音楽機器での「IP68」徹底解説:防水規格の意味とサウンドへの影響、扱い方まで
IP68とは何か:規格の基礎と意味
IP(Ingress Protection)コードは、IEC 60529 に基づく防じん・防水の保護等級を示す国際規格です。IPの後に続く2桁の数字は、それぞれ固形物(粉じんなど)に対する保護等級と液体(水など)に対する保護等級を表します。IP68 は、第一桁「6」が示す「完全な防じん」(粉じんの侵入を完全に防ぐ)と、第二桁「8」が示す「継続的な浸漬に対する保護」を意味します。
IP68 の「8」は具体的に何を示すか
IPx8 は“継続的な浸漬”を想定していますが、ここで重要なのは「条件(深度・時間)は製造者が定める」という点です。すなわち、IP68 と明記していても、製品ごとに試験で用いた水深(例:1.5m、2m、3mなど)や浸漬時間(例:30分、60分、さらに長時間)が異なります。一般消費者向け製品では、スマートフォンで「最大2メートルで最大30分」などの表記がよく見られますが、これはメーカーが公表した試験条件に基づくものです。
IP67 と IP68 の違い
よく比較される IP67 は「最大水深1mで最大30分の浸漬に耐える」ことが多いのに対し、IP68 はそれを上回る深度・時間の浸漬に耐える性能を示します。しかし、IP68 が常に IP67 より「強い」わけではなく、メーカーが指定する条件次第です。例えば、ある製品は IP68(1.5mで30分)で、別の製品は IP67(1mで30分)でも実使用での耐久性は製品設計に依存します。
音楽機器(イヤホン、ヘッドホン、ポータブルスピーカー)におけるIP68の実際
音楽機器に防水等級が付与されている場合、それは「屋外利用」「運動中の汗」「アウトドアでの小雨」などの条件での安心感を高めます。特に完全ワイヤレスイヤホンやポータブルスピーカーでは防水性能が重要視され、海やプールでの利用を想定した製品も存在します。
- イヤホン/ヘッドホン:IP68 相当の密閉性や水の侵入防止は充電接点や内部基板の保護に寄与します。ただし充電ケースの方は別評価であることが多く、イヤホン本体が防水でもケースは非防水という組合せも多い点に注意が必要です。
- ポータブルスピーカー:スピーカーの開口部(音を出すためのポート)やパッシブラジエータ部の防水設計が音質と耐水性のバランスを決めます。IP68 を謳うスピーカーは少ないですが、防水等級が高い機種は基本設計で音導と防水を両立させています。
防水設計がサウンドに与える影響
防水のための設計は音質に影響を与えることがあります。主な要素は以下の通りです。
- 音孔やバスレフポートの制限:外部に開いたポートを小さくしたり封印することで低音の鳴りや空気の動きが変わり、レスポンスや低域の量感に違いが出ることがある。
- 防水メンブレンやコーティング:Gore の ePTFE のような微多孔膜や疎水性コーティング(撥水処理)は水は通さず音は透過させる設計が可能だが、周波数特性に微妙な変化を与えることがある。高域の減衰や位相の変化が感じられる場合がある。
- 筐体設計と共振:密閉度が高いと内部空気のダンピングが変わり、ユニットの振る舞い(共振ピークやQ)が変わることがある。
実用上の注意点:IP68製品の落とし穴
IP68 は万能ではありません。以下の点に注意してください。
- 塩水やプールの化学物質:IP 試験は淡水で行われるため、塩水や塩素を含む水は腐食やシール劣化を促進します。海で使用したあとは真水でよく洗い、乾燥させることが推奨されます。
- 温度や圧力の影響:高温・低温時や水深により圧力が増すとシールが変形し、本来の防水性能が落ちる可能性があります。またシャワーの高圧水流は別規格(IPx5/IPx6)に該当するため、注意が必要です。
- 経年劣化とメンテナンス:シリコンシールや接合部は経年で劣化します。長期間使うと防水性能が低下するため、メーカーのメンテナンスや交換部品情報を確認することが大切です。
- 落下や衝撃:物理的ダメージによってシールが損傷すると防水性が失われます。衝撃に弱い内部構造の製品もあるため、落下には注意してください。
ミュージシャン・リスナー向けの具体的な運用アドバイス
音楽用途で IP68 製品を安全に使うための実践的なアドバイスです。
- ケースの扱いチェック:イヤホンの場合、充電ケースの防水等級を必ず確認。ケース非防水だと充電中に故障するリスクがあります。
- 海・プール後の処理:海水やプールはすぐに真水で洗い流し、布で拭き取り、自然乾燥させる。充電端子や下部のゴム栓なども忘れずに。
- 長時間の浸漬は避ける:メーカーの試験条件に合致しない長時間浸漬や高圧流水下での使用は推奨されません。メーカー保証の対象外となることが多いです。
- アップデートとサポート:ソフトウェアやファームウェアで水検知機能や充電制御が実装されることがあります。異常を感じたらアップデート情報やサポート情報を確認してください。
保証とメーカー表記の読み方
製品の保証規定をよく読み、IP68 があるからといって全ての水没事故が保証されるわけではないことを理解してください。多くのメーカーは「適切な使用条件下での故障のみ」を保証対象とし、誤用や経年劣化、改造による故障は保証外としています。宣伝文句(マーケティング表記)と実際の試験条件は異なる場合があるため、公式マニュアルやサポートページの細部まで確認することが重要です。
防水技術の例:実装手法と材料
音響機器で用いられる防水技術にはいくつかの代表的な手法があります。
- メンブレン(透音膜):微細な孔を持ち、水は通さず空気と音は透すように設計された材料(ePTFEなど)。外部水の侵入を防ぎつつ音の透過を確保する。
- 疎水コーティング:内部基板にナノコーティングを施し、水滴が電子部品に到達するのを防ぐ。
- シール・ガスケット:接合部に高精度シールを使い、外部環境の遮断を行う。ゴムプラグやOリングなど。
- 密閉筐体と音響チューニング:防水により密閉度が高まるため、内部容積やダンピングを調整して音響チューニングを行う。
まとめ:音楽体験とIP68のバランス
IP68 は強力な防塵・防水性能を示す指標であり、屋外や運動中の音楽利用に安心感を与えます。しかし実際の使い勝手や音質は設計次第で変わります。表記の細部(試験深度、時間、適用環境)を確認し、塩水・高温・高圧水流など特定の条件下での使用は慎重に行ってください。最終的にはメーカーの仕様とユーザーの使い方を照らし合わせ、製品ごとの注意点に従って運用することが安全で快適な音楽ライフにつながります。
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参考文献
- IEC 60529 (International Protection Marking / IP Code) - ISO/IECに関する案内
- IP Code - Wikipedia
- Apple サポート:iPhone の耐水性能について(例)
- Samsung: What is IP Rating?
- W. L. Gore & Associates: ePTFE Membranes(透音膜技術)
- Rtings: How waterproofing affects headphone sound(防水が音に与える影響の解説)
- Jabra Support: How to clean your earbuds(海水・汚れ対策の実務ガイド)
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