ロサンゼルス・ビートを纏ったAORの真珠──岩崎宏美『WISH』
本作『WISH』は1980年8月5日にリリースされた岩崎宏美の9枚目のオリジナル・アルバムです。デビュー6年目にして初めてロサンゼルスで録音され、西海岸のAORサウンドを大胆に取り入れた点が大きな特徴です。筒美京平が作曲・プロデュースを手がけ、LA屈指のセッションミュージシャンが参加したことで、国内外のファンから今なお高い評価を受けています。
概要
『WISH』は1980年8月5日にLP(型番:SJX-30016)として発売され、その後カセットやCDでも再発されました。レーベルはビクター音楽産業で、アイドル歌謡をベースにAOR、カントリー、ファンクなど幅広い要素を巧みに融合した意欲作です。
制作背景
本作はデビュー6年目にして初の海外録音盤として制作され、岩崎宏美にとって新たなキャリアの一歩でした。レコーディングはロサンゼルスのA&Mスタジオをはじめ複数のスタジオで行われ、筒美京平が作曲・プロデュースを統括しました。参加ミュージシャンにはヴィクター・フェルドマン(パーカッション)、ジミー・ジョンソン(ベース)、ヴィニー・カリウタ(ドラムス)らLA屈指の腕利きが名を連ねています。タイトル曲「Wishes」のセッションでは、ピアノ一本録りの緊張感を和らげるため、岩崎宏美にワインが振る舞われたというエピソードも知られています。
主要楽曲解説
- Wishes
筒美京平作曲・編曲によるタイトル曲で、ピアノ一本録りならではのシンプルかつドラマティックなアレンジが魅力です。 - 五線紙のカウボーイ
橋本淳作詞によるカントリーテイストのリズミカルなナンバーです。 - Sympathy
後藤次利編曲によるメロウなバラードで、ホーンセクションのアレンジが印象的です。 - Street Dancer
ファンキーなAORチューンで、アルバム中でも際立った存在感を放っています。 - Kiss Again/Half Moon
康珍化作詞による都会的なサウンドの楽曲で、特に「Kiss Again」はディスコ的なリズムが光ります。 - 女優(シングル・バージョン)
1980年4月5日リリースのシングル曲のLA録音版で、ディスコテイストが強調されています。 - Rose
ゆったりとしたAORバラードで、後藤次利のホーンアレンジが哀愁を帯びています。 - 処女航海・夕凪海岸・最後の旅
阿久悠作詞のロック調ナンバーや山川啓介作詞の叙情的な楽曲が並び、LPをドラマティックに締めくくります。 - Wishes(リプライズ)
冒頭テーマを再現するリプライズ構成で、アルバムに統一感を与えています。
批評・反響
リリース当時、評論家やファンからはLA録音ならではの緻密で高音質なサウンドが高く評価されました。特に「Street Dancer」は都会的なファンクビートとキャッチーなメロディが支持され、シティポップの代表曲として現在も多く再生されています。一方で、収録楽曲のジャンルが多彩すぎるとの指摘もあり、アルバム全体の統一感については賛否が分かれました。
チャート成績
オリコンLPチャートで最高14位、CTチャートでは35位を記録し、1980年代初期の女性アイドル作品として堅実なセールスを示しました。シングル「女優」も上位にランクインし、コンサートのレパートリーとして愛され続けています。
再評価と影響
近年のシティポップ再興の潮流において、『WISH』は西海岸AORとの融合が新鮮だった作品として再評価が進んでいます。国内外のコレクターやDJシーンでも「Street Dancer」「Rose」がプレイリストに組み込まれ、国境を越えた人気を博しています。
再発情報
1994年に廉価盤で初CD化された後、2007年には紙ジャケット仕様の『WISH +7』で未発表トラックやシングル・バージョンを含むボーナス・トラックが追加されました。2019年にはタワーレコード限定で最新デジタル・リマスター音源を使用した『WISH +7』が紙ジャケット仕様で再発され、音質向上が大きな注目を集めました。
以上が岩崎宏美『WISH』の詳細解説です。LA録音ならではの洗練されたサウンドと、筒美京平ら制作者陣の妙技が結実した名盤として、今なお愛され続けています。
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