和音分析を深掘りする:機能、表記、実践的手法と応用

和音分析とは何か — 目的と基本概念

和音分析は、楽曲の和声構造を明確にし、和音の機能(トニック、ドミナント、プレドミナントなど)、進行、転回、増減音の扱い、装飾的な音の役割を理解するための手法です。単にコード名を当てるだけでなく、和声進行の機能論的意味や編曲・作曲・演奏時の解釈につなげることが重要です。

基本用語と表記法

  • ローマ数字表記:主にクラシックの和声分析で用いられ、I, II, III, IV, V, VI, VII を用いて調内和音を示します。大文字は長三和音、小文字は短三和音を示します。短調の和音は調性に応じて変化します。

  • 機能:トニック(T)、プレドミナント(PD)、ドミナント(D)という三機能分析は、和声の目的と緊張解決の流れを示します。例:II(または ii)→ V → I は PD→D→T の流れです。

  • 転回と間隔表記:クラシック分析では 6(第一転回)や 6/4(第二転回)などの数字で表記します。バスの音に注目し、ベース音が和音構成音の何番目かを示します。

  • コードネーム:ポピュラーやジャズでは Cmaj7, Dm7, G7 など拡張和音を中心に表記します。ジャズではテンション(9, 11, 13)の扱いが重要です。

基本的な分析手順

  1. 調性の判定:調号・終止感・スケール音と主要和音の頻度から調を特定します。

  2. 和音の識別:各小節ごと、または和音の変化点ごとに三和音や四和音を判定します。旋律と伴奏の関係を確認して分数コードや代理和音を見逃さないようにします。

  3. 機能付与:和音が楽曲内でどのような機能を果たすかを判断します。前後関係を重視し、ドミナントへの導入やトニックへの解決を見ます。

  4. 特殊和音の扱い:借用和音、二次ドミナント、ネアポリタン、増六和音などはその発音目的と機能を明確にします。

よく出る和声的テクニックと分析のコツ

二次ドミナントと二次機能

二次ドミナントは V/V のように、他の和音を一時的にドミナントとして扱うものです。例:キーが C の場合、D7 は G(V)に対する二次ドミナントです。二次機能を見分けるには、その和音がどの和音へ向かって解決しているかを確認します。

借用和音とモーダルインターチェンジ

平行調や同主短調から借りる和音(例:C メジャーにおける bVI や bIII)は色彩的な効果を与えます。機能的にはトニックの強化やプレドミナント的な色合いを持つことが多く、文脈で判断します。

ネアポリタンと増六和音

ネアポリタンは bII の6度転回形(通常 bII6)で、強いプレドミナント的機能を持ちます。増六和音(It+6, Fr+6, Ger+6)はドミナントへの導音的機能を果たし、異なる声部解決を持つため分析では区別して表記します。

オルタードと代理和音

トライトーン置換(tritone substitution)はジャズで頻出の手法で、例えば V7 を bII7 に置き換えて滑らかなベース進行やクロマチックな移動を作ります。代理和音は機能的に同じ役割を果たすが別の和音が使われている場合を指します(例:iii が I の代用になる場合など)。

声部進行とボイスリーディング

和音分析では、和音がなぜ機能するかを理解するために声部進行の観察が不可欠です。特に導音の半音上行や、根音から第3度・第7度への解決はトニックとドミナントを決定づけます。パラレル・フィフスやオクターブの禁止はクラシック的な制約ですが、現代の作曲では意図的に破ることもあります。分析では実際の声部動きを記述することで和音の役割を明確にできます。

ジャズ・ポピュラー音楽の和音分析の相違点

ジャズ分析では機能に加え「スケール」や「テンション」の観点が重要です。ii–V–I の進行は最も基本的で、各和音に対して使えるスケール(ドリアン、ミクソリディアン、メジャースケール等)を想定します。テンション(9, 11, 13)は和音のカラーを示し、コードシンボルで明記されることが多いです。さらにモーダルアプローチやモードの長期保持による静的なハーモニーも分析対象になります。

モーダル音楽と非機能和声

モード中心の作品や20世紀以降の非機能和声では、機能的な緊張解決は必ずしも存在しません。代わりにテクスチャ、色彩、音色の長期的な配置が意味を持ちます。分析は和音の関係性、持続音や集合音程のパターンに焦点を合わせます。

実践例:短いフレーズの分析(Cメジャー)

例:C | Em | Am | D7 | G | G7 | C

  • C は I(T)

  • Em は iii(T の代理として機能)

  • Am は vi(T に近い)

  • D7 は V/V(二次ドミナント、D 機能)

  • G は V(D)、G7 は V7(ドミナント強化)

  • C で解決(T)

このように、和音の連鎖と解決先を辿ることで機能構造が見えてきます。

よくある誤りと注意点

  • 単にコードネームを当てるだけで機能を誤認することがあります。前後関係を必ず見ること。

  • 旋律音が和音外音でも和音の機能を変えないことがあるため、和音構成と旋律の区別をすること。

  • モードや借用和音は調号だけでは判定できないことが多く、楽曲全体の色調を観察する必要があります。

分析を深める実践的アプローチ

  • ピアノでバスラインと内声を弾き分け、声部ごとの動きを可視化する。

  • 楽曲を小節ごとに分け、和声的機能を書き出す(ローマ数字+機能記号)。

  • 転調箇所は、調の確定指標(終止、主要和音の出現頻度、旋律の中心)を基に断定する。

  • 耳の訓練:テンションや代理和音を聞き分けるために短い進行を繰り返し聴き、コードトーンとテンションを同定する。

ツールとリソース

楽譜作成ソフト(Sibelius、Finale、Dorico)、DAW のハーモニクス解析プラグイン、インタラクティブな理論サイト(例:teoria)や教科書が有用です。ジャズ寄りの分析にはチャート記譜ソフトやMIDIトラックを分解して和音の構成音を確認する方法が便利です。

教育的利用と作曲への応用

和音分析は教育での理論習得だけでなく、作曲やアレンジにおける素材発見に役立ちます。既存の名曲を分析して和声語法を抽出し、それを基に独自の進行や色彩を作ることができます。また、分析を通して導出した代理和音や借用和音は、新しい和声展開のアイディアを生みます。

まとめ:分析は“答え”ではなく“解釈”

和音分析は楽曲の一側面を明らかにする強力な道具です。しかし、特に近現代音楽やポピュラー音楽では複数の解釈があり得ます。重要なのは、分析が楽曲の意味解釈や演奏の意図に結びつくことです。前後関係、声部動機、形式的役割を常に意識して分析を行ってください。

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参考文献