W&W徹底解説:トランスとビッグルームを繋ぐオランダ・デュオの軌跡とサウンド分析

W&Wとは

W&Wはオランダ出身のDJ/プロデューサー・デュオで、メンバーはWard van der HarstとWillem van Hanegem Jr.(通称Willem)です。エレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)シーンにおいて、トランスの要素を残しつつビッグルーム/プログレッシブ系の楽曲を得意とすることで知られ、クラブから大型フェスまで幅広いステージで高い支持を得てきました。彼らは「NWYR」という別名義を用いてトランス寄りの作品を発表するなど、ジャンル横断的な活動を行っています。

結成とキャリアの軌跡

W&Wは2000年代半ばから活動を始め、シーンの潮流に合わせてそのサウンドを発展させてきました。初期はトランス寄りのプロダクションで注目を集め、その後EDM/ビッグルームの黄金期に入り、よりダンスフロア向けのアグレッシブで明快なリードサウンドを取り入れて大衆的なブレイクを果たしました。フェスティバル出演や大手レーベルとのリリースにより国際的な知名度を確立し、以降は世界中の主要フェス(Tomorrowland、Ultra Music Festival、EDCなど)に常連として出演しています。

代表曲とディスコグラフィのハイライト

W&Wのカタログには、クラブアンセムとして機能するトラックと、トランス的な叙情性を持つ作品が混在しています。特にビッグルーム期のインパクトのあるシングルはフェスのオープニングやピークタイムでプレイされることが多く、彼らのブランドを象徴するサウンドとなりました。また、リミックスワークや他アーティストとのコラボレーションを通じてシーン内での影響力を拡大しています。

音楽性とサウンドの特徴

W&Wのサウンドは大きく二つの側面を持っています。一つは高密度でエネルギッシュなビッグルーム寄りのトラック群、もう一つはメロディックで感情を喚起するトランス寄りの作品です。共通する要素としては次の点が挙げられます。

  • リードシンセのレイヤリング:太いリードとハーモニックなパッドを重ねることで広がりと厚みを出す。
  • ダイナミックなビルドアップとドロップ:フェス向けの盛り上げ方を熟知しており、テンポ感とエネルギーの緩急を明確にする。
  • サイドチェインやリズム処理:キックとベースの分離をはっきりさせ、パンチのある低域を保つ。
  • トランス的なコード進行とアンセム性:メロディを前面に出すパートを配置して、広い会場でも共感を呼ぶ設計を行う。

ライブパフォーマンスと演出

彼らのDJセットはプレイリストをなぞるだけでなく、フェスやクラブの空気を瞬時に読み取りつつ構成を変える柔軟さが特徴です。大規模なステージでは映像、照明、ピロテクニクスといった視覚演出と楽曲のピークを合わせる演出が多く、オーディエンスの盛り上げ方に長けています。また、楽曲のリミックスやブートレグを交えることで即興性を持たせ、現場ごとに異なる体験を提供しています。

NWYR(ニューイヤー)という別軸

W&Wは自身のトランス寄り作品を区別するために「NWYR」という別名義を設けています。NWYR名義では、よりクラシカルなトランス要素や感情的なメロディにフォーカスした楽曲が多く、トランス・ファンからの支持も厚いのが特徴です。これは、メイン・プロジェクトの商業性と別にアーティスティックな表現を追求するための戦略でもあります。

Mainstage Musicとレーベル運営

W&Wは自身のレーベル運営を通じて若手アーティストの発掘やリリースのハブを担っています。レーベル活動は単に自作を出す場というだけでなく、シーンの潮流を作るプラットフォームとして機能しており、彼らの音楽的な指向性を示す場ともなっています。レーベルを通じたコラボレーションやコンピレーションは、ファンベースの維持にも効果的です。

プロダクションの技術的側面

スタジオワークでは、モダンなソフトウェア音源(シンセプラグイン)とハードウェアを組み合わせたハイブリッドなアプローチが主流です。ポイントとなる手法は以下の通りです。

  • レイヤード・サウンドデザイン:複数のシンセを重ねて一つの主旋律サウンドを作る。
  • 精密なEQ処理とマルチバンドコンプレッション:ミックスの中で各要素がぶつからないように調整。
  • エフェクトの空間設計:リバーブやディレイで楽曲の奥行きを作る。
  • アレンジの瞬間芸:サビ前後の空間の取り方やスイッチでダイナミクスを生む。

評価と批評的視点

W&Wは商業的成功とシーンにおける高い可視性を得た一方で、批評的には“フェス向けの作り込み”が賛否を呼ぶこともあります。支持する側は『フロアを動かす力強さ』や『メロディアスな展開』を評価し、批判的な側は『商業的すぎる』や『トランスの繊細さが薄れる』という意見を述べることがあります。しかし、NWYRという別名義でトランスへの敬意を示す作品を発表している点は、アーティストとしての多面的な姿勢を示す重要な要素です。

影響力とシーンへの貢献

W&Wは若手プロデューサーにとってのロールモデルであり、フェス指向のプロダクション手法やプレゼンスの作り方に影響を与えてきました。レーベル運営やリミックス/コラボレーションを通じて、シーン全体のダイナミズムに寄与している点も見逃せません。また、トランス的な価値観(メロディやアンセム性)をビッグルームに持ち込むことで、ジャンルの境界線を曖昧にし、新しいリスナーを獲得する役割も果たしています。

現状と今後の展望

近年はEDMシーン自体が変化しており、アーティストには多様な音楽性が求められています。W&Wはその中で自らの強みであるメロディとエネルギーを保ちつつ、新しいサウンドデザインやコラボレーション、あるいはライブ演出の深化に取り組む可能性が高いです。NWYRの活動継続も、彼らがトランス文化とどう向き合っていくかを示す指標となるでしょう。

まとめ:W&Wの存在意義

W&Wは、フェスティバル文化が隆盛した時代に鮮烈な存在感を示した一方で、トランス的感性も同時に保持することでジャンル横断的に活動してきました。商業性とアーティスティックな探求の両立を試みる姿勢は、多くのプロデューサーにとって学ぶべき点が多く、今後もシーンの重要な一角を占め続けるでしょう。

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参考文献