Justice(ジャスティス)徹底解説:†(Cross)以降のサウンド、ライブ、影響を読み解く
Justiceとは
Justice(ジャスティス)はフランス・パリ出身のエレクトロニック・デュオで、メンバーはギャスパール・オージュ(Gaspard Augé)とグザヴィエ・ド・ロスネイ(Xavier de Rosnay)。エド・バンガー(Ed Banger Records)周辺のシーンから2000年代半ばに台頭し、ヘヴィで歪んだシンセサウンドとロック的なダイナミズムを兼ね備えたサウンドで国際的な成功を収めました。代表作である1stアルバム「†(Cross/2007年)」は批評的・商業的に大きな反響を呼び、以後のエレクトロシーンに強い影響を与えています。
メンバーと経歴の要点
- 結成:2000年代初頭に活動を開始。公式には2003年頃から本格始動したとされる。
- メンバー:Gaspard Augé(プロデューサー/作曲)とXavier de Rosnay(プロデューサー/作曲)。二人ともプロダクションとライブ両面で主要な役割を果たす。
- 所属・関係:Ed Banger Records(Pedro "Busy P" Winter主宰)の主要アーティストの一つとして注目を集めた。
- 主なリリース:シングル「Waters of Nazareth」(2005)、「D.A.N.C.E.」(2007)など。アルバムは Cross(†, 2007)、Audio, Video, Disco(2011)、Woman(2016)、リミックス/ライブ作の Woman Worldwide(2018)など。
- 受賞:2019年にライブ/リミックス作『Woman Worldwide』がグラミー賞の部門で評価されるなど、国際的な評価を受けている。
音楽性と制作手法
Justiceのサウンドは伝統的な「フレンチ・タッチ」から派生しつつ、歪ませたシンセ、ロック由来のリフ感、強烈な低域とスネアのアタックで特徴づけられます。サンプリングや古いレコードからの引用も用いつつ、ギター・アンプを通したような歪みを電子音で再現することで、ダンス・ミュージックにロック的な“迫力”と“存在感”を持ち込みました。
制作面では、アナログ機材やハードウェア・シンセを併用しつつ、デジタルなエフェクト処理で音像を大きく変形させる手法が多用されます。また、楽曲構成はシンセ主導のループにギターやブラス音色的な重ねを加え、サビやブレイクで一気に解放されるダイナミクスを重視します。ヴォーカルはしばしば断片的に扱われ、楽曲の“フック”として機能することが多いです。
代表作の深掘り
†(Cross, 2007)
デビュー・アルバム『†』はJusticeを世界に知らしめた作品で、クラブやロックの要素を融合したサウンドと一貫したヴィジュアル(十字架のロゴ)が強い印象を残しました。シングル「D.A.N.C.E.」はポップな旋律と子供合唱風のコーラスを組み合わせ、幅広いリスナー層に届く曲となりました。一方「Waters of Nazareth」や「Genesis」などはダークで攻撃的なトーンを持ち、アルバム全体で高い振幅を演出しています。
Audio, Video, Disco(2011)
2ndアルバムではロック志向がさらに顕著になり、バンド的な演奏感や長尺の展開を取り入れた曲が並びます。タイトルが示すように映像的な手触りとアナログ感の追求が見られ、ファンの間では評価が分かれたものの、Justiceの音楽的幅を示す作品となりました。
Woman(2016) & Woman Worldwide(2018)
3rdアルバム『Woman』ではディスコやファンクの要素を再評価しつつ、洗練されたプロダクションでポップな側面を強調しました。続く『Woman Worldwide』は過去作品をライブ感やリミックス的観点で再構築した一枚で、ライブ・アレンジのクオリティが高く評価され、グラミー賞などでも注目されました。
ライブとビジュアル表現
Justiceのライブは音だけでなくビジュアル演出が大きな魅力です。十字架をモチーフにした巨大なLEDセットやシンクロしたライトワーク、ステージの圧倒的な造形が観客に強い印象を与えます。楽曲をスタジアム級のスケールで再構築するアレンジは、クラブプレイでの原曲とは別の興奮を生み、バンド的な“生のエネルギー”をダンスミュージックに持ち込むことに成功しました。
影響と受容
Justiceの登場は、2000年代後半のエレクトロシーンに“ノイズや歪みを積極的に取り入れる”という潮流を強めました。ダンスミュージックが単なるビート中心のジャンルから、より多様な音色やロック的な表現を取り込む契機になったと言えます。また、インディー/ロック・リスナーを取り込むことで、フェスティバルや大型ステージでのプレゼンスも高めました。
批評面では、その攻撃的な音像と大胆なサンプリング使いが賞賛される一方、商業的成功と批評的評価のギャップ、あるいはアルバムごとの方向性の違いについて議論が続いています。それでも、ジャンル横断的な影響力は明確で、多くの後続アーティストに影響を与えています。
制作とコラボレーションの特徴
Justiceは他アーティストのリミックスや共演も多数手がけ、シーン内でのネットワークを築いてきました。プロダクション面ではレイヤーごとの歪みの調整、低域の厚み作り、アナログ的な揺らぎをデジタルで制御する点が特徴です。また、ライブでの再解釈を前提に楽曲を設計することが多く、レコーディング版とステージ版の差分を意識した制作スタンスが見られます。
評価と遺産
2000年代後半〜2010年代にかけてJusticeが示した“エレクトロニカのロック化”は、シーンの多様化を促し、ダンスミュージックの受容範囲を広げました。批評家や音楽ファンからは、その革新性と視覚表現の一体化が高く評価され、特に『†』は当時のクラブ文化とポップ・カルチャーの接点を象徴するアルバムとして位置づけられています。近年のリリースやライブ活動を通じても、彼らのサウンドは時代に応じて変化しつつ、独自の存在感を保ち続けています。
まとめ:Justiceの現在地
Justiceは単なるダンス・ユニットではなく、サウンドデザイン、ライブ演出、ヴィジュアル・アイデンティティを統合することで独自のポジションを築いてきました。エレクトロニック音楽の枠を越えてロックやポップの要素を取り込み、フェスやアリーナクラスのステージで存在感を示す彼らのアプローチは、今も多くのミュージシャンやプロデューサーにとって参照点であり続けています。
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参考文献
- Wikipedia: Justice (band)
- AllMusic: Justice Biography
- Pitchfork: Cross Review
- Ed Banger Records(公式)
- The Recording Academy / Grammy Awards(受賞情報の参照)


