ビッグ・ジョー・ターナー — ブギウギからロックンロールへの架け橋
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序章 — “The Boss of the Blues” の誕生
Big Joe Turner(本名 Joseph Vernon Turner Jr., 1911年5月18日 - 1985年11月24日)は、20世紀アメリカの黒人音楽史における重要人物の一人であり、ブルース・シャウト(blues shouter)と呼ばれる太く張りのあるボーカル・スタイルで知られます。通称 "The Boss of the Blues"。その力強い声とグルーヴ感は、ビッグバンドやピアノ・ブギウギの伴奏の上でも遺憾なく発揮され、ジャンプ・ブルースや初期のロックンロールへ重要な影響を与えました。
幼少期と活動の出発点
ターンナーはミズーリ州カンザスシティで生まれ育ち、若い頃からツアーや大衆娯楽の世界で働きました。地方の巡業やショーで鍛えられたその表現力は、後のステージ・パフォーマンスの核となります。30年代にはカンザスシティの音楽シーンから東海岸へ進出し、ピアニストとの共演やクラブでのレジデンシーを通じて評判を高めました。
ピート・ジョンソンとの出会いと「Roll 'Em Pete」
ターンナーの名を決定づけた最初期の記録の一つが、ピアニスト Pete Johnson との共演曲「Roll 'Em Pete」です(1938年録音)。この曲はブギウギ・ピアノの強烈なリズムに、ターンナーのシャウトが乗る形式で、後のロックンロールの要素を先取りしたと評価されています。即興的な熱量、強靭な発声、ダンス性の高さが結びつき、黒人音楽のダンス文化をレコードとして定着させた点で歴史的価値があります。
ジャンプ・ブルースからR&Bへ、そしてロックンロールへの橋渡し
戦後の音楽市場で、ターンナーはジャンプ・ブルースやリズム・アンド・ブルースの中心的人物となりました。彼の持ち味は、ビッグバンドの音量に負けない声量と、ダンス向きのリズム感です。1950年代にはレコード会社の支援を受けて、より商業的なR&Bヒットを連発し、白人層へ向けたカヴァーと対比される形で原型の強いブルース・ナンバーを残しました。
代表曲とその影響
- Roll 'Em Pete — ブギウギとシャウトの結実。後年、多くのミュージシャンがこの曲を根源的なロックの祖形として挙げる。
- Shake, Rattle and Roll(1954年)— Jesse Stone(Charles Calhoun名義)作。ターンナーのオリジナルはR&Bチャートで大ヒットし、のちに Bill Haley & His Comets によるカヴァーがポップ市場を席巻してロックンロールの商業的成功を助けた。歌詞の露骨な表現が改変されるなど、黒人音楽が白人市場へ翻訳される典型例としてもしばしば言及される。
- Honey Hush など — ターンナーのレパートリーにはダンス寄りのナンバーが多く、ライブでは観客の熱狂を誘った。
歌唱スタイルとパフォーマンスの特長
ターンナーは "ブルース・シャウト" の典型で、マイクロフォンが未熟だった時代でもバンドを圧倒する力強い発声を身につけていました。彼のフレージングは即興性に富み、歌詞の語り口は時に説教じみ、時にユーモラス。歌の主題は愛、性、酒、都会の夜といったブルースの定番ですが、エネルギーとスウィング感でそれらを観客に直に伝える点が特徴です。ステージ上の存在感は視覚的なショーマンシップとしても高く評価されました。
商業面と文化的意味
1950年代の音楽産業は人種的な線引きが明確で、黒人アーティストのヒットが白人アーティストによって『清潔化』されてポップチャートに登ることが多々ありました。Turner の「Shake, Rattle and Roll」はその代表例とされ、オリジナル版の生々しさや黒人のダンス文化を残しながら、カヴァー版がロックンロールの普及に寄与しました。この過程でターンナー自身は黒人音楽の源泉としての評価を確立し、後のロック歌手たちに影響を与え続けました。
共演者とレーベル
ターンナーはピート・ジョンソンをはじめとした当代一流のピアニストやバンドリーダーと共演しました。商業録音においては複数のレーベルで活動しましたが、1950年代にはR&Bの要所であるレーベルからのリリースが彼の露出を高めました。ライブ活動も精力的で、クラブからフェスティバルまで幅広く登場し、ヨーロッパ・ツアーも行うなど国際的な評価も得ています。
晩年と評価
晩年もステージ活動を続け、1970年代から80年代にかけては“伝説的なブルース/ロックンロールの先駆者”として再評価されました。彼の音楽は後世のロック/ブルース・ミュージシャンに受け継がれ、多くの研究者や批評家がターンナーをロックンロール誕生の重要人物の一人として位置づけています。1985年にロサンゼルスで亡くなりましたが、その音楽的遺産は現在も演奏と録音を通して生き続けています。
ディスコグラフィのハイライト(入門用)
- Roll 'Em Pete(with Pete Johnson) — 初期代表作。ブギウギとシャウトの名作。
- Shake, Rattle and Roll — R&Bヒット、ロックンロール普及に寄与した一曲。
- Honey Hush ほかシングル群 — ジャンプ・ブルースのダンス性を示すナンバー。
影響の広がりと現在への繋がり
Big Joe Turner のボーカル様式とレパートリーは、後のロック・ヴォーカリストやR&Bシンガーに大きな影響を与えました。彼のようなシャウト型の歌唱は、ロックにおける「声でバンドを引っ張る」表現の原型のひとつと見なされ、またブギウギやジャンプ・ブルースのグルーヴはリズム感重視のポピュラー音楽の方向性を示しました。現代のリスナーが彼の録音を聴くとき、そこには人間の声とリズムが直に結びつく音楽の原初的な快楽が残っています。
まとめ — 歴史的意義と聴きどころ
Big Joe Turner は単なる“強い声のシンガー”を越えて、ブルースからジャンプ、R&B、そして初期ロックンロールへと音楽が移行する過程を体現した存在です。力強いシャウト、ダンス性に富んだ曲調、そして録音を通じて伝わるライブの熱量は、当時の音楽文化の変化を理解する上で欠かせません。初めて聴く人はまず「Roll 'Em Pete」「Shake, Rattle and Roll」などの代表曲でその迫力を味わい、次にライブ録音やアルバムで彼の表現の幅を確かめることを勧めます。
参考文献
- Encyclopaedia Britannica: Big Joe Turner
- AllMusic: Big Joe Turner Biography
- Wikipedia: Big Joe Turner
- Rock & Roll Hall of Fame: Big Joe Turner
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