INXS — オーストラリア発のロック・ダンスバンドが遺した遺産とその軌跡

イントロダクション

INXSは1977年にオーストラリアのシドニーで結成され、1980年代から1990年代にかけて世界的な成功を収めたロックバンドです。ファンク、ニューウェイヴ、ダンス、ロックを融合させたサウンドと、フロントマンのマイケル・ハッチェンスのカリスマ的なステージングが特徴で、アルバム『Kick』を中心に数々のヒットを生み出しました。本稿では結成から黄金期、ハッチェンスの死後の動き、音楽的特徴、影響と評価までを詳細に整理します。

結成と初期(1977–1982)

バンドは1977年にティム・ファリス、アンドリュー・ファリス、ジョン・ファリスのファリス3兄弟を中心に結成され、後にギャリー・ギャリー・ビアーズ(ベース)とカーク・ペンギリー(ギター/サックス)が加わりました。マイケル・ハッチェンスは後から加入し、リードボーカルとしてバンドの顔となりました。1980年にセルフタイトルのデビュー・アルバムを発表して活動を本格化させ、オーストラリア国内での知名度を高めていきます。

国際ブレイクと代表作(1982–1990)

1982年以降、INXSは国際市場へと進出します。1982年発表の『Shabooh Shoobah』でシングル『The One Thing』がヒットし、アメリカでも注目を集めました。その後、1985年の『Listen Like Thieves』でバンドはよりロック色を強め、続く1987年の『Kick』で商業的に頂点を迎えます。『Kick』には『Need You Tonight』、『Devil Inside』、『New Sensation』、『Never Tear Us Apart』といった代表曲が収録され、特に『Need You Tonight』は1988年にアメリカのチャートでNo.1を獲得しました。

音楽性とサウンドの特徴

  • ジャンルの融合: ロックを基盤に、ファンクやダンス、ニューウェイヴの要素を取り入れたリズム感とグルーヴが特徴です。ベースとギターのリフ、シンセの効果、そしてドラムの明確なビートが曲を牽引します。

  • ボーカルとパフォーマンス: マイケル・ハッチェンスの官能的でしばしば感情的な歌唱と、ステージ上での強烈な存在感が楽曲の魅力を増幅させました。彼のパフォーマンスはバンドのイメージ形成に大きく寄与しています。

  • 楽曲構成: シンプルで耳に残るメロディとコーラス、ダンサブルなビートとロックの力強さを両立させることを得意としました。プロダクションは80年代の音像を反映しつつ、時にもっと有機的なバンド演奏を前面に出しました。

主要メンバー

  • マイケル・ハッチェンス(ボーカル、1960–1997)

  • アンドリュー・ファリス(キーボード、ギター、主要ソングライター)

  • ティム・ファリス(リードギター)

  • ジョン・ファリス(ドラム)

  • ギャリー・ギャリー・ビアーズ(ベース)

  • カーク・ペンギリー(ギター、サックス)

ハッチェンスの死とバンドの変化(1997以降)

1997年11月22日、マイケル・ハッチェンスがシドニーの自宅で死亡しているのが発見され、ニューヨーク州の報道やオーストラリアの捜査により、死因は絞首による自殺と結論付けられました。ハッチェンスの死はバンドにとって重大な転機となり、残されたメンバーは一時活動を停止した後、ゲストボーカルを迎えての再始動や、2005年のリアリティ番組『Rock Star: INXS』を経て新しいシンガーを迎えるなどの試みを行いました。

2000年代以降の活動と現状

ハッチェンス没後、INXSは断続的にツアーや録音を続けます。2005年に放送された『Rock Star: INXS』でJ.D. Fortuneが勝ち、彼をフィーチャーしたアルバム『Switch』がリリースされました。その後も複数のボーカリストが在籍・降板を繰り返し、2010年代以降はツアーを中心に活動を続けています。バンドの活動はかつてのようなオリジナルメンバーでの創作中心から、キャリアの遺産を現代に伝える形へと変化しました。

評価と影響

INXSはポピュラー音楽においていくつかの側面で評価されています。1980年代後半というMTV時代に合致するビジュアル性とヒット曲を持ち合わせ、国際的な商業成功を収めた数少ないオーストラリア出身バンドの一つとなりました。彼らのサウンドはダンスとロックの橋渡しを行い、後続のバンドやアーティストに影響を与えています。2001年にはオーストラリアの音楽殿堂に相当するARRIA関係の栄誉や、各種ベストアルバムの評価など、長期的な評価も確立されました。

代表曲とおすすめの聴きどころ

  • Need You Tonight — シンプルかつ強烈なリフとラップ調のボーカルが印象的。ダンスフロアとロックの融合の好例。

  • Never Tear Us Apart — スローバラードながら劇的なストリングスと情感あふれる歌唱で、バンドの幅を示す楽曲。

  • The One Thing — 早期のシングルでポップなアレンジとダイナミックな構成が光る。

  • New Sensation — アップテンポでモダンなロックナンバー。コーラスのキャッチーさが魅力。

ライブパフォーマンスと映像表現

INXSはライブにおける演出力と映像作品でも知られています。マイケル・ハッチェンスの観客との一体感を促す動きや、視覚的に訴えるミュージックビデオはMTV世代のファンに強い印象を残しました。スタジオ録音の洗練されたサウンドと、ライブでのエネルギーある演奏という二面性が、彼らの評価を揺るぎないものにしました。

論争と課題

成功の陰でハッチェンスの私生活やメディア報道、薬物・アルコール問題などが話題になることもありました。ハッチェンスの死後はバンドのアイデンティティをどう継承するかが大きな課題となり、元メンバーと新ボーカリストとの創造的相性やファンの期待との折り合いをつける作業が続きました。

なぜ今も聴かれるのか

INXSの楽曲はダンス性とメロディのバランスがよく、時代を越えて聴きやすい点が強みです。さらにマイケル・ハッチェンスという稀有なフロントマンの存在が、楽曲に独特の色彩を与えており、そのために新しい世代のリスナーにも発見され続けています。また映画・ドラマやCMなどで楽曲が採用されることも多く、リバイバル的に注目されることがある点も再生産の一因です。

まとめ

INXSはオーストラリア発のバンドとして国際的な成功を収め、80年代から90年代にかけて突出した存在感を示しました。マイケル・ハッチェンスのカリスマ性、ファンクとロックを融合したサウンド、そして洗練されたプロダクションが彼らを象徴する要素です。ハッチェンスの死後もバンドは活動を続け、遺された楽曲群は現在でも多くのリスナーに影響を与えています。彼らのディスコグラフィーを辿ることは、80年代以降のポピュラー音楽の変遷を理解するうえでも有益です。

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参考文献