Earth, Wind & Fireの全貌:誕生から名曲・影響まで徹底解説
イントロダクション — 永遠のグルーヴを生んだバンド
Earth, Wind & Fire(以下EWF)は、ソウル、ファンク、ジャズ、ディスコ、ポップを融合させた独自のサウンドと、荘厳かつ祝祭的な舞台演出で世界的な人気を獲得したアメリカの伝説的バンドです。1969年にシカゴでモーリス・ホワイトが中心となって結成され、1970年代から1980年代にかけて一連のヒット曲と名盤を生み出しました。楽曲の多彩さ、ホーンアレンジ、アフリカ由来の打楽器やカリンバ(親指ピアノ)の導入、そして高いコーラスワークがEWFのトレードマークとなっています。
結成と初期の歩み
EWFは1969年にモーリス・ホワイト(リーダー、パーカッション、ボーカル)を中心に結成されました。モーリスはRAMSEY LEWIS TRIOのメンバーとして活動した経験を持ち、スタジオワークやプロデュースのノウハウをチームにもたらしました。バンド名はモーリスの占星術的関心から「Earth, Wind & Fire」と命名されたとされ、自然要素や精神性を重視する美学が初期から見られます。
1970年代初頭、チャールズ・ステッペニー(編曲・プロデュース)が加わり、ジャズ的な和声とソウルのグルーヴが融合した独特の音世界が形成されました。1973年以降、フィリップ・ベイリー(ファルセットを多用するボーカリスト)、ヴァーディン・ホワイト(ベース)、ラルフ・ジョンソン(パーカッション)、ラリー・ダン(キーボード)、アル・マケイ(ギター)らが揃い、バンドは黄金期へと入っていきます。
サウンドの特徴と楽曲制作
EWFのサウンドは多層的です。ソウル/R&Bのバックボーンに、ファンクのリズムセクション、ジャズ由来の複雑な和声、そしてストリングスやホーンの壮麗なアレンジが加わります。モーリス・ホワイトが採り入れたアフリカ系楽器(カリンバなど)と、宗教的・精神的な歌詞テーマも大きな特徴です。
編曲面ではチャールズ・ステッペニーの貢献が大きく、のちにバンドの代表作となるアルバム群の音像を作り上げました。ステッペニーの急逝(1976年)はバンドにとって大きな損失でしたが、モーリスを中心とした創作力は継続されます。
主要メンバーと役割
- モーリス・ホワイト(Maurice White) — 創設者、リード/コーラス、プロデューサー、カリンバ奏者。バンドの音楽的方向性と舞台演出をリード。晩年はパーキンソン病のためツアーから退く(1994年)。2016年に逝去。
- フィリップ・ベイリー(Philip Bailey) — 男女混声のハーモニーで重要な役割を果たすファルセットの持ち主。ソロ活動やコラボレーションでも高評価。
- ヴァーディン・ホワイト(Verdine White) — 卓越したベーシスト。ステージでのエネルギッシュなパフォーマンスでも有名。
- ラルフ・ジョンソン(Ralph Johnson) — パーカッション/ドラム、コーラスでバンドのリズムと雰囲気を支える。
- ラリー・ダン(Larry Dunn) — キーボード/シンセでシンフォニックな質感やモダンなサウンドを加えた。
- アル・マケイ(Al McKay)/ジョニー・グラハム(Johnny Graham) — ギター担当、ファンク寄りのリズムとリフを提供。
- アンドリュー・ウールフォーク(Andrew Woolfolk)/ドン・マイリックら — サックス・ホーンセクションを支え、バンドのブラスサウンドを形成。
代表作とディスコグラフィのハイライト
EWFは多数のアルバムを発表しましたが、特に重要な作品を挙げると以下の通りです。
- That's the Way of the World (1975) — タイトル曲とシングル「Shining Star」で商業的・批評的成功を収めた代表作。
- Gratitude (1975) — ライブ音源とスタジオ曲を混在させたアルバムで、1970年代の人気ぶりを象徴。
- All 'n All (1977) — ラテンやワールドミュージックの要素を取り入れた作風。
- I Am (1979) — 「After the Love Has Gone」などヒット曲を収録。
- Greatest Hits / The Best of (1978) — 「September」(1978年シングル)はこの時期に大ヒットし、現在でも代表曲として広く親しまれる。
- Raise! (1981) — シンセサイザーを前面に出した80年代的なダンスサウンド。「Let's Groove」がこのアルバムの代表曲。
これらに加え、彼らの楽曲は単発シングルやライブアルバムでも多数の名曲を輩出しています。
ライブ・ステージの魅力
EWFのコンサートは音だけでなく視覚的ショーとしても評価が高く、コスチューム、照明、ダンス、ホーンセクションの統制された動きが融合したエンターテインメント性の高いステージを特徴とします。摩訶不思議な儀式めいた演出やスピリチュアルな雰囲気も織り込み、単なるポップ/ダンスショーを越えた“祝祭”空間を作り上げました。
受賞・評価と商業的成功
EWFは商業的にも大きな成功を収め、世界でのレコードセールスは累計で数千万枚(90万枚ではなく、一般に約9000万枚規模と報じられることが多い)にのぼるとの報告があります。また、グラミー賞を含む多数の音楽賞を受賞し、2000年にはロックの殿堂(Rock & Roll Hall of Fame)へ殿堂入りしました。バンドの音楽的革新性と幅広い世代への影響は、批評的にも高く評価されています。
影響とサンプリング文化への貢献
EWFのリズム、ホーンフレーズ、コーラスは後のR&B、ヒップホップ、ポップミュージックに大きな影響を与えました。特に1980年代以降、ヒップホップやR&BのプロデューサーたちによるサンプリングでEWFのフレーズやグルーヴが繰り返し用いられ、その結果若い世代にも楽曲が再発見されています。また、プリンス、ブルーノ・マーズなど現代のアーティストにもEWFの影響が見られます。
変遷と現在
1970年代の黄金期以降、メンバー交代やソロ活動を経て活動スタイルは変化しました。モーリス・ホワイトは1994年にパーキンソン病を理由にツアーから退き、2016年に逝去しました。しかし、フィリップ・ベイリーやヴァーディン・ホワイト、ラルフ・ジョンソンらを中心にバンドは活動を続け、ライヴやフェスティバル出演、復刻盤のリリースなどで現在もその存在感を保っています。楽曲はCMや映画、テレビ番組でも多用され、時代を超えて親しまれています。
楽曲に見る普遍性 — スピリチュアリティとポピュラリティの両立
EWFの魅力は、スピリチュアルな志向とポップな親しみやすさを同時に内包している点にあります。宗教的、宇宙観的な歌詞や象徴的なアートワークは深遠さを与え、一方で「September」や「Let's Groove」といったダンサブルな曲は万人を躍らせます。この両者を同時に成立させた点が、バンドの長年にわたる普遍的な人気につながっています。
まとめ — サウンドの遺産と未来への橋渡し
Earth, Wind & Fireは、単なるヒットメーカーにとどまらず、音楽的な境界を越えた表現と壮麗なステージングで多くのアーティストとリスナーに影響を与えてきました。モーリス・ホワイトのビジョン、フィリップ・ベイリーの声、ヴァーディン・ホワイトのベースライン、そしてホーンやコーラスが織りなすサウンドは、現代の音楽シーンにも脈々と息づいています。彼らの楽曲はこれからもリミックスやカバー、サンプリングを通じて新たな世代へ受け継がれていくでしょう。
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参考文献
- Rock & Roll Hall of Fame — Earth, Wind & Fire
- Encyclopaedia Britannica — Earth, Wind & Fire
- AllMusic — Earth, Wind & Fire Biography
- Official Earth, Wind & Fire Website
- GRAMMYs — Earth, Wind & Fire


