キヤノン RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STM 徹底レビュー:APS-C標準ズームの実力と使いこなしガイド
はじめに:RF-S 18-45mm の位置づけ
キヤノンのRFマウントAPS-C向けレンズ、RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STMは、軽量でコンパクトな標準ズームとしてエントリーユーザーやスナップ、動画撮影を考えるユーザーに向けて設計されています。焦点距離レンジは18–45mmで、APS-C機ではおよそ35mm判換算で29–72mmに相当し、広角から標準域まで日常的に使いやすい範囲をカバーします。
主な特徴(概要)
- マウント:Canon RF-S(APS-C用)
- 焦点距離:18–45mm(APS-C) — 標準〜広角寄りの汎用ズーム
- 開放絞り:F4.5–6.3(ズーム全域でコンパクト化優先の設計)
- 手ブレ補正:IS搭載(カメラボディとの協調で実用的な補正効果)
- AF駆動:STM(ステッピングモーター)による静粛で滑らかなAF(動画に有利)
- 設計思想:携帯性とコストパフォーマンスを重視したエントリーから中級者向け
光学性能の実際 — 解像・収差・歪み
このレンズは小型化と軽量化を最優先にした設計で、センターの解像力は日常撮影で十分満足できるレベルです。広角端18mm付近での周辺減光や画面周辺の解像力低下は見られますが、JPEG撮影時はカメラ内補正(レンズプロファイル補正)でかなり軽減されます。RAW現像時にもプロファイル補正を適用すれば実用上の問題は少ないでしょう。
色収差(縁取り)やフリンジは設計段階で抑えられており、極端な逆光条件を除けば簡単な補正で十分対応可能です。広角側での樽型歪曲は若干ありますが、こちらもプロファイル補正で改善されます。ボケ味は開放のF値が暗めであるため大きな背景ボケを狙うレンズではありませんが、描写は自然で扱いやすい傾向です。
AF性能と動画での使い勝手
STM駆動の特長である静かで滑らかなピント合わせは、動画撮影時に特にメリットが出ます。コントラストが低い被写体や暗所ではAFがやや迷うこともありますが、同クラスのキットズームとしては十分に実用的です。手ブレ補正(IS)は動画においても有効で、手持ち撮影の安定性を高めます。ボディ内手ブレ補正(IBIS)搭載機と組み合わせることでさらに効果的です。
作例傾向と実用的な撮影テクニック
このレンズの得意分野は旅行スナップ、スナップポートレート、日常の記録撮影です。使い方のポイントを挙げます。
- 広角18mm:風景や室内、狭い場所での撮影に有効。中心は鋭く、パースを活かした構図作りがしやすい。
- 中域(24〜35mm相当):人物と背景をバランスよく入れるスナップに最適。
- 望遠寄り(45mm相当):背景をやや圧縮して落ち着いた構図に。開放F値が暗めなので背景ボケは大きくないが、被写体に近づくことで表現できる。
- 低照度:ISを有効にしてシャッター速度を稼ぐ。高感度ノイズとのバランスを検討すること。
- 動画:AF駆動音が小さいため外部マイク使用時でも気になりにくい。スムーズなズーミングはできないため(電動ズーム非対応)、ズームは慎重に行うか、事前に構図を決めておくとよい。
ボディとの相性と互換性
RF-S設計のため、主にEOS RシリーズのAPS-Cモデル(例:EOS R7、R10、R50など)との組み合わせを想定しています。フルサイズ用のRFボディに装着すると物理的には使用可能であっても画面周辺のケラレや解像低下が生じるため、カメラ側でAPS-Cクロップモードに自動切替される点に注意してください。
ライバル比較と選び方
同クラスの標準ズームとしては、従来のEF/EF-Sマウントの18-55mm系キットズームや、RF-S 18-150mmのような高倍率ズームなどが比較対象になります。本レンズは極力小型軽量に振っているため、画質の絶対値だけを重視するユーザーよりも「機動力」「携帯性」「動画との親和性」を重視するユーザーに向きます。
選び方の目安:
- 携帯性最優先:RF-S 18-45mmが有力。
- 幅広い焦点域を一本でカバーしたい:RF-S 18-150mmなど高倍率を検討。
- ボケ味や明るさを優先:単焦点(例:35mmや22mmのF1.8など)を追加検討。
アクセサリーと運用上の注意
- レンズフード:付属している場合もあるが、未付属なら保護とコントラスト維持のために用意する。
- プロテクター(UV)フィルター:前玉保護を目的に装着するユーザーが多い。
- 携帯ケース:軽量化の恩恵を受けるため、小型のポーチが便利。
- メンテナンス:小型レンズでも前玉への指紋やホコリ対策は重要。ブロワーやマイクロファイバー布を常備する。
価格・コストパフォーマンス
このレンズはキットレンズやサブレンズとしての位置づけで、価格は比較的手頃に設定されています。新しいRFシステムにおける入門〜日常使いの一本として、携帯性と機能のバランスを考えるとコストパフォーマンスは高いと言えます。とはいえ、明るさ(開放F値)や望遠側の到達距離を重要視する人は、別途レンズを検討する必要があります。
総評:誰に向くか、どんな時に買うべきか
RF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STMは、以下のようなユーザーに特に向いています。
- 軽量で気軽に持ち出せるレンズを求める旅行・散歩スナップ派。
- APS-Cミラーレスで動画も撮りたいけれどレンズを複数持ち歩きたくない人。
- 初めてRFシステムに入るユーザーで、まずは手軽に写りを体験したい人。
反対に、暗所での大口径を必要とする撮影や大きなボケ味を重視する表現、遠距離を多用する撮影には適していません。その場合は、明るい単焦点やより長いズームの併用を検討してください。
まとめ
コンパクトさと使いやすさを重視したRF-S 18-45mm F4.5-6.3 IS STMは、APS-C RFユーザーにとって日常使いの一本として魅力があります。光学性能はこのクラスとして十分であり、手ブレ補正と静かなAFは特に動画用途で有利です。欠点を挙げれば開放F値が暗めで背景ボケに制約がある点ですが、携帯性と価格を勘案すれば納得できるトレードオフと言えるでしょう。
参考文献
- Canon Global (公式サイト)
- DPReview (製品レビューと発表記事)
- Imaging Resource (実写レビュー)
- Canon Support (製品仕様・サポート情報)
- Canon Japan (日本国内向け情報)


