80年代ポップの金字塔──Paul Young『No Parlez』徹底解剖

『No Parlez』は、1983年7月22日にCBSレーベルからリリースされたPaul Youngのソロ・デビューアルバムであり、UKアルバムチャートで非連続5週間1位を獲得、119週間にわたりトップ100入りを果たしたロングセラー作品です。
本作はロンドンのThe Workhouseスタジオで1982年から1983年にかけてレコーディングされ、プロデューサー兼エンジニアにはLaurie Lathamが起用されるなど、緻密なサウンドメイキングが施されました。全11曲中8曲がカバーで構成され、マーヴィン・ゲイの名曲「Wherever I Lay My Hat (That’s My Home)」やジョイ・ディヴィジョンの「Love Will Tear Us Apart」などをソウルフルに再解釈しつつ、Paul Young自身とIan Kewleyによるオリジナル曲2曲も収録するバランスが高く評価されています。
リリース当時は“Behind Your Smile”を含むCD版の延長ミックスが話題を呼び、当時としては異例の長尺フォーマットを実現しました。
発売から40周年を迎えた2023年には、限定1000枚の2CDデラックスパッケージやAtmos対応Blu-rayオーディオ盤など、ファン垂涎のアニバーサリーエディションが続々登場しています。

アルバム概要

リリース情報

本作は1983年7月22日にイギリスでリリースされ、同年にCD版も発売されました。
ジャンルはBlue-eyed soul、ポップ、ニュー・ウェイヴを融合したスタイルであり、全長51分04秒(LP)/64分32秒(CD)となっています。
レーベルはCBS(UK)で、アメリカではColumbiaからリリースされました。
プロデューサーはLaurie Lathamが務め、マスタリングはCBS StudiosのTim Youngが担当しています

録音スタジオ

レコーディングはロンドンのThe Workhouseスタジオで実施され、同スタジオならではのウォームでタイトな音像を獲得しています。

制作背景とプロダクション

プロデューサー兼エンジニアのLaurie Lathamは、Paul Youngのヴォーカルとバンド演奏が際立つよう入念にミックスを行い、ソウルとポップが同居するモダンなサウンドを構築しました。
バックには以下のメンバーが参加しています:

  • Paul Young(リード&バック・ヴォーカル)
  • Ian Kewley(キーボード、シンセサイザー、ボコーダー)
  • Pino Palladino(ベース、Chapman Stick)
  • Mark Pinder(ドラム、Simmonsドラム、パーカッション
  • Steve Bolton(ギター、スライドギター
  • Rico Rodriguez(トロンボーン、一部曲にゲスト参加
  • Marilyn “Maz” Roberts & Kim Lesley(バック・ヴォーカル

収録曲構成

カバー作品とオリジナルの融合

全11曲中8曲が他アーティストのカバーであり、Marvin Gayeの「Wherever I Lay My Hat」、Joy Divisionの「Love Will Tear Us Apart」、John Hurley&Ronnie Wilkins作「Love of the Common People」などを選曲し、Paul Young独自のソウル・アレンジで再構築しています。
オリジナルはPaul YoungとIan Kewleyが共作した「Broken Man」「Tender Trap」の2曲と、ギタリストSteve Boltonによる「Ku Ku Kurama」が収録されており、アーティストとしての才能も示した内容です。

CD版の追加収録と延長ミックス

CD初期版にはLP未収録の“In Behind Your Smile”を追加収録し、さらに「Come Back and Stay」や「Wherever I Lay My Hat」など5曲で延長クラブ・ミックスを採用。これにより約13分長い総再生時間を実現しています。

シングルとチャート成績

シングル展開

最初にリリースされた“Ku Ku Kurama”と「Love of the Common People」の2作はチャートに入らなかったものの、3作目のカバー「Wherever I Lay My Hat (That’s My Home)」がUKシングルチャート3週連続1位を記録し、本作を牽引しました。
続く「Come Back and Stay」は最高4位、「Love of the Common People」再発盤は最高2位をマークし、シングル3作すべてがトップ5入りを果たしています。

アルバムチャートと認定

『No Parlez』はUKアルバムチャートで非連続計5週間1位を獲得し、119週間にわたりトップ100に留まりました。
また、英国BPIによるプラチナ認定を4度受け、120万枚以上を売り上げたことが証明されています。

批評と評価

リリース当時は「ポップソウルとニューウェイヴの絶妙な融合」と高評価を獲得した一方で、「時折ヴォーカルが過度にエフェクトに埋もれる」との指摘も一部で見られました。
現代ではMartin Leedhamをはじめとする批評家から「80年代を代表するソウル・ポップの名作」と再評価されており、デビュー作ながら完成度の高さが再確認されています。

コレクティビティ

オリジナルUKプレス(CBS 25521)は、コンディション次第でS$48前後の価格帯で取引されることが多く、ヴィニールならではのアートワークと音質を求めるコレクターに人気です。
また、オランダ盤やプロモ盤など希少バリエーションはさらに高値がつくケースがあり、市場動向をチェックする価値があります。

再発・アニバーサリーエディション

  • 40周年2CDデラックス盤(限定1000ユニット):オルタネイトUSAアートワーク、オリジナルステレオ・ミックス新マスタリング、ボーナストラック収録の豪華仕様です。
  • SDE-exclusive Blu-rayオーディオ版:新規Dolby Atmos Mixや5.1ch、ステレオ・ミックスを含む8種のオーディオ・ミックスを収録したスーパーデラックスエディションです。
  • Immersive Audio Edition:5.1サラウンド&Dolby Atmos Mixは、Pino PalladinoやMark Pinderら参加ミュージシャンの演奏を立体的に再現しています。

総括

Paul Young『No Parlez』はカバー曲の選曲眼、ソウルフルなヴォーカル、革新的なプロダクションが結実したデビュー作であり、1980年代ポップの金字塔としてその価値は今なお揺るぎません。オリジナルLPの味わい深いサウンドはもちろん、多彩なアニバーサリーエディションを通じてリマスターや新規ミックスを楽しむことで、本作の魅力を多角的に再体験できます。コレクターにもリスナーにも、あらためて手に取る価値のある一枚と言えるでしょう。

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