11thコード完全ガイド:構造・表記・実践的ボイシングと応用法

11thコードとは何か

11thコードは、三和音(1・3・5)に7度・9度・11度という拡張音を重ねたコードの総称です。理論上はルート(1)、3度、5度、7度、9度、11度の6音を含みますが、実際の演奏では音の重なりや不協和音を避けるために一部の音が省略されることが多く、用途に応じてさまざまな形に変化します。

構成音の整理(Cを例に)

  • C11(一般的な11th): C(1)– E(3)– G(5)– Bb(♭7)– D(9)– F(11)
  • Cmaj11(メジャー11): C(1)– E(3)– G(5)– B(△7)– D(9)– F(11)
  • Cm11(マイナー11): C(1)– Eb(♭3)– G(5)– Bb(♭7)– D(9)– F(11)

ここで重要なのは「11度は実質的に上行の4度である」という点です。従って3度(E)と11度(F)が同時に鳴ると、短2度の強い不協和を生じます。そのため多くの実践的アプローチでは3度か11度のどちらかを省くか、音域差(オクターブ操作)やテンションの変更(#11など)で調整します。

表記と解釈のポイント

  • 表記の差:シンボル「C11」は文脈により「C7(9,11)」を暗示することが多いです。つまり7度を含むドミナント的な性格を前提とする場合が多い。
  • 「Cmaj11」はメジャー7を含む和音で、より静的で複雑な色彩を与えます。ただし3度と11度の衝突に注意。
  • 「#11 / b11」:11を変化させることで別のスケール色(LydianやLydian dominantなど)を示唆します。

なぜ3度を省くのか(実践的理由)

3度(長3度・短3度)はコードの響き(長・短)を決める重要な音ですが、11度(4度)と近接するために強い不協和を生みます。特にピアノやギターの密集した領域では混濁しやすく、響きが濁る原因になります。そこで以下の処理がよく使われます。

  • 3度を省略して「sus(サスペンデッド)」的な響きにする(例:C11 ≒ C9sus4)。
  • 11度を#11にして3度との衝突を避け、より洗練された色合いにする(Lydian的)。
  • 音域を離して配置(3度は低域、11度は高域など)して共存させる。

スケール選択(どのスケールを使うか)

  • ドミナント系11(例:C11):基本はCミクソリディアン(C D E F G A Bb)。11(F)はナチュラルな4度として現れる。
  • #11を使う場合:Lydian dominant(メロディック・マイナーの5度上)を選ぶと自然に#11(F#)が含まれ、独特な浮遊感が得られます。
  • メジャー11(Cmaj11):Cリディアン(C D E F# G A B)を使うと#11が自然ですが、ナチュラル11を使うなら通常のメジャースケールでよい。ただし3度との衝突を処理する必要あり。
  • マイナー11(Cm11):通常はドリアン(Dorian)が適合。特にメロウなジャズやR&Bで多用されます。

ボイシング(実践的な配列)

ピアノでは、低音域にルートと7度を配置し、高音域で9・11・(5)を重ねるとクリアに聴こえます。例:

  • C11の一例(ピアノ):左手 C(ルート)& Bb(♭7)、右手 D(9)・F(11)・G(5) → 3度(E)を省略して濁りを避ける。
  • Cmaj11の一例(ピアノ):左手 C&B(△7)、右手 D(9)・F#(#11)・G(5) → #11にして3度との衝突を回避。
  • Cm11の一例(ピアノ):左手 C&Bb、右手 Eb(♭3)・D(9)・F(11) → ドリアン的な響き。

ギターでは、狭い指板上で複数のテンションを同時に鳴らすのは難しいため、3度または5度を省いたサスペンド系のフォームや、トップの3弦に9・11・7を集めるようなルーティングが実用的です。いずれにせよ「機能(ドミナントかサブドミナントか)」と「音域」を考えて配置するのが鍵です。

機能と音楽的役割

11thコードは単なる“色”ではなく、機能和声でも重要です。ドミナントに現れる11thは次に来るコードへ解決するための推進力を持ちますが、3度を欠いた形(sus的な11)はサブドミナント的な動きや掛け合いにも使われます。ジャンル別には以下の傾向があります:

  • ジャズ:リッチなテンションとして細かなボイシングとスケール選択で使用。
  • R&B/ソウル:マイナー11やメジャー11をコード色彩として多用し、滑らかなテンション感を作る。
  • ロック/ポップ:機能より色彩優先で、sus4的に利用されることが多い。

実例と分析(名曲での使用)

多くのスタンダードやコンテンポラリー曲で11thは登場します。例えばジャズ・コンボではドミナントのサブスティテューションやターゲットコードとしてC11が使われ、テンションを活かしたソロやコンピングが行われます。R&Bでは「m11」をルートにした進行が和声的な暖かさを作り、シンガーのメロディをやさしく支えます。

練習法と応用のコツ

  • まずは各種類(C11/Cmaj11/Cm11)の構成音を一つずつ鍵盤で鳴らして、3度と11度の干渉を体感する。
  • ピアノでは3度を省いたフォームと3度を含むフォームを交互に弾き、対照を覚える。
  • 即興ではスケール(Mixolydian/Lydian dominant/Dorianなど)を明確に決め、テンションを一貫させる。
  • ギターはサスペンド系のフォームで11thの色を取り入れ、必要に応じて3度を指で省略する練習をする。

まとめ:実践での判断基準

11thコードは豊かな色彩を持つ反面、取り扱いに注意が必要なテンションを含みます。実務上は以下を基準に使い分けるとよいでしょう。まず「機能(ドミナント/メジャー/マイナー)」を見定め、次に「3度と11度の同時鳴りが望ましいか」を判断します。衝突が嫌なら3度を省略、明確なモード感がほしければ#11や適切なスケールを選びます。これらの原則を押さえれば、11thは非常に表現力豊かなツールになります。

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参考文献