キヤノン RF 24-105mm F4 L IS USM 徹底レビューと活用ガイド:描写・AF・手ブレ補正から運用テクニックまで

はじめに:RFマウント時代の万能標準ズーム

キヤノンのRF 24-105mm F4 L IS USM(以下、RF 24-105mm F4L)は、EOS Rシリーズの登場とともにラインナップされた“常用標準ズーム”の代表格です。焦点距離24–105mmの汎用性、一定のF4という明るさ、そしてLシリーズにふさわしい堅牢な作りと光学性能を兼ね備え、スチルから動画まで幅広く使えるレンズとして多くのユーザーに支持されています。本稿では、スペックの説明にとどまらず設計思想、描写傾向、AFや手ブレ補正の挙動、実戦的な使い方・弱点対策まで詳しく掘り下げます。

基本スペックと外観

  • 焦点距離:24–105mm(フルサイズ)
  • 最小絞り:F22
  • 絞り羽根:9枚(円形絞り)
  • マウント:RF
  • 手ブレ補正:光学IS(CIPA基準で最大約5段分の補正)
  • 最短撮影距離:約0.45m(広角側)/最大撮影倍率 約0.24倍
  • フィルター径:77mm
  • 防塵・防滴構造、フッ素コーティングを施した前玉
  • 駆動モーター:Nano USM(静かで滑らかな駆動)
  • サイズと重量:携帯性を重視した設計(おおよそ700g前後)

(数値はメーカー公表値に基づく仕様。詳細は後述の参考文献を参照してください。)

光学設計と画質の特徴

RF 24-105mm F4Lは、RFマウントの短いフランジバックを生かした光学設計がなされており、同クラスのEFマウント版と比較して収差補正や近接性能で有利になっています。非点収差や倍率色収差の低減に配慮されたレンズ構成により、中心解像は開放付近から高く、中望遠域でのシャープネスも良好です。

広角端(24mm)では周辺光量落ちや歪曲収差が一定程度見られますが、EOS Rカメラの内蔵プロファイル補正(レンズプロファイル)を適用することで細かな補正が可能です。被写体の輪郭を損なわずに滑らかにボケを作る傾向があり、F4という明るさを考慮するととてもバランスが良い描写を示します。

色収差・コントラスト・逆光耐性

UD(特殊低分散)レンズや特殊コーティングの採用により、軸上色収差は抑制されています。高コントラストな場面でも輪郭の分離が良く、ハイライトの滲みも適切にコントロールされるため、逆光やコントラスト差の大きいシーンでも扱いやすいのが特徴です。もちろん厳しい条件では僅かなゴーストやフレアが発生することがありますが、フッ素コーティングやレンズコーティング設計により抑えられています。

AF性能と動画での挙動

AF駆動にはNano USMを採用しており、静粛性とスピード、滑らかさを高い次元で両立しています。スチル撮影では位相差AFと協調し、被写体追従も信頼できる駆動を示します。動画撮影においては、フォーカスの移動が滑らかで急激な群発音も少ないため、クリップ内での微妙なピント移動や追従撮影に向いています。

ただしAFの挙動はボディ側のAFアルゴリズムや測距点設定、追尾設定に依存します。動きの速い被写体や暗所での追従能力はボディ性能の影響を受けるため、EOS Rシリーズの上位機と組み合わせるほど効果を発揮します。

手ブレ補正(IS)の実用性

内蔵の光学ISはCIPA基準で約5段分の補正性能を謳っており、暗所や望遠側での低速シャッターでも手持ち撮影がしやすくなっています。さらに、ボディ内手ブレ補正(IBIS)を備えたEOS Rシリーズと組み合わせることで、協調制御(Dual Sensing IS/Coordinated IS)によりより高い補正効果が得られます。これにより、薄暗い室内や夕景の手持ち撮影、長めの焦点距離での低速シャッター撮影が現実的になります。

操作性・筐体・耐候性

Lシリーズらしい剛性感のある金属外装を持ち、マウント周辺はシーリングされ防塵・防滴構造が施されています。前玉にはフッ素コーティングが施され、雨滴や指紋の付着による影響を軽減します。ズームリングやフォーカスリングの操作フィールは滑らかで、写真撮影はもちろん動画操作でも違和感が少ない設計です。

一方で、ズーム全域にわたって物理的に鏡筒が伸びるタイプなので保管時や移動時の保護は必要です。フードやレンズキャップを適切に使うことで、外的損傷を避けられます。

実戦的な使い方と撮影テクニック

  • 旅行・スナップ:24mmのワイド側で風景や街並みを切り取り、70–105mmでポートレートやディテール撮影に切り替える。1本で被写体の大半をカバーできるので機材を最小限にしたい旅に最適。
  • ポートレート:F4でも被写体を背景から分離できる。中望遠寄り(70–105mm)での圧縮効果を利用すると滑らかな背景ボケが得られる。
  • 動画撮影:Nano USMによる滑らかなフォーカス移動、ISによる手持ち撮影の安定性が強み。フォーカスセレクトやAF速度の設定はボディ側で調整し、意図したフォーカシングに合わせる。
  • 花マクロ的利用:最短撮影距離が比較的短く、最大倍率も高めなので、従来の標準ズーム以上に近接撮影の幅が広い。

比較:EF版や他社ズームとの違い

同じ24–105mm F4という枠でEFマウントの旧モデル(EF 24-105mm F4L IS II など)と比較すると、RF版はマウント設計の自由度を活用して光学性能・サイズバランスで有利な点が多いです。具体的には、近接撮影時の描写や周辺画質の改善、AFの静粛性と動画向けの挙動などが差別化要因です。しかし、より明るいF2.8通しの24–70/24–105と比べるとボケ量や低照度性能は劣るため、用途に応じた選択が必要です。

弱点と対策

  • ボケ量の制限:F4は背景を大きくボカしたい場合に不利。ポートレート重視なら大口径単焦点やF2.8通しズームを併用する。
  • 歪曲・周辺光量落ち:広角端では若干の歪曲と周辺落ちが出るため、風景や建築撮影ではRAW現像やカメラ内補正を利用する。
  • 重量と伸長:ズーム全域で伸びる設計のため収納時に注意。トラベルポーチや専用ケースで保護する。

どのユーザーに向くか

RF 24-105mm F4Lは「1本で撮影の8割を賄いたい」ユーザーに最適です。旅行写真家、イベントカメラマン、普段使いのスナップ、及びビデオ撮影を行うハイブリッドユーザーに向いています。一方で、極端に浅い被写界深度を求めるポートレート専門家や、暗所でのスピード撮影を重視するスポーツ写真家には他の明るいレンズが適する場合があります。

メンテナンスとアクセサリー

フィルター径は77mmで市販フィルターが揃いやすい点が便利です。屋外での使用が多いならプロテクターとレンズフードの併用を推奨します。防塵・防滴設計はされていますが、長期の屋外使用後は接点や鏡筒の埃の除去、前玉のフッ素コーティングの点検を行うと安心です。

総評

RF 24-105mm F4 L IS USMは、RFシステムの恩恵を受けた高い実用性と信頼できる光学性能を両立する「汎用の名刀」です。特に旅行や日常撮影、動画ワークまで一本でカバーしたいユーザーには強く勧められます。欠点らしい欠点は目立ちませんが、もっと大きなボケや極端な暗所性能を欲する場合は用途に応じた別レンズの併用がベターです。

参考文献