EYコンサルティングとは?サービス内容・強み・課題を徹底解説(戦略・DX・人事・リスク対応)
EYコンサルティングの概要
EY(Ernst & Young)は、世界的な会計・プロフェッショナルサービスのネットワークであり、Deloitte、PwC、KPMGと並ぶ「Big Four(四大監査法人)」の一角を占めます。EYのコンサルティング部門(一般に「EYコンサルティング」またはEYのコンサルティングサービスと呼ばれる)は、戦略立案、業務改革、デジタルトランスフォーメーション(DX)、人事・組織改革、リスク管理・コンプライアンス、トランザクション支援(M&Aアドバイザリー)など、企業の経営課題に対する幅広い支援を提供しています。EYのネットワークは各国の独立したメンバーファームで構成されており、グローバルなリソースを地域に展開する形でサービスを提供しているのが特徴です。
歴史と組織構造
EYは1989年のErnst & WhinneyとArthur Youngの合併によって現在の形になりました。本体はロンドンに本拠を置くグローバルネットワークで、各国で独立したメンバーファームが法律・税務・会計・コンサルティングなどのサービスを提供します。戦略コンサルティング部門としては、2014年に買収したThe Parthenon Groupを核にしたEY-Parthenonがあり、M&A・競争戦略等を担う一方、テクノロジーやリスク対応に特化したチームも世界的に展開しています。
主なサービス領域
- 戦略・成長戦略(Strategy): 市場参入、企業戦略、事業ポートフォリオ見直しなど。EY-Parthenonが戦略案件の中核を担う。
- トランザクション(Transactions): M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス、ポストマージャーインテグレーション(PMI)支援。
- デジタル・テクノロジー: クラウド導入、データ分析、AI活用、サイバーセキュリティ、SAP/Oracle等のERP導入支援。
- リスク・ガバナンス: 内部統制、コンプライアンス、サステナビリティ(ESG)報告支援や規制対応。
- 人事・組織(People Advisory): 人材戦略、報酬設計、組織変革、HRテクノロジー導入。
- 業務プロセス改善: オペレーショナルエクセレンス、コスト最適化、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)等の自動化。
EYコンサルティングの強み
- 総合力とワンストップ提供: 会計・税務・監査の知見とコンサルティングを組み合わせ、財務・税務面の影響を踏まえた実行可能な提言が可能。
- グローバルなネットワーク: 多国籍案件やクロスボーダーM&Aにおいて、各国の専門家を連携させる体制が整っている。
- 戦略と実行の連携: EY-Parthenonなどの戦略領域と、テクノロジー実装や運用支援を結びつけることで、戦略を実行に落とし込む力がある。
- 業界専門性: 金融、ヘルスケア、エネルギー、消費財など主要業界に特化したチームが多数存在する。
- イノベーション拠点: "wavespace"などのイノベーションラボや共同ワークスペースを通じて、クライアントと共創する取り組みを行っている。
プロジェクトの典型例(形態と効果)
EYが関与するプロジェクトは、戦略立案から実行支援まで一貫したケースが多く、以下のような形で提供されます。
- 上流の成長戦略立案 → 事業ポートフォリオの見直し → M&A実行支援 → PMIによる統合効果実現
- 業務プロセスのデジタル化(例: RPA・AI導入)→ コスト削減と業務品質向上
- サイバーセキュリティ強化とコンプライアンス体制の整備 → 事業継続性・信頼性の向上
デジタルとAIへの投資
EYは近年、デジタル、クラウド、AI領域への投資を強めています。データ分析基盤やクラウド移行、AIを用いた意思決定支援ツールの導入支援などが中心で、単なる技術導入だけでなくガバナンスや倫理面(AIガバナンス)を組み合わせた提案を行うのが特徴です。また、各業界のデータ資産を活用したインサイト提供や、オペレーションの自動化による効率化支援も行っています。
ガバナンス、倫理、監査との関係
EYは会計・監査業務を持つ組織でもあるため、コンサルティング業務と監査業務の関係は常に注視されています。監査とコンサルティングを巡る独立性や利益相反の問題は業界全体のテーマであり、EYも各国の規制や社内ルールに沿って対応しています。過去には監査業務に関する批判や法的問題が生じた事例(例えばWirecardに関する問題など)があり、これらは業界全体の信頼性やガバナンス強化の議論を促しました。クライアントに対する助言と監査の公平性を保つための組織分離や情報アクセス管理、透明性の向上が求められています。
人材・キャリアの特徴
EYコンサルティングは多様なバックグラウンドを持つ人材を採用しており、コンサルタント、業界専門家、データサイエンティスト、クラウドエンジニア、リスク管理の専門家などが協働します。プロジェクトベースの働き方が中心であり、短期集中型の案件や長期的な変革プロジェクトまで幅があります。研修制度や資格支援、グローバルなジョブローテーション機会が豊富な点も特徴です。一方、業界の特性として労働時間が不規則になりがちであり、ワークライフバランス改善に向けた施策が各国で検討されています。
EYコンサルティングが直面する課題と今後の展望
EYを含む大手プロフェッショナルサービスファームは、以下のような課題と機会に直面しています。
- 規制・ガバナンス強化への対応: 監査とコンサルティングの関係性に関する規制強化や透明性向上の要求に対応する必要がある。
- 人材確保とスキルシフト: デジタル、AI、サイバーセキュリティ分野の高度人材の獲得・育成が競争力の鍵。
- 差別化のための専門性強化: 汎用的なコンサルティングにとどまらず、業界特化の深いドメイン知識や独自ツール・データ資産の構築が重要。
- テクノロジーの迅速な進化への追随: AIや自動化技術の導入により、既存のサービスの形も変容するため、サービスモデルの革新が必要。
これらを踏まえ、EYはグローバルな資源を活用してクライアントの複雑な課題に対処する一方、ガバナンスや倫理面の強化、専門人材への投資を継続していくことが予想されます。
企業がEYコンサルティングを選ぶ際のポイント
EYを選ぶ際には、以下の点を確認すると良いでしょう。
- 自社課題に対する業界での実績と事例
- 戦略立案から実行までの一貫支援が可能か(内部資源との連携可否)
- デジタル・技術領域での具体的なソリューション(クラウド、AI等)の提供力
- ガバナンスや利益相反に関する管理体制の透明性
- コストと期待される効果(ROI)の見積りが現実的か
まとめ
EYコンサルティングは、会計・監査の土台を持つ総合的なプロフェッショナルファームとして、戦略から実行、テクノロジー導入、リスク管理まで幅広いサービスを提供します。グローバルネットワークと業界専門性を強みに、複雑なクロスボーダー案件やデジタル変革を支援する力は大きい一方で、監査業務との関係やガバナンス強化、人材確保などの課題も存在します。企業がパートナーを選ぶ際には、実績、提供範囲、透明性、技術力を総合的に評価することが重要です。
参考文献
- EY(公式サイト)
- EY-Parthenon(公式ページ)
- Ernst & Young - Wikipedia(英語)
- Wirecard scandal - Wikipedia(監査問題の概要)
- Big Four accounting firms - Wikipedia(業界概観)


