PSI Audioの真価 — プロが選ぶスイス製アクティブ・スタジオモニターの技術と実践ガイド
概要:PSI Audioとは何か
PSI Audioはスイスを拠点とするプロフェッショナル向けラウドスピーカーメーカーで、特にアクティブ(パワード)スタジオモニター設計に強みを持つブランドとして知られています。創業以来、測定とリスニング双方を重視した設計手法を採り、レコーディング/ミックス/マスタリングの現場で高い評価を得てきました。本稿では、PSI Audioの技術的特徴、製品構成、実務での使い方、設置・キャリブレーションのポイント、そしてプロの現場での活用例までを詳しく掘り下げます。
技術と設計思想
PSIの設計思想は「正確さ(accuracy)」と「透明性(transparency)」にあり、以下の要素がその核を成しています。
- アクティブ設計:多くのモデルがアンプを内蔵したアクティブ(パワード)構成を採用しており、ドライバーごとに最適化された増幅とクロスオーバー設計により、能率やダイナミクスの最適化を図っています。
- 位相・クロスオーバー最適化:物理設計と電子回路(およびデジタル処理)を合わせて位相整合や遷移帯域の最適化を行い、周波数レスポンスだけでなく時間軸(位相・群遅延)にも配慮しています。
- 同軸(コアキシャル)やポイントソース設計の採用:一部モデルでは同軸配置やポイントソースに近い設計を用い、リスニング位置での位相差を低減し、ステレオイメージの精度を高めています(モデルによる)。
- 測定重視のチューニング:製品は測定データに基づいてチューニングされ、周波数特性のフラット化だけでなく実用的なスムーズさを両立させることを目指しています。
代表的なモデル群と用途
PSIはニアフィールドからミドルフィールド、さらにはメイン・モニターまで幅広い用途に対応するラインナップを持ちます。具体的なモデル名や仕様は年次で更新されるためここではカテゴリ別の用途と選び方に焦点を当てます。
- ニアフィールド/デスクトップ向け:小〜中型のアクティブモニターは、近接でのミキシングやプリプロダクションに適します。応答性が高く、デスクトップリスニングでの定位精度に優れます。
- ミドルフィールド/コントロールルーム向け:中〜大型のモデルはラージスケールのダイナミクスや低域の判断が必要なミキシング/マスタリングに適しており、サブウーファーとの組み合わせが想定された設計が多いです。
- メイン/イージング向け:大きめのパワフルなモデルは、サラウンドやポストプロダクションのメインモニターとして採用されることがあります。均一なカバレッジと高SPLでの信頼性が重要視されます。
音質の特徴と評価のポイント
PSIのモニターに共通する音質的傾向は「ニュートラルで情報量が豊富」、さらに「位相再現とステレオイメージの精度が高い」点です。以下は現場で注目すべき評価ポイントです。
- 周波数レンジのバランス:低域〜高域までの過剰な強調がなく、ミックスの判断に必要なエネルギー分布を自然に提示します。
- トランジェントの再現:アタックの情報が明確に出るため、打楽器やアナログ機器の解像感を判定しやすいです。
- ステレオイメージ:中心像の定位精度が高く、パンニングや逆位相のチェックに有利です。これによりミックスの空間情報の把握がしやすくなります。
- 低域のコントロール:十分な低域量を確保しつつ、ぶれない基準を提示する設計が施されており、サブウーファーとの連携も考慮されています。
ルーム補正とキャリブレーション
どんなに優れたモニターでも、設置環境(部屋)の影響を受けます。PSIのシステムは測定と補正を前提に設計されているため、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 設置位置:リスニングポイントを三角形に配置し、近接壁反射を避ける。スピーカーのトーイン(角度)で高域のフォーカスを調整する。
- 低域処理:低域モードやサブウーファーのカットオフ調整を用いて、ルームモードによるピーク/ディップを緩和する。吸音/拡散材を低域以外にも適切に配置する。
- 測定機器の活用:測定用マイクとソフトウェアを使って周波数特性と位相特性を取得する。必要に応じてEQやDSPで補正を行う(PSIの一部製品や外部プロセッサを併用)。
- リスニング習慣:補正後も複数の参照音源で確認し、長時間のリスニングで耳が慣れるまで定期的にチェックする。
設置・運用上の実務的なアドバイス
プロの現場でPSIモニターを最大限に生かすための現場的なTipsをまとめます。
- 電源とグラウンド:プロ機器と同じく安定した電源供給が必要。電源ノイズがリスニングに影響を与える場合は電源処理を検討する。
- ケーブルとゲイン構成:入力レベルの一致を保ち、クリッピングや不要なパッドを避ける。トランスデューサの入力感度を機器間で最適化する。
- 保守と点検:アンプ部や冷却系(通気孔)のクリーニング、接続端子の確認を定期的に行う。前面/背面パネルのスイッチ類の位置を記録し、意図しない変更を避ける。
- ドライバーやエンクロージャーの取扱い:ドライバーの物理的ダメージを避ける。輸送時はしっかりと保護する。
プロの現場での活用例
PSIモニターは世界中のレコーディング/マスタリング/ポストプロダクションスタジオで採用されています。採用理由としては、長時間作業に耐える中立的な提示、再現性の高い低域制御、そして複数リスニングポジションでの安定性が挙げられます。
- マスタリングスタジオ:最終段での微細なイコライジングやダイナミクス処理の判断に適しているため、マスターエンジニアに好まれます。
- 音響ポストプロダクション:ダイアログや効果音の定位・整合性の確認、ラウドネス基準との整合で信頼されます。
- レコーディング/ミックス:トラック単位のディテール確認やミックスの総体バランス把握において、一貫した基準を提供します。
導入時の比較検討ポイント
他ブランドと比較検討する際には、以下をチェックリストとして活用してください。
- 用途(ニアフィールド/ミッドフィールド/メイン)に対する物理サイズとSPL能力。
- アクティブ設計か(内蔵アンプの数・出力割り当て)と将来の拡張性(サブウーファーやルーム補正の互換性)。
- 試聴時に複数ジャンルの音源でバランス感とトランジェントの判断ができるか。
- 設置環境における測定とキャリブレーションのしやすさ。
まとめ:PSI Audioを選ぶ理由
PSI Audioは、測定に裏打ちされた設計と実用的な音質を両立することで、プロの現場からの信頼を獲得してきたブランドです。特にアクティブ構成、ドライバーとクロスオーバーの最適化、ルーム対応の柔軟性は、正確な判断基準を求めるエンジニアにとって大きな価値となります。導入にあたっては設置環境の整備と測定に基づくキャリブレーションを行うことで、PSIのポテンシャルを最大限に引き出せます。
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