Illenium — エモーショナルなメロディック・ベースの旗手:音楽性・制作・ライブを深掘り

はじめに — Illeniumという存在

米国の音楽プロデューサー/DJ、ニコラス・ミラー(Nicholas D. Miller)がIlleniumというアーティスト名で展開するサウンドは、メロディック・ベースやフューチャー・ベースを軸にしながら、エモーショナルなメロディと生楽器的な温度感を併せ持つことで知られています。エレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)のなかでも感情的な“物語性”を大切にするスタイルは、多くのリスナーを惹きつけ、アルバム、シングル、ライブの両面で高い評価を得ています。

略歴とキャリアの流れ

Illeniumは2010年代前半からリミックスやオリジナル曲を発表し始め、シーンで徐々に注目を集めました。彼のフルアルバムは代表的なものとして、〈Ashes〉(2016)、〈Awake〉(2017)、〈Ascend〉(2019)、〈Fallen Embers〉(2021)といったリリースがあり、それぞれで楽曲の完成度やスケールが拡大していきました。2019年以降は大規模なツアーやフェス出演、主要アーティストとのコラボレーションで国際的な知名度を確立しています。

音楽性の特徴

  • メロディ中心:Illeniumの曲は強いメロディラインと感情の起伏が特徴です。ピアノやアコースティックギターなどのコード進行を基盤に、シンセレイヤーで層を重ねていく作りが目立ちます。
  • ダイナミクスとビルド:ビルドアップからドロップへの流れに劇的なダイナミクスを持たせ、ドロップでは波打つようなベースとリードシンセで感情を爆発させます。サイドチェインを用いたポンピング感も多用されます。
  • 生楽器の導入:エレクトロニックな音作りの中にも、ギターやピアノなどの生音的アプローチを組み込むことで温かみを出しています。これにより“ポップ/ロック的な表現”がEDMに溶け込みやすくなっています。
  • ボーカルの扱い:生ボーカルとボーカルチョップの組み合わせ、ピッチ処理やリバーブで空間を作る手法が多用され、歌詞の感情を引き立てるプロダクションが行われます。

制作手法とサウンドデザイン

Illeniumのプロダクションは、ソングライティング的なアプローチとサウンドデザインの両立が鍵です。シンプルなコードから入ってメロディを育て、ボーカルと絡めながら複数のシンセレイヤーで厚みを作ります。以下の点がしばしば挙げられます:

  • レイヤリング:リード音は複数のオシレーターやシンセ(デジタル/アナログの組み合わせ)で作られ、EQとステレオイメージングで広がりを出します。
  • ダイナミクス処理:コンプレッションや自動化で感情的な呼吸を表現。ビルドで高まったエネルギーをドロップで解放する設計が見られます。
  • 空間演出:リバーブやディレイによる深い残響で“広がる感覚”を作り、聴き手に没入感を与えます。
  • コラボレーション的制作:ボーカリストや他プロデューサーと曲を共同で作ることが多く、曲ごとに異なるテクスチャや歌詞テーマが入ることでアルバム全体のバラエティが増します。

代表作とアルバムごとの特徴

各アルバムは作風やテーマが徐々に拡大しており、以下に主な特徴をまとめます。

  • Ashes (2016):Illeniumの名を広めた作品群の始まり。シンプルな感情表現とメロディ志向が明確に出たデビュー的作。
  • Awake (2017):プロダクションの質が上がり、ボーカル曲の比重も増加。ツアーでの定番曲も多数収録され、ファンベースが拡大。
  • Ascend (2019):スケール感を意識したサウンドで、他アーティストとの大きなコラボ(例:Jon Bellionとの「Good Things Fall Apart」)も含む作品。ビルボードチャートでも注目を集めました。
  • Fallen Embers (2021):より深いパーソナルなテーマや成熟したソングライティングが反映されたアルバム。ライブ向けのドラマチックな楽曲が並びます。

コラボレーションと代表曲

Illeniumは多くのボーカリストやプロデューサーと協働しており、それが彼の多様性の源となっています。代表曲としては、初期に注目された「Fractures」や、感情的な人気曲「Crawl Outta Love」、そして2019年に発表されたJon Bellionとの共作「Good Things Fall Apart」、The Chainsmokersとの共同制作「Takeaway」(Lennon Stella参加)などが知られています。これらの曲はラジオやプレイリストでの露出も高く、幅広いリスナー層に届きました。

ライブ表現とファン文化

Illeniumのライブは、視覚演出(ライト、映像)と楽曲のエモーショナルな流れを重視した構成が特徴です。生楽器やギターを取り入れるセットもあり、DJプレイ中心のEDMライブとは一線を画す“バンド的な熱量”を作り出します。ファンコミュニティは楽曲の歌詞やテーマに共感する層が多く、感情的なつながりが強いことがファン文化の特徴です。

批評的評価とジャンルへの影響

Illeniumは「メロディック・ベース」というジャンルの商業的成功を牽引した一人と見なされることが多いです。批評家からは、EDMにおける感情表現の可能性を広げた点や、ポップス的なソングライティングとEDMの技術的表現の両立を評価する声があります。一方で“エモさ”を前面に出すことへの賛否は分かれますが、総じて彼の楽曲はストリーミングやフェスで強い支持を獲得しています。

今後の展望

Illeniumはこれまでの流れを踏まえつつ、よりソングライティングやライブ表現に重きを置いた活動を継続する可能性が高いです。コラボレーションの幅をさらに広げることで、EDMとポップ/ロックの境界を行き来するような作品が今後も期待されます。また、ライブ演出やツアー規模の拡大により、フェスティバルシーズンでの存在感も強まり続けるでしょう。

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参考文献