーカーです。カメラ分野では「PEN」「OM」シリーズなどで知られ、コンパクトながら高性能なシステムで多くの支持を得てきました。近年は映像事業が独立し、カメラ製品は新会社のOM Digital Solutions(ブランド名:OM SYSTEM)として継承されていますが、一般的には今も“オリンパス”と呼ばれることが多いため、本稿でも馴染みのある名称を併記します。
歴史の概略:PEN、OMからマイクロフォーサーズへ
オリンパスは、半世紀以上にわたりカメラ開発を続けてきました。特に半切りフィルム(ハーフサイズ)カメラのPENシリーズや、コンパクトで高性能な一眼レフのOMシリーズは評価が高く、軽量化や操作性に関する多くの工夫が施されました。2008年に提唱されたマイクロフォーサーズ(Micro Four Thirds、MFT)規格は、パナソニックと共同でミラーレス機の新たなフォーマットとして普及し、オリンパスはこれを積極的に推進しました。
近年の転機:映像事業の売却とOMデジタルソリューションズ
2020年、Olympus Corporationはカメラなど映像事業を日本産業パートナーズ(JIP)に売却しました。その後、映像事業はOM Digital Solutions(OMデジタルソリューションズ)として再編され、製品はOM SYSTEMブランド名で展開されています。医療機器など他分野は引き続きOlympus Corporation(オリンパス社本体)が担っています。この変化により、ブランド名や企業体制は変わりましたが、製品の設計思想やM.Zuikoレンズ群などの資産は引き継がれています。
オリンパスの強み:技術と設計の特徴
マイクロフォーサーズのメリット:センサーサイズはAPS-Cやフルサイズより小さい一方、システム全体の小型・軽量化が可能で、携行性に優れます。また、焦点距離の換算で2倍の焦点到達(例:300mm相当)が得られるため、望遠用途に有利です。
5軸手ブレ補正(IBIS):オリンパスはボディ内手ブレ補正技術に早くから注力してきました。小型ボディで高い補正性能を実現することで、手持ちでの低速撮影や望遠域での歩留まりを向上させています。
ハンドヘルド高解像度モード:複数ショットをセンサーシフトで合成し高解像度画像を得る機能は、風景や静物撮影で高い評価を受けています(三脚使用時と手持ちの両方式を提供)。
防塵防滴と耐候性:プロ向けモデルを中心に堅牢なボディ設計を採用し、アウトドアや悪天候での使用にも耐える作りです。
レンズラインナップ(M.Zuiko):小型で高性能なレンズ群が多数揃い、広角から望遠、マクロまでバランス良く揃っています。PROシリーズは高い光学性能と耐候性を備えます。
実写で効く機能:AF、連写、特殊撮影モード
近年のモデルでは位相差検出を含めたハイブリッドAFや、高速連写、被写体認識(動物・鳥など)などを搭載し、野鳥撮影やスポーツ撮影の実用性が向上しています。さらに、天体撮影向けの長時間露光制御や「Live Composite」等の独自機能もあり、表現の幅を広げています。
マイクロフォーサーズの長所と短所
長所:システム全体が小型軽量で携帯性が高い。望遠効果(換算焦点距離)が得やすく、レンズのコスト・重量が比較的抑えられる。動画撮影や手持ち撮影での手ブレ補正が強力。
短所:フルサイズに比べてセンサーが小さいため、同じ画素数ならば高感度耐性やダイナミックレンジでは不利になりがち。ただし画像処理やノイズリダクションの進化で差は縮小しています。
誰に向いているか:ユーザー別のおすすめ用途
旅行・ストリートフォトグラファー:軽量で画質も良く、機動力が求められる場面で優れます。
野鳥・望遠重視の撮影者:換算焦点距離の有利さと手ブレ補正で、比較的コンパクトに長玉を運用できます。
風景・スタジオワーク:高解像度モードや豊富なレンズで高画質を追求できます。
動画制作者:小型ボディに強力なIBISを組み合わせることで手持ち撮影がしやすく、映像制作にも向いています。
購入時のチェックポイント
用途を明確にする:携行性を重視するか、高感度性能を重視するかで選ぶべきモデルやセンサー規格が変わります。
レンズラインナップ:必要な焦点域のM.Zuikoレンズがあるか、代替としてサードパーティ製やマウントアダプターを使うかを確認します。
AF性能と連写:動体撮影をするならAF追従性能や連写速度、バッファの持ちを重視します。
防塵防滴や堅牢性:フィールドで使う場合は防塵防滴性能の有無を確認してください。
将来性とサポート:OM Digital Solutionsへの移行後もファームウェア更新やレンズ供給が継続されているかをチェックしましょう。
実践的な運用アドバイス
小型ボディを活かして軽装で撮影に出かけることで、撮影回数が増え表現力が磨かれます。望遠撮影では三脚や一脚の併用でより安定した描写が期待できます。また、高解像度モードは被写体が動かない静物・風景向けに使用し、手持ち高解像度は周辺光学特性や被写体ブレに注意が必要です。
今後の展望
マイクロフォーサーズは、センサーサイズのハンディキャップをソフトウェアや光学設計で補う方向で進化しています。AIベースのノイズ低減やAF改善、レンズ設計の高度化により、ニッチながら確固たるユーザー層を維持する見込みです。OM Digital Solutionsの下で、ブランドはより専門領域(アウトドア・プロ用途)に特化しつつ、新技術の導入を続けると予想されます。
まとめ
Olympus(オリンパス)のカメラは、小型・軽量でありながら独自の技術(高性能IBIS、高解像度合成、堅牢なボディ、豊富なM.Zuikoレンズ)によって他のシステムと一線を画します。映像事業は組織変更を経ましたが、設計思想や製品ラインは継承されており、旅行、野鳥、風景、動画など多様な用途で魅力がある選択肢です。購入時は用途に応じた機能、レンズやサポート体制を確認することが重要です。


