Four Roses（フォアローゼズ）徹底解説：歴史・製法・味わい・代表作と楽しみ方
エバープレイ編集部はじめに — Four Rosesとは何か
Four Roses（フォアローゼズ）は、アメリカ・ケンタッキー州を代表するバーボン・ウイスキーのブランドです。創業は19世紀末（1888年に創業者ポール・ジョーンズ・ジュニアがブランドを立ち上げたとされる）で、以来「やわらかでフルーティーなスタイル」を特徴とするバーボンとして世界的に知られています。近年は日本のキリンホールディングス（Kirin）がオーナーであることでも注目を集め、国内外での流通や評判が高まっています。
歴史の概略とブランド名の由来
Four Rosesは1888年の創業以来、長い歴史を持ちます。ブランド名の由来には諸説ありますが、もっとも知られるのは創業者ポール・ジョーンズ・ジュニアがスペイン滞在時に女性から四輪のバラを贈られたことにちなんで命名したというエピソードです。20世紀を通じてブランドは成長し、禁酒法（Prohibition）時代や所有者の変遷を経ながらも存続しました。
戦後は大手企業に買収されるなどの変遷がありましたが、2002年にキリンが同ブランドを取得し、以降は品質に一層の投資を行いながら世界市場での展開を強化しています。ケンタッキー州ローレンスバーグ（Lawrenceburg）にある現代的な蒸留所は、観光拠点としての役割も果たしています。
製法の特徴：10のレシピという独自性
Four Rosesの最大の特徴は「2つのマッシュビル（穀物組成）と5つの独自酵母株（イースト）の組み合わせ」によって、合計10通りのレシピ（レシピはブランド公表のアルファベット表記で識別されます）を作り分けていることです。この設計により、同じ蒸留所で多彩な味わいの原酒を生み出し、最終製品（ブレンド、シングルバレル等）に応じた個性を引き出します。
概念的には、マッシュビルの違い（一般にライ麦比率が高いものはスパイシー、ライ麦比率が低い・コーン寄りは甘みが出やすい）と酵母ごとの発酵特性（フルーティー、フローラル、スパイシーなど）を組み合わせることで、複雑かつ整ったフレーバープロファイルを実現しています。これにより、Four Rosesは“単一蒸留所ながら多様性を持つ”という希少な立ち位置を確立しています。
代表的なラインナップと概要
- Yellow Label（通常流通品、ボトルは黄色いラベルで親しまれる）：複数のレシピをブレンドしたスタンダードな表現で、日常的に楽しみやすいバランスを持ちます。
- Small Batch：ブランドが選んだ数種類（公式には“複数のレシピ”）をブレンドした中堅グレード。豊かな香りとややしっかりしたコクを兼ね備えます。
- Single Barrel：単一の樽から瓶詰めされる商品で、樽による個性が強く出ます。ボトリングの度に異なる味わいを楽しめるのが魅力です。
- 限定リリース／アニバーサリー品：熟成年数の明示された限定版や特別なカスク・セレクションが随時リリースされ、コレクターや愛好家の注目を集めます。
味わいの特徴とテイスティングノート
Four Rosesは一般的に「フルーティーで丸みのある」スタイルで知られます。ただし、上述の10レシピの組み合わせによりアイテムごとの違いは明確です。
- Yellow Label：バニラ、トーストしたオーク、軽いシトラスやりんご系のフルーツ香、やさしい甘みが特徴。カクテルのベースとしても使いやすい。
- Small Batch：バニラやキャラメル、ドライフルーツ、わずかにスパイスを感じさせる中域の厚み。ストレートやロックでの飲みごたえがある。
- Single Barrel：選ばれた樽の個性で幅広い表情。フルーツ感が強めのもの、スパイシーで複雑なもの、こってりしたバニラ感のものなどさまざま。
熟成・貯蔵とその影響
Four Rosesの熟成はケンタッキーの気候条件（四季の寒暖差）や樽の特性によって進行します。樽のサイズや焼き（チャー）レベル、倉庫の立地（温度差や湿度）により、同じ原酒でも熟成の進み方は異なります。シングルバレルではその違いがダイレクトにボトルの味わいへ反映されるため、毎年同名表記でも表現は変わる点に注目です。
カクテルや飲み方の提案
Four Rosesはバーボンとしての汎用性が高く、ストレートやロックでの味わい深さはもちろん、カクテルのベースとしても優れています。以下はおすすめの楽しみ方です。
- ストレート／ロック：Single Barrelや熟成年のある限定品でじっくり香りと余韻を楽しむ。
- ハイボール：Yellow LabelやSmall Batchはソーダとの相性が良く、食事と合わせやすい軽快さが出る。
- クラシックカクテル：オールドファッションドやマンハッタンに使うと、バーボンの甘みと香りがカクテルを豊かにする。
コレクションと市場動向
近年のバーボン人気の高まりにより、Four Rosesの限定品や長期熟成品はコレクターの注目を集め、価格が上昇する傾向にあります。特にシングルバレルやアニバーサリーリリースは入手困難になることもあります。ただし、レギュラーラインは比較的入手しやすく、品質と価格のバランスが良いことから幅広い層に支持されています。
蒸留所見学とツーリズム
Four Rosesの蒸留所はケンタッキー州ローレンスバーグに位置し、ブランドは蒸留所ツアーやテイスティング、ギフトショップなどを通じて訪問者にブランド体験を提供しています。訪問時には生産工程や樽の熟成状況、また10レシピの話を聞くことで理解が深まります。事前の予約や開館状況の確認をおすすめします。
まとめ：Four Rosesの位置づけと魅力
Four Rosesは長い歴史と独自の製法（2つのマッシュビル×5つの酵母＝10レシピ）による多彩な表現力を持つブランドです。日常使いしやすいスタンダードラインから、樽ごとの個性を楽しめるシングルバレル、限定リリースまで、幅広い楽しみ方が可能です。フルーティーでバランスの良いスタイルは、初めてバーボンを試す人にも、コレクターや通好みの飲み手にも魅力を与えてくれます。
参考文献
投稿者プロフィール
