オスバルド・プグリエーセ『Obras Completas Vol. 4』:黄金期録音を紐解く

本作『Obras Completas Vol. 4』は、1987年にEMI=OdeonからリリースされたダブルLPである。
1947年12月から1950年5月にかけて行われたプグリエーセ楽団の名演24曲を年代順に収録し、タンゴ黄金期の息吹を余すところなく伝えている。ロベルト・チャネル、アルベルト・モラン、ホルヘ・ビダルら多彩な歌手陣が参加し、インストゥルメンタルとヴォーカルの両面で聴きどころを提供する構成となっている。
ゲートフォールド仕様のジャケットはEMIオデオンのオリジナル・アートワークを忠実に再現し、モノラルのアナログ・オリジナル・プレスが録音当時の質感をそのまま伝えている。
オスバルド・プグリエーセの生涯と「Obras Completas」シリーズ
オスバルド・プグリエーセ(1905年12月2日–1995年7月25日)は、ブエノスアイレス生まれのアルゼンチン・タンゴのピアニスト兼マエストロである。15歳でプロのピアニストとしてデビューし、1939年に自身の楽団を設立。サロン・タンゴの歩みの良さとコンサート・タンゴのドラマチックな表現を融合した「プグリエーセ・サウンド」を確立した。
「Obras Completas」シリーズは、1943年から1961年までのEMI=Odeon録音を年代順に再編したコンピレーションで、第4巻は1947年–1950年の録音を網羅している。
第4巻収録音源の歴史的背景(1947–1950年)
1940年代後半のアルゼンチンは戦後の社会・政治的変動期にあり、プグリエーセ楽団は労働者階級の感覚に根ざした劇的かつ革新的なリズムを演奏に取り入れた。
彼のレコード録音は1943年にオデオン(EMI)で開始され、本作に収録された1947年–1950年のセッションも同社のモノラル録音技術によってマスターから直接プレスされている。
収録曲ハイライト
冒頭の「Bolero」は1947年12月16日に録音され、ロベルト・チャネルの深みある歌声が劇的なピアノイントロに続く名演である。
続く「Entrada Prohibida」は同日録音のインストゥルメンタルで、スリリングなストリングスアレンジが際立っている。
「Patético」ではバンドネオンの情感豊かなソロが約2分40秒にわたり展開し、緊張感あふれるリズムセクションが曲を牽引している。
「Negracha」「Boedo」は1948年録音のインストナンバーとして、アクセントの強いスタッカートとダイナミックなコントラストがプグリエーセ流アレンジを象徴している。
後半収録の「Pinta Brava」「Descorazonado」ではホルヘ・ビダルやアルベルト・モランの歌唱がアンサンブルにさらなる深みをもたらし、タンゴ歌謡としての魅力も兼ね備えている。
楽団編成と演奏の特徴
プグリエーセ楽団はバンドネオン、ピアノ、コントラバス、バイオリンなどが有機的に絡み合う編成で知られている。彼は独特の激しいスタッカート奏法を駆使し、全楽器が対話するような密度の高いアンサンブルを構築した。
学術的分析では、演奏中に微妙な変奏を加えることでリズムとメロディーに動的な緊張感を与えていると指摘されている。コンサートタンゴの黎明期にあたる本作でも、ウォーキングビートを基調とした劇的なアレンジは顕著で、後の演奏家やダンサーに大きな影響を与えた。
レコード仕様とアートワーク
本作はEMIオデオンのカタログ番号5331/5332としてリリースされた2枚組ダブルLPである。ゲートフォールド仕様のジャケットには1980年代初頭のオリジナル・アートワークが忠実に再現されており、ジャケット裏には録音年代が明記され、オーディオ・エンスージアストにも訴求するデザインが採用されている。
コレクターズ市場の動向
国内外ともにオリジナル・プレスの希少性からプレミアム価格が維持される見込みであり、タンゴ愛好家から注目を集めている。
タンゴ史における本作の価値
『Obras Completas Vol. 4』はプグリエーセの黄金期を象徴する演奏を余すところなく収め、タンゴ史における彼の革新性とドラマチックなアレンジを再評価する上で欠かせない作品である。アナログ・コレクターのみならず、タンゴ研究者やダンサーにも推薦できる珠玉のコンピレーションと言える。
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