ビバップ・ピアノ革新の原点 「The Amazing Bud Powell Vol. 1」

モダン・ジャズのピアノ革新を象徴するバド・パウエルの名盤『The Amazing Bud Powell Vol. 1』を、1949&1951年のセッション背景から編成、名演曲分析、再発盤情報、リマスター評価まで余すところなく解説します。
『The Amazing Bud Powell Vol. 1』は、バド・パウエルがモダン・ジャズの鍵盤奏者として頭角を現した初期傑作です。
1949年8月8日と1951年5月1日にニューヨーク・WORスタジオで録音され、1952年4月に10インチLP(BLP 5003)としてリリースされました。クインテット編成とトリオ編成、さらにソロ演奏を交えた8曲が収録されており、ピアノ・ビバップの新境地を示しています。
背景と制作秘話
本作をプロデュースしたのはブルーノート共同創業者のアルフレッド・ライオン、録音エンジニアはダグ・ホーキンスです。パウエルは当時、精神的にも肉体的にも激しい試練に直面していましたが、その苦悩を忘れさせるかのような超絶的なテクニックと創造性をセッションで発揮しています。初回リリース当時は10インチLPの規格が主流でしたが、その後12インチLPへの移行を受け、1956年にはVol. 1(BLP 1503)として再編成されました。
セッション詳細と収録曲
- 1949年8月8日(クインテット & トリオ)
- クインテット:「Over the Rainbow」「Ornithology」「Wail」「You Go to My Head」
- トリオ:「Bouncing with Bud」「A Night in Tunisia」
- 1951年5月1日(トリオ & ソロ)
- トリオ:「It Could Happen to You」「Un Poco Loco」(テイク1〜3)
- ソロ演奏:「Un Poco Loco」の異なるテイクを通じて作曲意図の変遷を感じられます
これら8曲が、冒頭の著名なアフロ=キューバン調ナンバーからスタンダードの解釈に至るまで、バラエティ豊かに並べられています。
ミュージシャン
- Bud Powell(ピアノ)
- Fats Navarro(トランペット)※一部
- Sonny Rollins(テナー・サックス)※一部
- Tommy Potter(ベース)
- Roy Haynes(ドラムス)
- Curly Russell(ベース)※1951年セッション
- Max Roach(ドラムス)※1951年セッション
技術スタッフ
- プロデューサー:Alfred Lion
- 録音エンジニア:Doug Hawkins
- デザイン:John Hermansader
- 写真:Francis Wolff
- ライナーノーツ:Leonard Feather
音楽的特徴とハイライト
バド・パウエルはチャーリー・パーカーのシングルノート・ラインをピアノに移植し、左手でシンプルなコード進行を刻むスタイルを確立しました。特に「Un Poco Loco」は3テイクを比較することで、リズムやメロディの洗練度がどのように深まっていったかが鮮明に聴き取れます。クインテット編成の「Ornithology」「Bouncing with Bud」では、ナヴァロやロリンズとの緊張感あふれる掛け合いが光ります。
評価と影響
発表当時から批評家の称賛を集め、ペンギン・ガイドでは“コア・コレクション”に選出されました。また、All About Jazzは「パウエルの最重要録音のひとつ」と評し、NPRのベーシック・ジャズ・ライブラリーにも推奨盤として収録されています。この作品は、その後のビル・エヴァンスやハービー・ハンコックといった鍵盤奏者にも多大な影響を与え、モダン・ジャズ・ピアノのスタンダードとなりました。
再発とヴィニールコレクションの魅力
- 1956年再編成12インチLP:『Vol. 1』(BLP 1503)として10インチ収録曲を再構成
- 1989年CD化:オリジナル順序を維持したリマスター盤
- 2001年RVGエディション:ルディ・ヴァン・ゲルダーによるリマスタリング
- 近年の180gアナログ盤:ケヴィン・グレイ・マスタリングによるオールアナログ・モノラル盤
各世代のリスナーに向けた多彩なフォーマット展開により、オリジナル盤の価値のみならず、後発プレスやリマスター盤のサウンドにも注目が集まっています。
結論
『The Amazing Bud Powell Vol. 1』は、バド・パウエルの革新的ピアニズムとビバップ精神を初期セッションで余すところなく示した歴史的名盤です。多彩な編成によるインタープレイ、試行錯誤の痕跡が残る「Un Poco Loco」のテイク群、そして不屈の創造力は、今なお多くのミュージシャンとリスナーを魅了し続けています。ジャズ入門盤としても、コレクター向けのリマスター盤探しにも、最適な一枚と言えるでしょう。
参考文献
- https://en.wikipedia.org/wiki/The_Amazing_Bud_Powell
- https://en.wikipedia.org/wiki/The_Amazing_Bud_Powell%2C_Vols._1_%26_2
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