ウサギファー完全ガイド:特徴・ケア・倫理・代替素材まで
はじめに:ウサギファーとは何か
ウサギファーは、ウサギの皮革(毛皮)を加工して得られる天然のファー素材です。軽く柔らかで保温性に優れるため、ヨーロッパやアジアのファッションで古くから利用されてきました。ウサギ毛には、短毛で密に生えるものから長毛種、さらに紡績用の「アンゴラ(angora)」として扱われる毛まで種類があり、それぞれ特徴や用途が異なります。
ウサギファーの種類と特徴
ペルト(pelt)としてのウサギファー:剥いだ皮をそのまま利用するタイプで、コートや襟、トリムに多く使われます。毛並みの密度や色ムラ、毛長によって価格と用途が変わります。
レックス(Rex)など短毛種:毛が短くしっかり揃うため、触り心地が滑らかで高級感がある。見た目が均一なため、ファッション用途で人気です。
長毛種・フレアタイプ:毛がふんわりして見た目のボリュームが出やすく、小物やアクセントに向きます。
アンゴラ(Angora):アンゴラ兎から得られる柔らかい繊維は「ウール/ファイバー」として紡がれ、ニット製品などに使われます。ファー(ペルト)とは区別されますが、混同されることが多く、動物福祉の観点で問題視される場合があります。
ウサギファーの長所・短所
長所:とにかく軽く、肌触りが良い。保温性が高く、比較的安価に流通しているため、ファー初心者向けの製品が多い点が挙げられます。また加工しやすく、染色や毛並みの整形がしやすいという利点もあります。
短所:耐久性は高級なフォックスやミンクに比べると劣り、摩耗や抜け毛が生じやすいことがあります。水や湿気、摩擦に弱く、適切なケアを怠ると毛並みが荒れやすいです。また、倫理面・動物福祉の問題が常に指摘されており、入手ルートの透明性が重要になります。
採取と加工の流れ(概要)
一般的には、飼育や狩猟により得たウサギの皮をなめし(タンニング)して保存性を高め、裁断や接ぎ、染色を経て製品になります。アンゴラは毛を刈るか(もしくは慎重な手でもぎ取り)繊維として回収し、洗浄・紡績してニット等になります。いずれの場合も、採取方法や飼育環境が品質と倫理評価に直結します。
倫理・動物福祉と業界の動き
アンゴラに関しては、2013年頃に中国の一部での飼育・採取方法が問題視され、欧米のブランドがアンゴラの使用を停止する動きがありました(動物福祉団体の指摘がきっかけ)。ウサギの毛皮(ペルト)についても、動物愛護の観点から批判や消費者の拒否反応があり、ファッション業界では“ファー・フリー(fur-free)”を宣言するブランドが増えています。
法的な規制は国や地域で異なります。毛皮の生産や販売に関する規制や動向は流動的であり、ブランドごとのポリシー(ファー使用の有無、調達証明)を確認することが重要です。
消費者ができるエシカルな選び方
産地・供給チェーンの明示:生産国や生産者の情報、倫理基準(動物福祉に関する第三者認証があるか)を確認する。
アンゴラとペルトの違いを理解する:アンゴラは繊維、ペルトは毛皮。扱い方や倫理問題が異なるため、購入前に用途を明確にする。
中古やヴィンテージを検討する:新たな動物福祉負荷を生み出さない選択肢として有効です。
お手入れと保管のポイント
ウサギファーは繊細な素材なので、長持ちさせるためには適切なケアが必要です。基本はプロのファー専門店でのクリーニング(年に1回程度)を推奨します。自宅での注意点は以下の通りです。
湿気を避ける:濡れた場合は自然乾燥させ、直射日光や高温を避ける。
ブラッシング:専用の柔らかいブラシで毛流れに沿って軽く整える(強い力は避ける)。
保管:通気性のある布製カバーを使い、圧迫や高温多湿を避ける。防虫対策も必要。
汚れ:部分的な汚れは専門家に相談。自己流の強い洗剤や乾燥機は毛を傷めるので避ける。
本物かフェイクかを見分ける方法
毛の根元を見る:本物は毛根(皮に近い方)が存在し、毛の太さに微妙な変化がある。合成繊維は断面が均一で光沢が人工的な場合が多い。
燃焼テストは危険かつ推奨されませんが、一般的には合成繊維は溶けるような臭いがするのに対し、天然は焼けた髪のような臭いになります。店頭で試すのは避け、専門家に確認する方が安全です。
ラベルと産地表示:信頼できる販売元で適切な表示があるか確認する。
代替素材と今後の動向
動物福祉や環境意識の高まりに伴い、フェイクファー(リサイクルポリエステル等)やバイオ由来の新素材、植物由来の代替素材が進化しています。見た目や手触りは年々向上しており、軽量性・保温性の点で天然ファーに匹敵する製品も増えています。加えて、多くのブランドがファー・フリー政策を採用しており、消費者選択の幅が広がっています。
まとめ:ウサギファーを選ぶ際のチェックリスト
用途(コート、トリム、ニットなど)に合った種類かを確認する。
採取方法や供給チェーンの透明性を重視する。
ケア方法と保管環境を事前に把握し、メンテナンス費用も考慮する。
代替素材(高品質フェイクやリサイクル素材)との比較検討を行う。
参考文献
- Fur - Wikipedia
- Angora rabbit - Wikipedia
- PETA - Angora Wool
- The Guardian - Fashion houses ban angora after cruelty footage (2013)
- Humane Society International - Fur
- Fur Free Retailer


