第二転回(6/4)徹底解説:機能・表記・声部進行と楽曲での使い方
第二転回とは何か:定義と表記
第二転回(だいにてんかい)は、三和音の転回形の一つで、五度の音が最低音(ベース)に来る形を指します。例えばハ長調のC(C–E–G)を第二転回するとG–C–Eの並びになり、通例フィギュアド・ベースでは「6/4」と表記されます。これはベースから見た上の声部との距離がそれぞれ四度と六度であることを示しています。
理論的性質:安定性と機能
第二転回は和声的に不安定な形とされ、単独で強拍に置かれることは避けられるのが通例です。古典的な和声論では、第二転回の三和音自体は継続音や経過和音、装飾的役割を果たすと考えられ、機能和声上はしばしば根音形(ルート)和音の一種の装飾や、属和音への準備(cadential)として働きます。
6/4(シックス・フォー)としての分類と代表的用法
第二転回の三和音は英語で "six-four chord" と呼ばれ、用法によっていくつかの典型的なタイプに分類されます。主なものは以下の通りです。
- カデンシャル6/4(Cadential 6/4):属和音へ進行する前に、トニック(I)を第二転回の形で一時的に置き、上声で装飾的な動きを行わせるもの。機能的には属七以降の進行を強調し、実質的にはVへの導きとして扱われます。
- 通過(パッシング)6/4(Passing 6/4):隣接する和音間の連結として、ベースや上声が段階的に動く際に現れる6/4。例えばルート位置→第二転回→ルート位置という進行で、ベースが上行または下行する短い経過を表します。
- ペダル6/4(Pedal 6/4):低音が保持されたまま上声が動く場合に生じる6/4。低音に対して上声が和声的に変化していくため、安定した低音(ペダル)に対する変化音としての機能を持ちます。
- アルペジエイト6/4(Arpeggiated 6/4):和音の分散形やアルペジオ的な扱いの結果として現れる6/4。和音全体が分割される際に中間的に現れることがあります。
フィギュアド・ベースと和声分析上の表記
通例の通り、第二転回はローマ数字分析で「I6/4」「V6/4」などと表記されます。ただし、カデンシャル6/4のように機能が属の延長である場合、分析者はそれをI6/4として扱うか、装飾的なI→V進行として表記するかで解釈が分かれることがあります。分析では文脈(前後の進行、和声の機能、上声の動き)を重視する必要があります。
声部進行と倍音(ダブリング)の実務的注意点
第二転回を扱う際の声部書法上の留意点は、以下のような点です。
- 強拍での使用は注意:第二転回は不安定なので、強拍(小節頭など)に置くときはカデンシャル6/4やペダル6/4など特定の機能が明確であるべきです。特に第1拍にI6/4を置いて単独で終了すると、不自然な印象を与える場合があります。
- 倍音の選択:第二転回ではベースが五度になるため、どの声を倍にするかで和声の印象が変わります。一般的にはベース(五度)を倍音するか、成立している音(根音または三度)を適宜重ねますが、導音(主音の半音下)を二重にすることは避けます。カデンシャル6/4では根音(トニック)を doubling して上声で進行させることが多いです。
- 進行の解決:多くの6/4は次にVやV6/5、V4/2といった進行に向かって解決します。上声はしばしば内声で下行するか、属和音の構成音に向かって解決する動きをします。
具体的な声部進行の例(一般化)
例えばC durでのカデンシャル6/4の場合、テノールとソプラノがC→B→Gのように動き、低音G(ベース)を維持してI6/4の形を作り、その直後にV(G–B–D)へと移行します。これによりI6/4は実質的にVへの装飾となり、強いドミナント機能を生み出します。
歴史的な展開:バロックから現代まで
バロック期の通奏低音の伝統では6/4表記が頻繁に現れ、作曲家たちはペダルや通過的な用途として活用しました。古典派ではカデンシャル6/4が明瞭に用いられ、作曲技法の一部として確立されます。ロマン派以降は和声言語の拡張に伴い6/4の扱いも多様化し、印象的な色彩として利用されることが増えました。20世紀以降の和声では機能和声論から離れた用法も見られますが、6/4的な配置は対位法的・テクスチャ的な効果として有効に使われています。
分析上のよくある誤解と注意点
いくつかの誤解に注意が必要です。第一に「6/4=特別な和音」であると単純化すること。多くの場合6/4は単にある和音形態の一局面であり、その機能は文脈依存です。第二に、カデンシャル6/4を誤って独立したトニックの安定形として扱うこと。実際にはVへの装飾的準備であり、独立した終止形として扱うのは誤りです。第三に倍音の取り扱いを無視すること。特に和声の機能を明確にするための倍音選択(導音の二重化禁止など)は分析と作曲の両面で重要です。
実践:作曲・編曲での使い方とチェックリスト
作曲や編曲で6/4(第二転回)を用いる際の実用的なチェックリストを示します。
- 用途を明確にする(カデンシャル、パッシング、ペダル、アルペジオのどれか)
- 強拍に置く場合は機能が明瞭か確認する(特に終止形ではないこと)
- 倍音に注意し、導音を二重にしない
- 上声の解決方向(主にVへ向かうのか、周辺和音へ通過するのか)を設計する
- 対位法的な干渉(隣接5度や8度の移動)をチェックする
楽曲例と学習のヒント
具体的な学習法としては、バッハの通奏低音や古典派のカデンシャル進行を多く聴き、楽譜で上声の解決や倍音の扱いを確認することが有効です。Imslpなどでコラールや古典派のソナタ形式の楽譜を参照し、I6/4→Vの部分を追いかけると実用的な理解が深まります。
まとめ:第二転回(6/4)の本質
第二転回は単なる三和音の形の一つに過ぎませんが、その機能は多彩で、文脈次第で和声を巧みに装飾したり、進行を円滑にしたり、テクスチュアルな効果を与えたりします。分析と実作業の双方で「なぜそこに6/4があるのか」を問い続けることが、理解と応用の近道です。
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参考文献
- Inversion (music) — Wikipedia
- Six-four chord — Wikipedia
- Figured bass — Wikipedia
- Chord | musical concept — Encyclopaedia Britannica
- IMSLP / Petrucci Music Library — 楽譜アーカイブ(バッハ等の楽譜参照に便利)
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