粗骨材の全解説:種類・性質・試験・設計への影響と再生資材活用の最前線

はじめに — 粗骨材とは何か

粗骨材(そこつざい、coarse aggregate)は、コンクリートやアスファルト混合物などの土木・建築材料で使用される粒径の大きい骨材を指します。一般的には4.75mm(#4; ふるいの網目)以上の粒子を粗骨材と定義することが多く、最大寸法(名目最大粒径)は10mm、13mm、20mm、40mmなど用途に応じて選定されます。粗骨材はコンクリートの体積の半分以上を占め、強度、耐久性、ワーカビリティ、経済性に大きな影響を与えるため、材料選定と品質管理が重要です。

粗骨材の種類

  • 天然砂利(natural gravel): 河川堆積物や礫層から採取され、丸みを帯びた形状と滑らかな表面を持つ。ワーカビリティは良好だが、付着性は低め。

  • 砕石(crushed stone): 採石場で岩石を破砕して得られる。角張った形状と粗い表面を持ち、コンクリートの付着性・内部結合に優れる。

  • 軽量骨材(lightweight aggregate): 焼成軽量骨材(膨張シェール、軽量コンクリート用など)や膨張スラグ等。構造物の軽量化や断熱性向上に用いる。

  • 高炉スラグ、火山灰、鉱滓などの工業副産物: 適切な処理・試験により一部の用途で利用される。

  • 再生骨材(RCA: Recycled Concrete Aggregate): 解体コンクリートを破砕して得られる再生資材。持続可能性の観点から注目されているが、品質は原料混合物や処理方法に依存する。

主要な物理的・化学的性質

粗骨材の性能は多くの指標で評価されます。代表的なものを下に示します。

  • 粒度(gradation)・最大寸法(nominal maximum size): 粒度は配合設計上極めて重要。均一すぎるとセグリゲーションの原因、幅広い粒度は良好な充填と安定性をもたらす。名目最大粒径は配合や構造のスケールに合わせて選ぶ(一般に大きいほど単位モルタル量は減るが、ワーカビリティや仕上げ性に影響)。

  • 形状(角形・丸形)・表面テクスチャ: 角形・粗面はセメントペーストとの付着性が高く、強度・耐久性向上に寄与する。丸形はワーカビリティがよいが、付着が弱い。

  • 比重(specific gravity)・吸水率(water absorption): 比重は単位体積あたりの重量に影響し、設計上の質量計算に必要。吸水率は混練時の有効水分量を左右し、配合で補正する必要がある。通常の天然岩石系粗骨材の比重は約2.6~2.8、吸水率は0.2~3%程度が多い(岩種による)。

  • 強度・摩耗性(例えばLA値: Los Angeles abrasion): アスファルト路盤や高耐久コンクリートでは摩耗性が重要。一般にLA値が小さいほど耐摩耗性が高い。普通コンクリート用では仕様により許容値が定められる。

  • 化学性(塩化物、硫酸塩、アルカリ反応性): 塩化物や硫酸塩の含有は腐食や劣化の原因となる。アルカリ骨材反応(ASR: alkali-aggregate reaction)を起こす骨材は特別な対策(低アルカリセメント、シリカフューム、抑制剤)を必要とする。

代表的な試験方法と品質管理

現場受入・設計のための代表的試験を挙げます(規格に準拠)。

  • ふるい分け試験(sieve analysis): 粒度分布を求め、トレンドラインや範囲が仕様内か確認する。

  • 比重・吸水率試験: 乾燥・飽和不飽和状態での容積と重量から求める。配合設計での有効水量補正に必要。

  • LA摩耗試験: 粒子の摩耗・破砕に対する抵抗力を評価する。

  • フラッキネス・エロンゲーションインデックス: 形状特性(板状・細長)を評価し、過度な薄片骨材は仕上がりや強度低下の原因となる。

  • 化学試験(塩化物、硫酸塩、硅酸反応性): 腐食リスクやASRの可能性を検討する。

  • 含泥量・有機物検査: 粘性土や有機物は付着不良や硬化不良を起こす。

これらは各国の規格(例えばASTMやEN、国内のJIS等)に基づく手順で行われます。受入時には適切なサンプリング、頻度、記録管理が不可欠です。

コンクリート設計・施工への影響

粗骨材はコンクリートの多くの特性に直接関与します。

  • 強度: 骨材の強度・形状はコンクリートの圧縮強度に影響する。粗骨材が非常に弱いと、骨材破壊が先行し強度低下を招く。

  • ワーカビリティとセグリゲーション: 丸い粒子や適切な粒度分布は流動性を高めるが、粗粒径が大きいと均一な締め固めや仕上げが難しくなる。高スランプの必要な箇所では細粒の増量や混和剤の使用を検討する。

  • 配合経済性: 粗骨材の最大粒径を上げると、単位セメント量を減らすことが可能で経済的。ただし寸法や耐久性の制約に注意。

  • 乾燥収縮・クリープ: 骨材の剛性が高いほど収縮やクリープが抑制される傾向にある。軽量骨材は収縮特性が異なる。

  • 耐久性(凍結融解、摩耗、化学的劣化): 骨材の耐久性が直接影響する。河川や海岸近くの構造物では塩化物含有や耐凍害性を十分に評価する。

施工現場での取り扱いと管理

良好な品質の維持には現場での管理が重要です。

  • ストックパイル管理: 異物混入や分離を防ぐため、サイズ別に保管し、風雨による洗浄や凍結に配慮する。ストックパイルの下層と上層で品質が異なることがあるため、層取り(windrow methodなど)で均一に取り出す。

  • 含水率管理: 骨材は吸水により有効水量を変えるため、バッチミキサーでの添加水は骨材含水率に応じて補正する。

  • 運搬・投入時の注意: 大きすぎる骨材はポンプやポンプサイジング、他の設備の詰まりの原因となる。アスファルト用では最大粒径と形状が施工性に大きく影響。

再生骨材と環境配慮

持続可能性の観点から再生骨材(RCA)や副産物骨材の利用が進んでいます。利点としては廃棄減少、天然資源の節約、輸送エネルギー低下などが挙げられますが、課題もあります。

  • 品質のばらつき: 旧コンクリート由来の含有物や吸水率の高さ、浮遊塩化物の残存などが問題となる。

  • 前処理の重要性: 付着モルタルの除去、ふるい分け、洗浄、場合によっては選別・再破砕といった処理により品質を改善する。

  • 設計上の配慮: 再生骨材を使う場合は吸水率補正、強度目標の見直し、耐久性設計など追加の検討が必要。

よくあるトラブルと対策

  • アルカリ骨材反応(ASR): 反応性骨材が存在する場合は、低アルカリセメント、シリカフューム混入、適切な骨材選定で抑制する。

  • 塩害による鉄筋腐食: 海岸近接や凍結防止剤使用箇所では塩化物含有量を管理し、必要に応じて防錆策を講じる。

  • 凍結融解劣化: 氷融解サイクルに対する耐性が弱い骨材は使用を避けるか、空気連行や適切な配合を行う。

  • セグリゲーション・ハニカム: 粒度や混和剤の見直し、適切な締固めと打設手順で防止する。

規格と仕様のポイント(国内外の基準)

粗骨材については各国で標準化が行われています。代表的な規格としてはASTM(米国)やEN(欧州)、国内ではJIS(日本産業規格)等があります。仕様書では主に以下を明記します。

  • 名目最大粒径・粒度範囲

  • 比重・吸水率の許容範囲

  • LA値などの摩耗性値

  • 有害物質(塩化物、硫酸塩、含泥分、有機物など)の上限

  • 形状指標(フラッキネス等)

設計者・発注者は用途(構造物・舗装・基礎・排水材)に応じて適切な規格値を指定し、受入検査体制を定めることが重要です。

実務的なチェックリスト(発注・現場で即使える)

  • 用途に適した名目最大粒径になっているか

  • 最新の試験結果(粒度、LA値、吸水率、含泥量、塩化物)が仕様内か

  • ストックパイルが適切に管理されているか(層取り・カバー・排水)

  • 再生骨材を使う場合、前処理とトレーサビリティが確保されているか

  • 配合設計で骨材含水率を考慮して補正されているか

まとめ

粗骨材はコンクリート・舗装・土木構造物において不可欠な要素であり、その種類・形状・粒度・物性は強度、耐久性、施工性に直結します。規格に基づいた試験・品質管理、現場での含水率やストック管理、再生資材利用時の前処理と設計の見直しが重要です。持続可能性の観点から再生骨材の活用は今後さらに拡大しますが、品質の均一化と適切な仕様設定が普及の鍵となります。

参考文献