怨歌に刻まれた叫び――三上寛『ひらく夢などあるじゃなし』完全ガイド

本稿では、1972年4月1日にURCレコード(URG-4011)よりリリースされた三上寛の初スタジオ・アルバム『ひらく夢などあるじゃなし 三上寛怨歌集』の制作背景から音楽性、パッケージ、再発遍歴、市場価値、そしてその後の影響に至るまでを徹底的に解説します。本作は鋭利な歌詞とアナーキーなサウンドで当時のフォーク・シーンに衝撃を与え、そのヴィジュアルと併せて今日でも高いコレクタブル性を誇っています。
背景とリリース経緯
URCレコードは1970年前後の日本フォーク界で社会的メッセージを強く打ち出すアーティストを数多くリリースしていたレーベルです。本作はそのレーベルから1972年4月1日に初版LPとして発表され、カタログ番号はURG-4011でした。ジャケットはGatefold仕様で、別刷りの歌詞カード(インサート)が付属しており、初版ならではの豪華装丁がコレクターの注目を集めています。
レコーディングと制作スタッフ
本作の録音は青森スタジオ(Aoi Studio)で行われ、プロデュースはばばこういちが担当。アレンジおよび音楽ディレクションは綾小路弘仁が務め、演奏陣にはフォーク/ブルースのバックグラウンドを持つミュージシャンが参加しました。
アートディレクションは佐伯俊男によるイラストがあしらわれ、アルバム全体のアナーキーかつエモーショナルな世界観を視覚面でも演出しています。
音楽性とテーマ
アルバム全体はフォーク、ブルース、アシッド・フォークの要素を融合しつつ、社会への怨念や個人の鬱屈を露わにする過激な歌詞が特徴です。
代表曲「夢は夜ひらく」は当時の日本文化を否定的に描いた歌詞が問題視され、一部で放送禁止となりました。また〈股の下を通りすぎるとそこは紅い海だった〉など挑発的なタイトルが並び、リスナーの想像力を大きく揺さぶります。
収録曲ハイライト
- 「あなたもスターになれる」:キャッチーなロック・ナンバーで、世間への皮肉をユーモラスに表現。
- 「痴漢になった少年」:社会の抑圧と人間の闇を寓話的に描き、深い衝撃を与える楽曲。
- 「誰を怨めばいいのでございましょうか」:スローなブルース・ナンバーで、声と言葉の間に漂う重苦しさが聴く者を圧倒。
その他全15曲すべてに三上寛の強烈な世界観が貫かれています。
パッケージとアートワーク
Gatefoldジャケットは内側にも歌詞と解説が掲載され、初版には16ページにわたるブックレットが同梱されていました。
帯も初版オリジナルの大きな魅力で、近年では帯付きの良品が高額で取引される要因となっています。
再発・リイシュー情報
- 1980年 SMS Records(SM20-4142):URC盤の再発としてLPが流通し、オリジナルに比べ手頃な価格帯で市場に出回りました。
- 2002年 CD再発:Pony Canyonからリマスター版として高音質仕様でリリース。
- 2009年 HQCD再発:ポニーキャニオン(PCCA-50057)による高音質HQCD盤が帯・スリーブケース付きで発売されました。
- その後の再発:2005年、2012年にも複数回リイシューが行われ、装丁や解説が改訂されています。
市場価値とコレクタブル性
原盤(URG-4011)は日本国内外のオークションや中古市場で高騰しています。
再発LP/CDは¥2,000〜¥6,000程度と手頃ですが、オリジナル盤の希少価値には及びません。
レガシーと影響
三上寛は寺山修司や天井桟敷とのコラボレーションでも知られ、日本のアンダーグラウンド文化に大きな影響を与えました。
本作の過激な歌詞表現は、その後のパンク/オルタナティヴ・シーンにも少なからぬインスピレーションを与え、多くのアーティストがカバーやリスペクトを示しています。
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