貯湯タンクとは?仕組み・種類・構造をわかりやすく解説|給湯・空調設備に欠かせない蓄熱装置の基礎知識


貯湯タンクとは

貯湯タンク(ちょとうタンク)とは、ボイラーやヒートポンプなどで加熱されたお湯(温水)を一時的に貯めておくためのタンクのことです。
英語では「Hot Water Storage Tank」や「Thermal Storage Tank」と呼ばれます。

貯湯タンクは、給湯・暖房・空調設備などで広く使用されており、**熱エネルギーを蓄える“蓄熱装置”**としての役割を果たします。
お湯を必要なときにすぐ使えるようにして、エネルギーの効率的な利用や設備負荷の平準化を実現する重要な設備です。


貯湯タンクの役割

1. 給湯の安定化

瞬間的に大量の湯を使うと、加熱機器だけでは供給が追いつかないことがあります。
貯湯タンクにあらかじめ温水を蓄えておくことで、安定した給湯量と温度を確保できます。

2. エネルギーの有効利用

夜間電力や太陽熱などを利用してお湯を貯めることで、ランニングコストの削減と省エネが可能になります。
特に**エコキュート(ヒートポンプ給湯機)**では、夜間に貯湯して昼間に使用する仕組みが一般的です。

3. 熱源設備の効率運転

ボイラーやヒートポンプは、頻繁なON/OFFを繰り返すと効率が低下します。
貯湯タンクを設けることで、機器を安定した負荷で運転でき、寿命も延びるというメリットがあります。


貯湯タンクの構造

貯湯タンクは、基本的に次のような構成でできています。

┌────────────────────┐
│ 断熱材(保温材)              │ ← 熱損失を防ぐ
│────────────────────│
│ 内部タンク(ステンレス・鋼製)      │ ← 温水を貯める容器
│────────────────────│
│ 温水入口・出口・温度センサー・安全弁等 │ ← 計測・保守部品
└────────────────────┘
  • 内部タンク材質:ステンレス鋼(SUS304など)、鋼板+ホーロー、FRPなど
  • 断熱材:ウレタンフォームやグラスウールなどを使用
  • 安全装置:安全弁・膨張管・温度計・圧力計を備える

断熱性能が高いほど、長時間にわたり温度を保つことができます。


貯湯タンクの種類

1. 用途による分類

種類用途・特徴
給湯用貯湯タンク建物全体の給湯を目的とした一般的なタイプ。ボイラーやヒートポンプと組み合わせて使用。
暖房用貯湯タンク温水式暖房や床暖房の熱媒水を貯めるタンク。温度変動を抑え、効率を高める。
太陽熱利用貯湯タンクソーラー集熱器と連携し、昼間に加熱したお湯を夜間まで蓄熱。
産業用貯湯タンクプラント・工場・病院などで大量の温水を安定供給。容量は数千〜数万リットル。

2. 構造による分類

種類構造・特徴
密閉式貯湯タンク内部が密閉され、圧力下で運転するタイプ。給湯システムと直結可能。
開放式貯湯タンク大気に開放されており、圧力がかからないタイプ。主に重力給湯や高所設置向き。

3. 設置方式による分類

種類設置場所・特徴
据置型地上や機械室内に設置。大型建物や集合住宅に多い。
屋上設置型高所に設けて自然圧で給湯。学校・病院などで採用。
ユニット型(小型貯湯槽)給湯器一体型(例:エコキュート内蔵)で、一般住宅に多い。

貯湯タンクの容量と設計の考え方

貯湯タンクの容量は、使用目的・人数・時間帯別の湯使用量によって決まります。
一般的な目安は以下の通りです。

用途貯湯容量の目安
一般家庭(4人程度)約300〜460リットル
小規模店舗・事務所約500〜1,000リットル
集合住宅・ホテル・病院数千〜数万リットル
産業用途数十トン〜数百トン規模

設計時には、ピーク時の湯使用量だけでなく、給湯負荷平準化(昼夜の使用差)や保温性能も考慮することが重要です。


メンテナンスと注意点

  1. 定期的な点検
     温度計・安全弁・圧力計を定期的に確認し、異常圧力や漏水を防止します。
  2. 水質管理
     スケール(カルシウム分)の付着を防ぐため、軟水化装置を併用する場合もあります。
  3. 断熱劣化のチェック
     経年劣化で保温性能が低下すると熱損失が増えるため、断熱材の交換も検討が必要です。
  4. レジオネラ菌対策
     40℃前後の温水では菌の繁殖リスクがあるため、60℃以上での加熱殺菌運転を定期的に実施します。

まとめ

貯湯タンクとは、ボイラーやヒートポンプなどで作られた温水を蓄え、安定した給湯・暖房を実現する蓄熱装置です。
家庭用から業務用・産業用まで幅広く活用されており、省エネルギー化と快適性向上の鍵となる設備といえます。

建物用途や熱源機器に応じた容量設計・断熱性能・設置方法の最適化が、長期的な省エネ運用に直結します。