初心者のためのおすすめテクノ名盤10選:歴史とサウンドを旅する

テクノは1970~80年代にデトロイトやヨーロッパで誕生し、機械的なリズムマシンとシンセサイザーが織りなす革新的なサウンドが魅力です。初心者の方向けに、歴史的意義が高く、聴きやすいリズム構成とメロディックな要素を併せ持つ名盤を選びました。以下では、テクノの入門編として最適な10枚をピックアップしています。

1. Cybotron – Enter (1983)

Juan AtkinsとRick Davisがデトロイトで結成したCybotronのデビュー作。コズミックファンクとマシーンビートを融合し、重厚なシンセベースと規則的なリズムでコズミックな空間を演出。イントロ曲“Alleys of Your Mind”は、初心者でもテクノの基礎を直感的に感じられる一曲です。

リリース当時から高い評価を受け、1990年には『Clear』として再発され、2013年にはボーナストラックを追加したオリジナルタイトルで再発も行われています。現在ではデトロイト・テクノの起点とされる重要作として評価されています。

2. Various Artists – Techno! The New Dance Sound of Detroit (1988)

Virgin傘下のコンピレーションで、Belleville Three(Atkins、Saunderson、May)をはじめとする12曲を収録。デトロイト・テクノという名称を世界に知らしめた歴史的アルバムで、“Sharevari”など初期テクノのエネルギーを堪能できます。

本作はデトロイト出身のアーティスト12組による楽曲を収録し、コンパイルはDerrick MayとNeil Rushtonが担当しました。商業的には当初期待ほど売り上げを伸ばせなかったものの、Inner Cityの「Big Fun」がクロスオーバーヒットとなり、欧州市場でテクノ・ムーブメントを加速させるきっかけとなりました。

3. Jeff Mills – Waveform Transmission Vol. 1 (1992)

TresorレーベルからリリースされたJeff Mills初のソロLP。金属的なハイハットとミニマルなベースラインが展開するタイトル曲“Waveform Transmission”は、家庭でもクラブでも楽しめる先鋭的サウンドの代表格です。収録された全8トラック(「Phase 4」「Berlin」「Jerical」「Changes of Life」「The Hacker」「DNA」「Late Night」「Man-Like」)は、反復的かつミニマルなループ感でモダン・テクノの礎を築き、後続のプロデューサーに多大な影響を与えました。

この作品は、当時MillsがベルリンのTresorクラブと深い関係を築くきっかけとなり、彼のソロとしての新たな美学を確立する重要な突破口とも評されています。さらに、このアルバムはMillsによるWaveform Transmissionシリーズの第1弾にあたり、2012年には自身のAxis Recordsレーベルからリマスター版が再発されています。

4. Michael Mayer – Immer (2002)

Kompaktレーベルの人気ミックスシリーズからMichael Mayerが手がけたミックスアルバム。
全13トラック、トータル71分31秒におよぶ本作は、ミニマルテクノやマイクロハウスの最前線を走るアーティストたちの楽曲をMichael Mayer自身が厳選・ミックスした、ジャンルの金字塔とも言える一枚です。

リリース後、Pitchforkの「2000年代ベストアルバム200選」で116位に選出されたほか、Resident Advisorの「’00年代ベスト・ミックスCD」では堂々の1位を獲得し、Rolling Stoneの「30 Greatest EDM Albums」でも18位にランクインするなど、批評家から絶賛を受けました。

5. Ricardo Villalobos – Alcachofa (2003)

PlayhouseレーベルからリリースされたVillalobosのファーストアルバム。14分を超えるタイトル曲“Alcachofa”は、緻密なパーカッションワークと微細なシンセループによる複雑かつ官能的なグルーヴが特徴です。

「I Try to Live (Can I Live)」では抑制されたメロディと緻密な音響構築が光り、従来のテックハウスとは一線を画す芸術性を示しました。 AllMusicは「機械を完全にコントロールし、人が想像しない奇妙な音を引き出している」と称賛しています。

Resident Advisorでは2000年代のトップ100アルバム中第1位に選出されるなど、その後のミニマルシーンに大きな影響を与えました。New York誌も2003年のトップアルバム第6位にランクインしています。

6. LFO – Frequencies (1991)

イギリスのエレクトロニック・デュオLFOのデビュー・スタジオ・アルバムで、収録曲はテクノ、ブリープ・テクノ、アシッド・ハウス、IDMなどを横断しつつ、低域の強烈なベースと斬新なサンプリングが特徴です。UKアルバムチャートでは最高42位を記録し、その後も「音楽を変えた50枚」や「1990年代ベストアルバム100」など数々のリストに選出され、エレクトロニック・ダンス・ミュージック史における金字塔とされています。

80年代後半から90年代初頭にかけて北イングランドで隆盛したブリープ・テクノ・シーンにおいて、LFOは最重要のアーティストの一つとされ、その影響は現在のエレクトロニック・ミュージックにも及んでいます。

7. The Future Sound of London – Accelerator (1992)

UKテクノシーンを代表する作品。ドリーミーなシンセレイヤーと歪んだビートが絡み合い、アンビエントとテクノの中間を行くサウンドスケープを楽しめます。アルバムには代表曲「Papua New Guinea」を含む全10トラックが収録されており、後にリミックスやボーナス・トラックを追加した再発も行われています。

1992年末、英国音楽誌Melody Makerの年間ベスト・アルバムで21位にランクインし、シングル「Papua New Guinea」も年間ベスト・シングルに選出されました。

8. Anthony Naples – Fog FM (2019)

アンビエントとダブテクノ/ハウスを織り交ぜた現行シーンの代表作です。温かみあるシンセパッドと緻密なビートが融合する“Afternoon Flirt”など、人肌の温度を感じるダンスミュージックを収録。

今作ではダブ・ハウス的な浮遊感と、ビート指向のテクノが交錯するサウンドスケープを展開しています。特にタイトル曲「Fog FM」はShinichi Atobeを想起させるようなドリーミーなダブ・ハウス、続く「Purple Iris」では引き締まったテクノのビートが印象的です。終盤の「I’ll Follow You」や「Aftermath AM」ではアンビエント的な余韻が深まり、アルバム全体に一貫した霧のような質感を与えています。

『Fog FM』はAnthony Naplesのクリエイティヴィティとダンスミュージックへの深化を示す傑作であり、コアなテクノ/ハウスファンはもちろん、広くエレクトロニック・ミュージック愛好者にも推薦できる一枚です。

9. Jeff Mills – Live at the Liquid Room, Tokyo (1996)

日本のLiquidroomで行われた伝説的なDJセットをリアルタイム録音。二台のターンテーブルとテープマシンで展開する超高速ミックスは、テクノDJの最高峰として“Techno Bible”とも称される名演です。

Mills自身の代表曲「Strings of Life」のほか、ハイライトはリール・トゥ・リールで加工された「The Bells」で、ミックスの劇的なコール&レスポンスが象徴的です。トラック1.2はRetro Mixという未表記ながら特別バージョンになっています。

このライブ録音は後のDJセットやライブミックスの基準となり、多くのテクノDJやプロデューサーに影響を与えました。

10. Basic Channel – BCD (1995)

Moritz von OswaldとMark ErnestusがBerlinで結成したプロジェクトBasic ChannelのコンピレーションCD。ミニマルなリズムとダブ的空間処理が紡ぐ音響美学は、ダブテクノ探求の必聴盤といえます。ダブ・テクノの金字塔とも評され、ベルリン、デトロイト、ジャマイカのダブやミニマル・テクノの要素を融合したサウンドが特徴です。

リリース当時のミニマル・テクノとジャマイカン・ダブの融合は、その後の数多くのアーティストに影響を与え、ダブ・テクノという新たなジャンルの礎を築きました。

レコード選びのポイント

  • 試聴でフィーリングを重視
    ストリーミングや店舗試聴機でイントロのグルーヴ感を確かめ、自分の好みに合うかどうかをチェック。
  • リリース年による文脈を意識
    80年代の原点的サウンドから2000年代以降のミニマル/ダブテクノまで、時代ごとに異なる特徴を感じ取りましょう。

初心者の方はまず気になる一枚から聴き始め、徐々にジャンルの幅を広げてみてください。本リストがプレイリスト作成やレコードショップ巡りのガイドになれば幸いです。

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