Genesis(ジェネシス) — プログレッシブからポップへ変化した英ロックの巨人
Genesis — 概要と起源
Genesis(ジェネシス)は、1967年に英国サリー州のチャーターハウス校を発祥とするロックバンドで、トニー・バンクス(キーボード)、ピーター・ガブリエル(ボーカル/フルート)、アンソニー・フィリップス(ギター)、マイク・ラザフォード(ギター/ベース)らを中心に結成されました。初期は学校内のバンド同士の合流から始まり、のちに一貫してプログレッシブ・ロックの旗手として評価されつつ、1980年代以降はよりポップ志向へと大きく方向転換して世界的な商業的成功を収めました。総売上は1億枚以上とされ、プログレからAOR/ポップに至る長い変遷と影響力の大きさから、ロック史における重要バンドの一つです。
結成から黄金期(1967–1975)
Genesisは元々、学校内の二つのバンド(Garden WallとThe Anon)が統合する形で誕生しました。1969年にデビュー・アルバム『From Genesis to Revelation』を発表しますが、この作品は当時のマネジメントやプロデューサー(ジョナサン・キング)との関係の下で商業的指向が強く、バンド自身の望む方向性とは異なるものとなりました。
1970年前後にメンバー・チェンジを繰り返しながら、トニー・バンクス、マイク・ラザフォード、ピーター・ガブリエルに加え、フィリップスの脱退(1970年頃)後にスティーヴ・ハケット(ギター)とフィル・コリンズ(ドラマー、1970年加入)が参入し、1970年代初頭から中盤にかけては『Trespass』(1970)『Nursery Cryme』(1971)『Foxtrot』(1972)『Selling England by the Pound』(1973)などの一連のアルバムで複雑な構成、長尺の組曲、詩的で物語性のある歌詞を展開。特に『Foxtrot』収録の「Supper's Ready」や『Selling England by the Pound』収録の「Firth of Fifth」などは、プログレッシブ・ロックの代表曲として高く評価されています。
ピーター・ガブリエル脱退とフィル・コリンズの前面化(1975–1980)
1974年のコンセプト・アルバム『The Lamb Lies Down on Broadway』ツアー後、ピーター・ガブリエルは1975年に脱退。バンドは一時的な岐路に立たされるも、フィル・コリンズがボーカルを兼任する形で存続を決断します。1976年の『A Trick of the Tail』は、メンバー交代後の初のスタジオ作として批評的にも商業的にも成功を収め、以降の作品群(『Wind & Wuthering』など)ではバンドの演奏力と作曲力が際立ち、従来のプログレ手法を保ちながらもソングライティングの幅を拡大していきました。
方向転換と商業的成功(1980年代)
1970年代末から1980年代にかけて、Genesisは音楽性を徐々に簡潔でポップな方向へとシフトさせます。1980年の『Duke』を皮切りに、1981年の『Abacab』、1983年のセルフタイトル『Genesis』、1986年の『Invisible Touch』は特に大衆的なヒットを生み出しました。『Invisible Touch』は全米チャートで1位を獲得し、同名シングルは世界的なヒットに。1980年代のGenesisは、複雑なプログレッシブな要素を残しつつも、ラジオ向けのメロディとモダンなプロダクションで幅広いリスナーを獲得しました。
主要メンバーとそれぞれの役割
- ピーター・ガブリエル — 初期のリードボーカル、ステージ表現(コスチュームや演劇的演出)でグループの個性を確立。
- フィル・コリンズ — 1970年にドラマーとして加入。1975年以降リードボーカルを兼任し、リズム・アプローチと感情表現でバンドの顔に。
- トニー・バンクス — キーボード・アレンジと和声進行の中心。音色と構成力でGenesisのサウンドを形作った立役者。
- マイク・ラザフォード — ギターとベースを兼務し、楽曲の骨格とサウンドスケープの補完を担当。
- スティーヴ・ハケット — 1971年から1977年まで在籍。ギター・テクスチャーとソロはバンドのサウンドに新たな表現を与えた。
音楽的特徴と作曲手法
Genesisの音楽は時代によって顔を変えますが、以下の要素が一貫して見られます。まずトニー・バンクスのキーボードを中心とした和声進行とアレンジメント、次に物語的な歌詞構成、曲構成の自由度(長い組曲や複数部構成)です。初期のプログレ期は変拍子や複雑な構造、劇的な展開を特徴とし、後年はテンポや楽曲長をコンパクトにしてコーラス重視のポップ志向へと変化しました。ライブにおける演出面でもピーター・ガブリエル時代には演劇的・視覚的な表現が用いられ、後年は大規模アリーナ・ツアーでの洗練された演出に移行しました。
ソロ活動と並行する影響力
メンバー各自のソロ活動もバンドの歴史を語る上で重要です。ピーター・ガブリエルはワールドミュージックやビジュアル面で独自の表現を確立し、1986年のアルバム『So』とシングル「Sledgehammer」は国際的な成功を収めました。フィル・コリンズは1980年代にソロでも大ブレイクし、ポップとR&Bを融合したヒット曲を次々と生み出してソロアーティストとしても高い知名度を獲得。これらのソロ活動は、Genesisそのものの人気や音楽性に相互影響を与え、メンバー個々のスタイルがバンドの多様性に寄与しました。
代表作と聴きどころ(アルバム選)
- From Genesis to Revelation(1969)— デビュー作。バンド初期の記録的作品だが、制作環境の制約が反映されている。
- Trespass(1970)— 初期プログレ傾向が鮮明になる過渡期。
- Nursery Cryme(1971)/Foxtrot(1972)— 物語性と長編曲がバンドの個性を確立。
- Selling England by the Pound(1973)— 技術と叙情性の融合。プログレ期の名作。
- The Lamb Lies Down on Broadway(1974)— ピーター・ガブリエル期の集大成的コンセプトアルバム。
- A Trick of the Tail(1976)— ガブリエル脱退後の復活作、コリンズのボーカルで新局面を示す。
- Invisible Touch(1986)— 産業的成功を象徴するポップ志向の代表作。
- We Can’t Dance(1991)— ロックとポップを併せ持つ成熟期のアルバム。
- Calling All Stations(1997)— レイ・ウィルソンを迎えた後期作(商業的反応は地域差あり)。
ライブとステージ表現
Genesisのライブは、初期のピーター・ガブリエル期には演劇と組み合わさった視覚的パフォーマンスが特徴でした。ガブリエルの仮面や衣装、演技は観客に強烈な印象を残しました。コリンズ期以降は大型アリーナを前提としたスケールの大きい演出と高い完成度の演奏で知られ、複雑な楽曲を演奏面で堅実に再現する力も評価されます。またフィル・コリンズの独特なグルーヴと声質は、古いレパートリーに新たな解釈を与えました。
批評・評価と文化的影響
Genesisは批評家やファンの間で評価が分かれるバンドでもあります。プログレッシブ期には高い芸術性で賞賛される一方、1980年代以降の商業化・ポップ化はプログレ支持者から批判を受けることもありました。しかし商業的成功と音楽的革新の双方を併せ持つ点は疑いの余地がなく、多くの後続アーティストに影響を与えています。個々のメンバーのソロ活躍も含め、ポップス、ロック、ワールドミュージックの境界を横断する影響力を残しました。
晩年・再結成と現在(1997以降)
1997年の『Calling All Stations』後、活動は断続的となり、2007年にはフィル・コリンズを含む主要メンバーによるツアー(Turn It On Again: The Tour)で再結集が実現。2021年からの『The Last Domino? Tour』でも一部再結成を果たし、近年の公演ではフィル・コリンズの健康問題に配慮して息子ニック・コリンズがドラムを務めるなどの工夫がなされました。完全な活動休止やメンバーの高齢化もあるものの、Legacyとしての再評価は続いています。
なぜGenesisを聴くべきか
Genesisは一つのジャンルに留まらない多面的な魅力を持っています。プログレッシブ期の複雑な音楽構造と物語性、ポップ期のメロディアスで洗練された楽曲、さらに個々のメンバーが切り開いたソロ活動の深さと広がり。ロックの歴史や制作手法、ライブ表現の変遷を学ぶ上で非常に示唆に富む存在です。
参考ディスコグラフィ(主要作)
- From Genesis to Revelation(1969)
- Trespass(1970)
- Nursery Cryme(1971)
- Foxtrot(1972)
- Selling England by the Pound(1973)
- The Lamb Lies Down on Broadway(1974)
- A Trick of the Tail(1976)
- Wind & Wuthering(1976)
- Duke(1980)
- Abacab(1981)
- Genesis(1983)
- Invisible Touch(1986)
- We Can't Dance(1991)
- Calling All Stations(1997)
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